裏士官学校物語 「お帰り。兄貴」 マジックが帰ってきたのだ。忙しい中をおして。 「また出かけるのか?」 「ああ。まだ仕事が残っているからな」 「大変だな」 「そうだな。しかし、やらない訳にもいくまい」 マジックが新総帥になってはや数ヶ月、今が一番、仕事に燃えている時期だった。そして実際、目の回るような忙しさだったのだ。マジックは弱音を吐くようなタイプではないが、かなりハードなスケジュールであったろう。 『この仕事が片付いたら、家にお客さんを呼べる余裕も出てくるよ』そんな軽口も言っていたが。 (俺がもう少し大人だったら……) ハーレムは考えてみる。もう少し年がいってたら――たとえば十八くらいだったら、ガンマ団のために働き、マジックを少しでも支えてやることができないだろうか。そばで働かなくとも、たとえば戦場などで―― (あっ) 戦場で働く。その考えはハーレムをたとえようもなく魅了した。 プルル、と電話の呼び出し音が鳴る。本部から連絡が入ったらしい。マジックは受話器を取った。 「――……ああ、……それはだな……ああ、それでいい。そんなことでまで相談するな、自分で決めろ―――……わかった。それについては明日までに考える。――ああ、ああ、一時間したらそちらに行くから――それまでは、誰も連絡を入れるな。ではな」 マジックは電話を切って、ハーレムの方に向き直る。 「三十分寝る。それまで起こすな。その後、ここで食事を取る。――おまえも一緒にどうだ? 久々に、おまえとも少し話がしたいからな」 「ああ、わかった」 ハーレムは、己が何となく嬉しそうな表情をしていることに、気がついていなかった。 裏士官学校物語 第五話 BACK/HOME |