Last eight years ~最後の八年間~ 5

「パプワ、コタロー、お誕生日おめでとう!」
「ありがとう、兄さん!」
「ありがとう、シンタロー」
 パプワとコタロー、そして仲間達が祝杯をあげた。
 今日は十二月二十四日。シンタローの親友パプワと弟コタローの誕生日。
「パーパ、誕生日おめでとう」
「ははは、ジュニアもありがとう」
 パプワは我が子とカチン、とグラスを合わせた。
 パプワハウスには今、たくさんの生物達が詰めかけている。大切なパプワ島の友達だ。
「パプワや~」
「じいちゃ!」
「あ、カムイじいちゃだ。久しぶり」
 お盆でもないのに来たんだな。シンタローもカムイは好きだ。とても優しいパプワの保護者だ。といっても梟だが。
「今日は特別に神様に許可を取って戻ってきたんだぞい」
「あー、神様ボクの願い叶えてくれたんだー」
「何て頼んだんだい? ジュニア」
「あのねー、パーパの誕生日にカムイじいちゃが来てくれるようにって。今日はクリスマスにはちょっと早かったんだけど、ちゃんと来てくれたんだー」
「まぁまぁ、ジュニアはいい子ねぇ。はい、ご馳走できましたよ」
 パプワの妻、くり子はとても料理が上手だ。それに楽しそうに作る。
 くり子はパプワに嫁ぐ時、サンタクロースの役割を終えた。
「すまないねぇ。くり子ちゃん」
「いいえ。今日は愛するパプワ様のお誕生日ですから」
 労うシンタローにくり子は笑顔で惚気る。パプワも嬉しそうに礼を言った。
「くり子もありがとう」
「お誕生日おめでとうございます。パプワ様、コタロー様。お料理、お口に合えばいいんですけど」
「マーマの料理、最高!」
「ジュニアったら……リキッドさんも手伝ってくださいましたのよ。カムイさんも食べて行ってくださいませ」
「そうしたいのは山々なんじゃが、わしは今、幽霊なもんでな」
「あ、すみません……」
「なんのなんの。気持ちだけいただいてもらうとしようかのう」
「じいちゃ、ジュニアも大きくなっただろう?」
「そうじゃな。パプワ。ジュニアも将来は立派な心優しい青年になるじゃろう」
「じいちゃ。ありがとう」
「よしよし」
 カムイはパプワ・ジュニアの頭を撫でた。カムイは幽霊だけどジュニアに触ることは出来る。ぬくもりは伝わるだろう。
「お父様も今日は張り切っておりますわ。世界の子供達の為に活躍しておりますの」
 でも、くり子の父親も年だからな……シンタローがそう考えていると。
「シンタローさん、あの時はありがとうございました」
「あの時って?」
「私がパプワ様の傍にいる、って駄々をこねたことありましたでしょう?」
「ああ、昔の話だな」
「その時、『子供の時はうんと親に甘えとかなきゃダメだよ』って言ってくださいましたよね。おかげで私、お父様とはいい関係でいることができましたわ」
「うん。それは何よりだね。ところで――」
「シンタローは~ん」
「くり子ちゃん、言ってくれれば手伝ったのにのう」
 どうしてこいつらもいるんでしょうかねぇ! ――シンタローは思いっきり嫌な顔をした。こいつらとは、アラシヤマとウマ子のことである。
「たのしい~」
 アラシヤマとウマ子の娘、サナ子が笑っている。
 サナ子の双子の兄、ウズマサもいる。だが、その子はコタローと遊んでいる。
 まぁ、サナ子ちゃんはいてくれてもいいか――シンタローもサナ子は可愛く思っていた。
「サナ子ちゃん、こっちおいで」
「いやー、リッキー、リッキー」
 後片付けを担当していたリキッドが戻ってきた。
「どうした? サナ子ちゃん」
 ちっ、リキッドの奴め。シンタローは軽く舌打ちをした。
「シンタローおじちゃん、サナ子ちゃんはリキッドでないとダメなのー」
 パプワ・ジュニアが言った。サナ子のリキッドに対する愛着は度を越えている。――シンタローもおじちゃんと呼ばれても傷つかない年になっていた。確かにジュニアにとってはおじさんであったのだから。
 人は歳を取る。リキッドは永遠の二十歳とかほざいていたが。
 今いるサンタクロースが亡くなったら、娘のくり子が再び跡を継ぐのだろうか。
 ――くり子はパプワと暮らす為、サンタクロースを引退したとシンタローも聞いてはいたのであるが。
「くり子ちゃん、サンタクロースの仕事辞めて大丈夫なのかい?」
「ええ。くり子には親戚がたくさんいますから。それにサンタ希望者も多くいらっしゃいますし」
「それは良かった。サンタさんが来なくて泣いちゃう子もいるかもしれないからね」
「ええ。私もそれが心配だったんだけど――お父様が『お前は人の為によく働いてくれた。今度は自分の為に生きる番じゃ』と言ってくれましたの」
「いい親父さんを持ったね。くり子ちゃん」
「ええ」
 くり子がいい笑みを浮かべた。幸せそうだ。パプワも幸せなんだろう、とシンタローは思った。
「シンタロー、ちょっと外に出ないか?」
 パプワがシンタローを誘う。
「そうだな――何か話とかでもあんのか?」
「まぁな」
 パプワはもうすっかり青年の顔になっている。シンタローにそっくりだな、とジャンが言っていた。ジャンにも似ている。彼らの顔のパーツは同じだからだ。
「行ってきなよ。兄さん。この人達の相手は僕がやってるから」
「頼んだぞ。コタロー」
「うん。今日も兄さんやパプワくん達に祝ってもらえて幸せだったよ」
「そうか。コタローも幸せか。良かった」
 コタローはパプワのおかげですっかり明るくなっていた。それに美しい青年に育っていた。
 いつかコタローも結婚するだろう。その時は泣いてしまうかもしれない。シンタローの弟好きは有名であった。

「はー、星が綺麗だな」
 シンタローが深呼吸をする。今、生物達はどんちゃん騒ぎをしているところだろう。
「シンタロー、お前は僕の恩人だ」
「いや、俺こそ――」
 シンタローとリキッドはパプワに命を助けられたことがある。パプワは自分の力を使い果たし――眠りに落ちて行った。
 そして、長い長い眠りから覚めた時には立派な大人の身体になっていた。
 パプワにも失われた時がある――だが、パプワはそのことでシンタローやリキッドを責めたことはなかった。
 初対面の時には、こんなに生意気な子供がいるのかと思ったもんだが――。
「わからんもんだな。今はお前のこと、親友だって素直に思える」
「シンタロー……」
「俺達を助けてくれて、ありがとうな」
「お前は僕の友達だからな」
 その時、ふっと、今のパプワと子供の頃のパプワの姿が重なった。
 パプワは友達の為なら命さえも投げ出す。皆のことを大切にする。だからこそ、皆パプワが大好きなのだ。シンタローも……。
(パプワ島から日本へ帰る時は泣いたな)
 パプワもあの時は泣いた、と言った。そして、僕は強くなったぞ――と。泣きたい時には素直に泣けるようになったほど、パプワは強くなったのだ。そして、コタローも……。
 ミツヤという父の親戚で親友だった男の話もコタローから聞いている。その男も強くなったのだ、と弟が話していた。
「お前は優しいヤツだよ。パプワ」
「僕は――お前達のいない世界で生きていたくなかっただけだ」
「それでも、お前は俺とリキッドの為に一番大切な『時間』を与えてくれた」
 シンタローの言葉を聞いてパプワが微笑んだ。シンタローも釣られて笑顔になる。これからはパプワ達と共に楽しい時間を紡ごう。


2017.2.4

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