キンタローの初恋 3

「そうか……そういうことだったのか……」
 事情をジャンから知らされたらしいサービス叔父貴が呟いた。
「私がキンタローに、教えてやってもいいんだがな……」
「ダメッ!」
 ジャンが血相変えて叫ぶ。どうしたって言うんだろう……。
「でも、お前だってキンタローにキスしたじゃないか」
「あれは……うう……キンタローが何にも知らないから、ついな……」
「ついにしては、真剣だったと思うぞ」
 と、俺が言う。
「それに、ジャンは、俺に、『お前を性の達人にしてやる』と言った。性の達人て、性行為とやらが巧いヤツのことを言うのか?」
「ジャ~ン~」
「……わぁ、その顔、サービスは怒った顔も綺麗だな……と言ってる場合じゃなかった。サービス、キンタローの鈍さは天下一品だ。二人で教育してやろうじゃないか」
「別に必要ないかもしれないがな。子供を作りたいならともかく、相手はハーレムなんだろ?」
 う……サービス叔父貴にも知られているんだな。俺の気持ち。でも、ハーレムは俺の気持ちをわかっているんだろうか……。
 俺は、深く溜息を吐いた。
「キンタロー、お前もいつかは知るはずだ。――自然にな」
 そうか。なら、慌てることもないか。
「でも、こいつの性の興味は小学生並みだぜ」
「構わんじゃないか。キンタローは、生まれ落ちてからまだ数年しか経ってないぞ。赤ん坊と同じだ」
 俺は少しムッとした。
「俺のどこが赤ん坊だ」
「性的には赤ん坊だと言いたかったんだよ。でも……そうだな。ちょっと試してみるか」
 サービス叔父貴は俺に近づいて、股間を触った。ふわりといい香りがした。
「どう思う? キンタロー」
「どうって別に……」
「ふむ」
 サービス叔父貴の手が動く。
「わぁ……それ、俺にもやってくれないかな」
「黙っていろ。ジャン」
 サービス叔父貴がジャンを一喝した。ジャンはすごすごと引き返す。何だかジャンが前かがみになっているのは気のせいか?
 俺の股間が、変形する。俺のペニスは時々こうなるんだ。例えば、ちょっとハーレムの夢を見た朝など――。叔父貴が訊いた。
「どうだ? キンタロー」
「ん……なんか、変な気分だな……」
「これを触っているのがハーレムだとしたら、どんな気持ちになる?」
 ハーレムが、こんな恥ずかしいところを――。
 どくん。
 俺のペニスがますます肥大化した。サービス叔父貴はにやりと笑った。
「な、わかったかい?」
 俺はこくこくと頷いた。
「サービス、次は俺~」
 サービス叔父貴はジャンに眼魔砲を食らわせた。
「普通は男女の営みだが、男ならアナルを使うな」
 アナル。ペニスと同じく、言葉の意味だけはわかる。でも、そこは汚いところなんじゃ……。――いいや、ハーレムの体に汚いところなどありはしない。
「この、大きくなった棒をアナルに入れるんだ。ここまではいいな?」
「ああ」
 俺は些か神妙な心持になって頷いた。この股間の棒は、ただついている訳じゃなかったんだな。
「ペニスを入れる時は、ローションを使うといい。滑りが良くなる」
「ローション?」
「私は薔薇の香りのが好きだ。私は薔薇が好きだからな」
「そうそう。俺との営みの時なんかね~」
「だから――お前は黙っていろ。ジャン」
「はぁい。――俺はトイレに行ってくるから後は宜しく」
 俺は、また随分妙な時にトイレに行きたくなったもんだな、ジャンも――としか思わなかった。
「ふん、あいつ、抜きに行ったな」
「抜き……」
「キンタロー。まっさらなお前も可愛いが、このままだとお前もハーレムも可哀想だからな。せっかくだから手伝ってやる。――ズボンとパンツをおろせ」
「――嫌だ」
「……まぁ、それが普通の反応だろうな。だが、そのままだと汚れるぞ」
「汚れる?」
「――叔父さん、ちょっとお前の性教育に自信がなくなってきたよ。まぁ、それでもいい」
「……サービス叔父貴……必要だったらペニスを晒しても構わない」
「そうか。聞き分けが良くなったな。キンタロー。ややっ、これは立派なモノを持っているじゃないか。――叔父さん、ハーレムが少し羨ましくなって来たよ。まぁ、私にはあの男がいるからいいか」
 あの男……ジャンのことかな。
「サービス叔父貴はジャンのことを愛しているのか?」
「ああ、その通りだ」
 サービス叔父貴は幸せそうに頬を染めた。
「あいつの性技は抜群だからな。せっかくだから抜いてやろう」
 サービス叔父貴がティッシュを持ってきた。そして、俺のペニスを手でしごく。上下に。――何だかとろとろした物が先端から出て来た。
「わっ、な、何だこれは……!」
「おろおろしなくていい。これは病気じゃないからな。自然な反応だ」
「そ、そうか……」
 俺は慌てた姿をサービス叔父貴に見せたことを恥ずかしく思った。性と言うのは本当に難しい。グンマと一緒に機械でも作っていた方が遥かに簡単だ。
 俺は今まで天才と呼ばれていたが、こんな、俺の知らない世界があったのか――。
 それにしても……何て気持ちいい……これを触っているのがハーレムだったら……。
「うっ!」
 ぴゅぴゅっと、白い液体が出た。俺は何も考えられなくなった。青臭い匂いが充満し、俺は眉を寄せた。――サービス叔父貴が股間を拭いてくれる。
「キンタロー……ハーレムのことを考えたかい?」
「……ああ……」
 俺は、心の秘密を暴かれたように思った。
「今日はこのぐらいにしておこう。――高松は、キンタローに性教育を施さなかったのかな?」
「――その前に鼻血を出して倒れていたからな。毎度毎度」
「そうかい。全く、仕様のないヤツだ。困ったこと、悩んでいることがあったら、また来ていいからな」
「ああ、頼む。サービス叔父貴」
 まだこの行為の意味するところはわからない。だが、この行為を悦んでやる男どもがいるというのには、納得する思いであった。俺は、微かに倦怠感を覚えた。そうか――これが性行為……セックスというヤツか。
「ああ、これはセックスじゃないよ。手淫と言うヤツだ」
「何?! まだ続きがあるのか?!」
「ああ。お前のペニスをハーレムのアナルに入れてごらん。――きっと無上の快楽を味わうよ」
 サービス叔父貴がとびっきり美麗な顔をして見せた。美麗……? 違うな。ええと、こういう時に使う言葉は……妖艶? 淫ら?
 とにかく、この顔を見たら、ジャンが黙っていないだろうということはわかった。俺でさえドキドキして来た。ハーレムと同じ顔だからだろうか……。
「あ、また勃起したね。若いな」
「あ、ああ……」
「俺はジャンを迎えに行く。後は自分で出来るだろう?」
 サービス叔父貴が立ち上がった。
「サービス叔父貴、ありがとう」
 叔父貴はにこっと笑った。
「どういたしまして。抜いたらちゃんとパンツは履くんだぞ。――ジャンみたく『チン』と揶揄われたくなければな」
 勿論、俺だって下半身裸のままで廊下を歩く趣味はない。
 ――俺はもう一度ペニスを触って、サービス叔父貴がしたように上下に手を動かした。――サービス叔父貴のように巧くはいかないけれど。
 その代わり、俺はハーレムの裸や局所を思い浮かべてた。――その時、ぞくりとした感覚が背中を走った。
 二度目の射精は、初めてのそれより気持ちが良かった。そうか。これが射精というヤツか……。シンタローから借りた保健体育の本で読んだ言葉だが、何事も体験しないとわからんもんだな……。


2019.12.04

次へ→

BACK/HOME