HS ~ある双子の物語~ 第十一話

 すみません。このシリーズを楽しみにしてくださっている方。かなり少ないだろうけど。
 なんやかんやで、続きが遅くなってしまいました。
「お詫びはいいからッ! さっさと書きなよ! スペースには限りがあるんだからね」
 はいはい。サービスくん。
 そうそう、今までの話の一部、修正したりしておきましたから。さぁ、これから十一話を始めるよ。
「なんだ……? ずいぶん賑やかだなぁ……」
 教室に帰ってきたササキ先生が呟いた。誰も聞いちゃいなかったが。
 ところが、先生に話しかけてきた生徒が一人いた。
「あ、先生あのね。ハーレムとリリーが結婚するんだって」
「結婚?! あのなぁ、ちょっとちがうんじゃねぇか?」
 ハーレムが反駁する。
「そうだよ……結婚なんて……まだ早過ぎるよ」
 サービスが恥ずかしそうに俯いた。
「わぁッ! ハーレム、その顔! やっぱりマンザイでもないんじゃん!」
「それを言うならまんざらでしょう? でも、リリー……学校内での一番の美人を射止めるなんて、やるじゃない!」
「ハーレム、やったな!」
 ハーレムがバンッとサービスの背を叩いた。
「やれやれ。俺も結婚の報告があるんだが……」
「えっ?! ササキ先生が結婚?!」
「もしかして相手はアライ先生?!」
「もしかしなくても、そうだ」
「ええーーーーーーーっ!!」
 教室内に、再び騒擾が湧き起こった。
「これでめでたいニュースが二つになったな!」
「ああ、アライ先生……憧れてたのに……」
「まぁま。ササキ先生とアライ先生なら、おにあいだよ。おめでとう」
「ありがとう。でも、ハーレムとリリーの結婚話ですっかり影が薄くなったな」
「もう! ササキ先生までッ!」
「怒るなよ、ハーレム。冗談だから」
「んもう」
 サービスは頬を膨らましながら、腕を組み合せた。
「ところで、いつプロポーズしたの?」
 一人の女子が訊いた。
「ん。今、ついさっきだ」
 ササキ先生はやに下がる。
「んで? プロポーズの言葉は?」
 おどけた男子が拳をマイク代わりに、先生に突き出す。
「普通に『結婚してください』だ」
「なぁんだ。五十点」
「――悪かったな、おまえは」
「ハーレムは? リリーにプロポーズしたの?」
「してないよ!」
 まだ付き合おうって決めたばかりなんだぞ――サービスは、内心そう独り言を言った。
「ハーレム、いい機会に巡り会えたな。恋はいいぞ。サービスも恋をしろよ」
「え? 俺が?」
 ハーレムは、つい、主語を『俺』と言ってしまった。
「そう。サービスは可愛いから引く手あまただろ」
 まぁ、そうなんだけどね――サービスは思った。確かに、上級生の女子達からは割とモテる。
 でも、同い年って言うのはなかなかねぇ……。
(ぼくって、クラスメートからはあんまり男あつかいされないしな)
 だから、リリーの告白は新鮮だった。
「だめだよー。サービスはオカマだもん」
 ハーレムの友人の一人が言った。
「何だって?!」
「何か言ったか?! てめぇ!」
 サービスとハーレムに怖い顔をされ、その男子は、
「ご、ごめん……」
 と泣きそうになりながら謝った。
(サービスはオカマじゃないやい!)
 ハーレムは心の中で憤った。
 それにしても、弟の名誉の為に怒るなんて、さすがハーレム。
(うるせぇよ。諸悪の根源。俺たちをかってにいれかえたくせに)
 ま、まぁ、それはね……。
 入れ換えネタ書きたかっただけなのよね。
(もし、ふつうだったら、俺とリリーがつきあうはずだったかもしれなかったんだろ?)
 おおせの通りで。
(……でも、サービスが幸せなら、いいかな)
 さすが、ブラコ……いえいえ、弟思いですね。
(今、ブラコンと言いそうになったろ)
 は、は、は……バレた?
(細かいことは気にしないけどな。俺は。サービスは女に優しいから、今日初めてリリーに親切にして、メロメロにしたのかもしれないし。それに、なんせ、外見がたよりになりそうないい男だしな)
 え? いい男? どこどこ?
(目の前にいるだろうがよ)
 ハーレムくん、あんたのことか。でも、今は、カマ美少年。
(この野郎、ほんとに怒るぞ!)
 ……冗談です。
(サービスはなぁ、ほんとは男らしいんだぞ。まぁ、俺の方が男らしいがな)
 はいはい。わかりました。
(でも――そうか……ササキ、とうとうアライにプロポーズしたか……)
 そして、ハーレム少年は遠くを見つめた。
「おめでとうございます。ササキ先生」
 高松が祝いを述べた。
「三年二組の皆様から、心からご祝福申し上げます」
「すまんな。高松」
「いえいえ。お二人の関係は、はたで見ていて、もどかしいものがありましたから」
「生意気言うな。この!」
 ササキ先生は、高松の頭を軽く小突いた。
「何するんですかー。暴力反対ー」
 そんなこと言いつつも、高松も嬉しそうだ。第一、今のは暴力に入らない。
「結婚式には、呼んでくださいね」
「子供は呼べないな」
「ちっ、せっかくご馳走になろうと思っっていましたのに」
 高松は舌打ちした。
「残念だったな――気持ちだけ、受け取っとく」
 ササキ先生がニヤニヤした。
「先生、日直の仕事、やっておきました」
「ああ、ご苦労さん」
「ありがとう。俺の代わりに。感謝するよ」
「あ……えと……どういたしまして。ハーレムくん」
 ハーレムが日直の女子にお礼? そりゃ、全くないわけじゃないだろうけど、そんなことでちゃんとお礼するなんて、ハーレムのイメージに合わないような気が……それも自発的にとは。いつもだったら「ほいほい、ありがとさん」とか、礼を言うにしても、わざとおちゃらけた感じで言って、ますます女子に不興を買うのが常なのに。雰囲気もいつもの彼ではないし――と、高松は訝しく思い始めた。

HS ~ある双子の物語~ 第十二話
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