Minto! 3 あたし、ミントこと水無月美都。 今は、衝撃の事実に驚いてます! 「明ってモテるんだね」 歩きながら、あたしは言った。 「別に、そんなんじゃないよ。あたし達幼なじみだから、三人でつきあってるようなもん」 「へぇー……」 あたしはこっそり明の横顔を見た。 通った鼻筋、大きな目。赤いリボン。 やっぱりモテるのわかるなぁ……。 「ミントこそさ、かわいいから彼すぐできるよ」 「彼ねぇ……」 いまいちぴんと来ない。 「あ、川崎真美だ」 あ、あの人……? すっごーい! キレイな人! ゆるいウェーブがかった金髪を三つ編みに編んでいる。 「モテるって、ああいう人のこと言うんだよ」 そういえば、男子がむらがっているような……。 「でも、明だってモテるじゃない」 「たった二人にモテてもね……」 「でも、岡村くんも高野くんもステキじゃない」 「ステキかねぇ……」 明は苦虫をかみつぶしたような顔になった。 「だって、あたし、あいつらの裸見て育ったんだよ」 「まぁ……」 あたしはさぞかし赤くなっていたことだろう。 「それを急に恋人として見ろって言ったってねぇ……」 そうなんだ~。 「でも、どっちもいい人そうじゃない?」 「ま、それは認めるけどさ。あいつらも結構モテるし。でもねぇ……」 明がまた眉を寄せた。 「どうしたの?」 「やっぱり幼なじみとしか見れないわけよ。あたしとしては」 ふーん。ゼイタクな悩み……。 まぁ、あたしだって、岡村くんや高野くんに恋したわけではないけどさ。あたし、一目ぼれの魔法って未だに信じてるし。 でも、その相手が見つからない……。 いいんだ。いいんだ。別に。 あたし達、まだ小学生だもん。恋は、中学生になってからでもいいよね。 「あ、真美ー!」 明がさっきの美少女に声をかけた。相手がこっちにやってくる。 「こちら、川崎真美。こっちは水無月美都。あたしはミントって呼んでる」 「かわいいわね。よろしく」 きれいな顔にソプラノの声。これじゃ、男子じゃなくても気おくれしちゃうよ~。 「あ……水無月美都です。よろしくお願いします」 「お、噂の転校生だ」 「なかなかかわいいじゃん」 「あきらの家に居候するなんて、命知らずだな」 わやわやと男子も集まる。 「誰よ、命知らずなんて言ったの」 「春山だよな」 「いいや。この明さんの耳はごまかされんぞ。――木ノ瀬、あんただね!」 「やー。バレちったか」 「バレちったかじゃなーい。たく、こいつらは……」 明、楽しそう。 あたしといる時より楽しそう。 あたしがどうしようかと迷っていると……。 「ミントちゃん」 真美さんがあたしの肩に手をかけた。 「明はいつもああなのよ」 「ああって?」 「いつの間にか、その場の中心になってしまうというか……」 「ふぅん……」 わかる気がするな。 「あら、笑ったわね」 真美さんが嬉しそうに言う。 「え、あ、はい……」 私はどぎまぎしながら答える。 「明とも仲良くやっていけそうね」 「はい!」 本当にそう思っている。明とだったら楽しそうだ。 明るいし、元気いいし……。 「私も、明にはあこがれているんだ」 「へぇー、そうなんですか」 あたしは思わず得意になった。 明の家に住んでいるのは、あたしなんですよ! そう言いたい気持ちだった。 ま、真美さんはそのこと知ってるでしょうけどね。 その時だった。 キーンコーンカーンコーンとチャイムが鳴った。 「朝勉強の時間よ。……と言っても、ミントちゃんは知らないんだっけ」 「はい。……それから、ミントって呼んでください」 「わかったわ。ミント」 真美さんがふわりと笑う。 美少女って、いるところにはいるんだなぁ……。明もかわいいし。 私が元いた学校だって、結構かわいい子はいたけど、レベルが違う、というか……。そんなことを考えていると教室に着いた。 「なぁなぁ、どこから来たの?」 「ミントって兄弟いる?」 「趣味って何?」 え? え? な、何なの……? 「早速男子が来たわね。それじゃ、私はこれで」 ええっ?! ちょっと待ってよ、真美さーん! 「ふふふ。やはりモテるわね。ミント」 いつの間にか明が隣に来ていた。 「あ、明。何よこれ」 「だーから言ったっしょ。ミントってかわいいって。男子が放っておかんのよ」 「そんな……あたしなんて別に普通だし」 「そのエプロンドレスがねぇ……アリスみたいだってけっこう評判いいわけよ。男子、アリス系って好きだからさ」 「あ、あたし、そんなつもりじゃ……」 「そんなつもりもこんなつもりも、ミントもいっちょ決めてみたら? ミント狙いの子、けっこいるわよ」 ええっ、でも、あたしは小学生だから……恋は中学生からで……。 真美さーん! 明ー! 助けて~! 朝勉強はどうなったの~?! 2011.5.8 4→ |