Minto!

 あたし、水無月美都。小学六年生です。ツインテールがトレードマークの女の子です。
 これから西澤さんという家にお世話になることに決まったんですが――。
 どうしよう……迷った!
 地図では確かにこの辺のはず……。
 あたしが地図を見返すと――。
「待てー! ミーコッ!」
 元気な女の子の声。
 何だろ。
 猫があたしの頭の上に上った。
 きゃー! なになにッ?!
「あー、ごめんなさいッ! こらっ、ミーコッ!」
 叱られてミーコという猫はあたしから降りた。
 色素の薄い髪の女の子。髪は肩までおろしているが、後ろの方をリボンでしばっている。
 へぇー。可愛い子。
 明るい目の色が特徴的だ。
「こら、ミーコ、ごめんなさいは?」
 ミーコは「ニャー」と鳴いた。
「よしよし、こっちおいで」
 ミーコは女の子の肩に乗った。
 あ、そうだ!
「あの……この辺に西澤さんという家はありませんか?」
「西澤?」
 女の子はきょとんとしていたが、やがて言った。
「それ、あたしん家」
「ええっ?!」
 何という偶然!
「あたし、西澤明。明るいと書いてあきだよ。よろしくね」
「は……こちらこそ。水無月美都と言います」
「素敵な名前。いいなぁ。あたしはこの名前のおかげで『あきら、あきら』っていつも男の子扱いされんの。イヤだよ」
 それは、決して名前のせいだけではないんじゃあ……と思ったが、黙っていた。
「ん? 待てよ? 水無月? あーっ! もしかして! 今日からうちに住むっていう……」
「は、はい……」
「よろしくねー」
 明はあたしの手を掴むとぶんぶんと振り回した。
 元気のいい子だなぁ……。でも、わるい子ではなさそ。
 あたしはほっとした。
「じゃ、家に行くからついてきてね」
「うん」

「たっだいまー」
 明が元気よく言い放った。
「こ……こんにちは」
 あたしが言うと……。
 ニワトリやヒヨコ達がお出迎えしてくれた。
「あっ、これはね、ぴよちゃんにちびちゃんにひーちゃんに……」
 明が紹介してくれたが、頭に入らない。
 何故にニワトリがっ?!
 あたしはパニックになった。
「あ、あと……あいつがいたか」
 明の顔がくもった。どうしたんだろう。
「いい? 何があってもおどろかないでね」
 猫やニワトリにもびっくりさせられたが、それ以外に何があるというのだろう。
 西澤家って、もしかしてびっくり箱?!
 あたし、こんなところに住むの?! ひえー!
「開けるよ―」
 明がドアを開けた。
「あっ!」
 声に不機嫌そうな怒りがあった。
 明に続いて、あたしも部屋に入った。
 リビングの壁には、一面の落書き!
 よくこんなに書いたもんだと感心していると……。
「ゆ~う~!」
「げっ! 明」
「ゆう! こら! お姉ちゃんと呼びなさい、といつも言ってるでしょ!」
「おまえなんか明で充分だよ! 明のブース!」
「何ですって?! こら待ちなさい!」
 明とその弟(だよね?)がばたばたと追いかけっこをしていると。
「ゆうくん」
 茶色の髪をゆるくウェーブさせた、綺麗な女の人が入って来た。
「ママ!」
 ゆうっていう名前の子は、女の人に抱きついた。
 ママ? この人が?
 ずいぶんきれいなお母さんだなぁ……。
 あたしが感心していると。
「あなた、水無月さん?」
 西澤さんのお母さんが話しかけてきてくれた。
「は……はい。水無月美都です。よろしくお願いします」
「話は聞いてるわ。美都ちゃんと呼んでいいかしら」
「はい」
「ここを自分の家だと思っていいからね。よろしく」
「……はい。お世話になります」
 あたしは頭を下げた。
「女の子らしいな。明と違って」
 ゆうくんが言った。このエプロンドレスのせいかしら。
「ゆう! あんたは一言多いのよ!」
「ゆうをいじめちゃいけませんよ! 明」
 明とゆうくんのお母さんがぎゅっと眉を寄せた。明は何も言い返せない。
 ゆうくんがお母さんのかげから舌を出した。
 もしかして、ゆうくんて、二重人格?
「だって、ゆうってば、リビングに落書きしてんだよ!」
「でも、将来有名な画家になるかもしれないわよ。ゆうくん才能あるわね。立派立派」
 お母さんのえこひいきぶりも相当なものだ。
「でも、お掃除はちゃんとしないとね。明、手伝いなさい」
「えー。ゆうがやったんでしょうが。ゆうにやらせなよ」
「ゆうくんはまだ子供なのよ」
「はいはい」
「あ……あの、あたしも手伝いましょうか」
 あたしが申し出ると、
「ありがとう。美都ちゃんは感心ね」
 お母さんが言った。
「でも、美都ちゃんはお客様だから」
「平気です。あたし、うちのお手伝いは慣れてますから」
「ミントっていい子だよね」
 と、明。
「ミント?」
「そう。『美都』だから『ミント』。可愛いでしょ?」
「うん」
 結構いいかもしれない。
 その時、ニワトリやヒヨコが乱入してきた。
「ちょっと明! ニワトリ達の面倒はあなたが見なさいって言ったでしょ!」
「やあい、明、また怒られたー!」
「うるさい! ゆう」
 リビングは埃が立つほどの大騒ぎになった。
 あたし、今日からここで暮らすのかぁ……ちょっと心配。

後書き
小学校六年の時のマンガを小説にしてみました。
あの頃は『きんぎょ注意報』にハマってて、絵柄も猫部ねこちっくでした。
私が言うのもなんだけど、かなりいい出来だったなぁ……ノ―トと鉛筆で描いたのだけど。
クラスメート達が先を争って読んでくれたっけ……他に娯楽がなかったからな。
ちなみに、登場人物もきん注を参考にしています。
他にも、未出のキャラは……岡村貴史(ナイ○ティナインじゃないよ。きん注でいう葵くん役)、高野博之(秀ちゃん役)、川崎真美という女の子もいたなぁ。
ちなみに西澤明は、わぴことちーちゃんのあいの子ね。
続きは……書こうかどうか迷ってます。
2011.4.10

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