サービスとハーレム

 それは、サービスとハーレムが十歳頃のこと――
 サービスが自分の部屋に行くと、ハーレムがベッドで寝ていた。彼らは同じ部屋なのである。
 サービスは何の気なしにハーレムの唇にキスをした。
 ハーレムは、ぱちっと目を覚ました。そして、サービスを突き飛ばした。
「何しやがんだ! 気持ち悪い!」
 その台詞は、サービスを傷つけた。
 サービスの目から大粒の涙がぼろぼろこぼれた。
「ハーレムの馬鹿っ!」
 サービスは廊下に駆け出した。

「ルーザー……お兄ちゃん……」
 扉を開けていた部屋に入って来たサービスに呼ばれ、ルーザーは読みさしの本をテーブルの上に置いた。
「どうしたんだい? サービス」
「ハーレムに気持ち悪いって言われたの」
「どうして?」
「僕がハーレムにキスしたから」
「ふぅん。……じゃ、僕がサービスにキスしても、サービスは気持ち悪いと思うかい?」
「……ううん」
 ルーザーはサービスを抱き寄せた。サービスはルーザーの腕の中ですんすんと泣いた。
 落ち着いた時、ルーザーが言った。
「取り敢えず下に行こう、ね?」

 リビングに行くと、ハーレムとマジックがそこにいた。
「ほら、謝るんだよ。ハーレム」
「だって……男同士でキスなんて気持ち悪いだろ」
「そんなことないよ。昔はよくしてたじゃないか」
「そうだけどさ……」
 マジックとハーレムが話している。
 サービスがハーレムに近付いた。
「ハーレム、僕って気持ちが悪い?」
「い、いいや……そんなことねぇよ!」
 ハーレムがこほんと咳払いした。
「さっきはその……悪かったな。これ、お詫びのしるし」
 ハーレムがサービスにちゅっと口付けした。
「ふぅん。どうやら強力なライバルになりそうだな、サービスは」
「ん? ルーザーお兄ちゃん、何か言った?」
「別に」
「遊びに行こうぜ! サービス」
 ハーレムが明るく言った。
「うんっ!」
 立ち直ったサービスもついていった。こういうところはやはり子供である。彼らは庭に出て行った。
 だから、マジックとルーザーとの間にその後ちょっとしたやり取りがあるのを彼らは知らない――
「ハーレムからサービスのことを聞いたが、気持ち悪い、と言われただけでショックを受けるのか。今の子達は」
「サービスは繊細なんですよ。それに、ハーレムから言われたのが堪えたんじゃないですか?」
「でも見てごらん。あんなに無邪気に遊び回って」
「子供は立ち直りが早いですからね」
「……ルーザー。双子達にキス以上のことは教えてはいかんぞ」
「兄さん……自分の発言に責任持ってるんですか?」
「ああ、ほらあんなに駆け回っているよ。サービスも変わったね」
「ハーレムのせいですか……」
 マジックとルーザーは愛おしそうに双子達を窓から眺めていた。

後書き
サビハレプロローグ編です。


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