グッドナイト・ウィーン2
※18禁。お読みになりたい方はスクロールしてください。












































 サービスはGに目を遣った。Gもそれに気付いた。
 お互いの視線がいかがわしく絡み合う。
(あとで)
 サービスが心の中で呟く。アイコンタクトでGにも伝わったのだろう。彼はまた、ハーレムの話に戻った。
「今日は疲れたから、もう寝ようかな」
「え――。もう、かい? 兄さん、積もる話もあったのにな」
 マジックが残念そうな顔をする。
(いつまでも兄貴風吹かしてんじゃない、馬鹿)
 サービスが口に出さずに毒づく。
「もう寝ちゃうの? サービス叔父さん。ぼくももっとおはなししたいよ」
 シンタローだ。シンタローのおねだりには弱い。が、子供は厳しく育てないといけないのだ。マジックのように甘やかしてはいけない。
 尤も、自分のしたことを考えれば、どんなに甘やかしても罪滅ぼしにはならないのだが……人目もはばからずグンマを過保護に育てている高松がサービスには少し羨ましかった。
「大丈夫だよ、シンタロー」
 サービスはシンタローの黒い髪をくしゃりと撫で上げる。
 母親に似ているシンタロー。マジックにはどこも似ていないシンタロー。
 もっと可愛がってやりたい。その想いにサービスは自分で驚いた。
(僕だって、とっくに親になっていても不思議ではない年頃なのだ)
 だが、サービスは一生父親になることはないだろう。何故なら――。
「サービス。飲まないのか?」
 ハーレムのはしゃぎ声で考えは中断させられた。こいつにはどうしてこう、デリカシーというものがないのだろう。ハーレムはマジックに対してゴリ押ししてロッドからもらった酒瓶を開けていた。
「獅子舞、アンタは飲み過ぎなんだよ」
「ふん。シンタロー。おまえはマジック兄貴に似てきたな」
「どこがだよ」
「そういう風に口うるさいところさ」
 シンタローが舌を出した。
「じゃあ、皆さん、お休みなさい」
 高松が心配そうにしていたが、グンマが促すと儚い笑みを浮かべた。特戦部隊の面々は、Gも含めて、
「おやすみなさい」
 と言った。
 BGMだけが虚ろにこの場を盛り上げようとむなしく流れている。
「お休み、シンタロー。また明日の朝、話そうね」
「う……うん」
 シンタローはサービスの服の裾を掴んだ。
「絶対だよ。絶対お話しようね。僕に内緒でいなくなっちゃやだよ」
「わかってる」
「指切りしよ。指切り」
 サービスはシンタローと指切りをした。
「またね、叔父さん」
 ほんの少し寂しそうにシンタローは言った。
「ああ、お休み」
 サービスは自室に引っ込んだ。
 そして――必死なシンタローの顔を思い浮かべた。
(ジャン……おまえの子供の頃は、シンタローと同じような子供だったんだろうか――)
 ジャン。己の親友。――そして、恋人。
(ジャン、俺が殺した――)
 目元に涙が滲んでいた。サービスが指先で拭った。
(僕に内緒でいなくなっちゃやだよ)
 さっきのシンタローの台詞。それはサービスの心の言葉でもあった。
 尤も、私は自業自得だがな――。
 一時間後――。ある男がサービスの部屋を訪ねた。Gだった。
「やぁ、G。来ると思ってたよ」
 サービスは駆け寄って、彼の唇にキスをする。
「あいつ――ハーレムの相手を断るのは大変だったろう?」
 Gは石像のように突っ立っていた。
「さぁさ、こっちに来いよ」
 サービスはGをベッドへ促す。そして、深いキスを交わした。サービスの舌がGの歯列をまさぐる。
「久しぶり――だね」
 サービスは微笑みを見せた。Gの頬にじんわりと汗が浮かぶ。
「ここに来たのは――そういうわけだろ?」
 サービスが言うと、Gは頷いた。
 サービスの、父親になれない理由がここにある。サービスは――ゲイの女役なのだった。いや、女の子も好きになったことがあるし、マジックの嫁、レイチェルに恋をしたこともある。だから、本来はバイセクシャルと呼んだ方が正しいのかも知れない。
 レイチェルがマジックと結婚してからは男しか相手にしていないけど――。
「しかし、君も悪い男だねぇ、G。他に好きな相手がありながら――さ」
 サービスがわざと意地悪く言う。Gが眉を顰めた。
「僕はね、知ってるんだよ」
「俺もおまえが何を言いたいか知ってる」
「――野暮なこと言ったな。すまん」
 そして、二人は長い長いキスを交わす。
 Gがサービスの黒い服の合わせ目に指をかける。サービスの白い肌が外気に晒される。その後、Gは自分の服も脱ぎ捨てる。相手の鍛え抜かれた体にサービスは期待で息を飲んだ。
 長い指で十分慣らされた後、Gが入ってきた。指とは比べ物にならない質量。
「あ……あ……う……」
 サービスが艶やかな声で嬌声を上げる。サービスは知っている。互いのこの行為が代償行為であることを。
(僕もGも、他に好きな人がいる)
 けれど、体が熱く昂ぶるのはどうしようもない。Gはサービスの自身に絡めた指を上下に動かす。蜜がとろとろとサービスの花芯から溢れ出る。
「はっ、G……もう……」
「……一旦、抜きますか?」
「お願い……」
 Gはサービスの芯を指で軽く撫で、その後、彼の奥処を穿った。
「はっ……!」
 サービスは精を放った。Gはまだ大きなまま、息づいている。
 何度も何度も穿たれた後、サービスの体はGの吐精を促した。娼婦の体、と今まで寝てきた男にお墨付きを頂いたサービスである。――しかも極上の。サービスは再び頂点を目指す。そして思った――。
(ああ――堕ちていくんだな……)
 Gにも限界が来たようだ。その時――。
「ハーレム……!」
 と、Gが言ったのが聞こえた。
 はぁっ、はぁっ――上半身を起こして抱き合った二人は汗みずくのまま息づいていた。
 サービスがGを誘惑したのは、Gがハーレムの部下だったからだ。
 ――サービスにとっては、双子の兄、ハーレムは敵だった。
(あいつは――いや、あいつらはルーザー兄さんを殺した)
 マジックにハーレム。あいつらから全てを奪う。それが、サービスの復讐だった。
「ねぇ、G。君は本当にハーレムのことが、好きなんだねぇ」
「――済まない」
 Gも自分の失言については自覚があるようだった。
「ねぇ、ハーレムのこと、抱いたことないんだろう? 君のことだから。――僕が、あいつを君に抱かせてもいいよ」
「サービス……?」
「こんな女衒みたいなことしたくないけど――でも、ハーレムは僕の言うことなら文句呟きながらでも大抵聞くし、君なら、ハーレムは……!」
 その時、サービスは言葉を飲み込んだ。とっくにサービスから体を離していたGの目が瞋恚に燃えている。それは、本気で嚇怒した男の顔だった。Gみたいな逞しく、自分みたいに女扱いされることない、男そのものの男にそんな表情をさせられるハーレムという存在が、サービスにとっては羨ましく思えた。
 Gはぶるぶると体を震わせながら拳を握っていたが――立ち上がり、後ろを向いて服を着ると、ポケットに手を入れながら部屋を出て行った。
 なるほど。僕はGにぶたれたり、殴られたりするほどの値打ちもないらしい。
 何がおかしいのか、腹の底から笑いが込み上げてきた。間接照明の下、サービスは笑いながら、おかしいのか、それとも哀しいのか自分でもわからずに、後から後から流れ出る大粒の涙をぼろぼろと零れるままに任せた。

後書き
『グッドナイトウィーン』の続きです。18禁です。
パプワの小説を発表するのはこれが久々かなぁ。
サービス、ハーレム、お誕生日おめでとう。この話はサービスが主人公ですが。それにちょっと誕生日を祝うにはそぐわない内容な気もしますが(苦笑)。
2014.2.14


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