シンタローもフ・ク・ザ・ツ

「シンタロー、別荘に行かないか?」
ハーレムの誘いにシンタローが頷いた。

バンガローの別荘から見える景色は素晴らしい。シンタローは窓から入ってくる風に髪を靡かせた。
「気持ちいいなぁ」
シンタローは呟いた。
「シンタロー、プレゼントだ」
「ええっ?!ケチなハーレム叔父さんがプレゼントだなんて!」
「ばーか。ケチだけ余計だ」
ハーレムはシンタローを軽く小突いた。シンタローは、
「いてっ」
と冗談ぽく言った。
「開けてみていい?」
「もちろん」
ハーレムは小さな包みを渡してくれた。それは、男もののエメラルドの指輪だった。
「すげぇ……高かったろ」
「ああ。嫌か?……重いか?別に無理してつけなくてもいいからな」
「ううん。すげぇ嬉しい」
シンタローは喜びでぼーっとなった。
何故なら、彼は以前、昔にタイムスリップした時、まだ若かった少年ハーレムに恋したからだ。
その後もシンタローはハーレムを意識するようになった。
ハーレムは、俺のことをどう思っているだろうか……指輪をくれたってことは……俺のこと、憎からず思ってたりするのかな……。
そう思っていると、ハーレムは大きな両手でシンタローの顔を包み込んだ。
「綺麗な目だ」
ハーレムが近々と覗き込む。ハーレムの目も綺麗だ。至近距離で見ると、左目の方がほんの少し濃い青なのがわかる。ハーレムは言った。
「この、近くで見ると緑色に輝く目……サービスは別の男を重ね合わせていたようだが、俺はおまえのことを思い出していた。シンタロー」
ハーレムはシンタローを抱きしめた。シンタローはハーレムの匂いに包まれ、うっとりとなった。
「俺の初恋……シンタロー、おまえだったんだよな。あれは、おまえだったんだよな」
「うん。ハーレム叔父さん……」
「違っていたらどうしようと思ってたんだ。ずっと、ずっと……グンマとキンタローの話で確信した。おまえは、俺の初恋の相手だ」
「ハーレム叔父さん……!」
シンタローも抱きしめ返した。
シンタローとは比較にならないくらい長い間、ハーレムは自分のことを想ってくれていたのだ。それなのに、シンタローはサービスのことしか見ていなかった。
(ごめん……ハーレム叔父さん……)
さらり、とハーレムの長い金髪がシンタローの顔にかかる。
シンタローは強く抱きしめながら、ハーレムの匂いを嗅いでいた。
香水とハーレムの心地好い体臭。ハーレムの体臭はサービスのそれに似ていた。そこでシンタローは、やはりハーレムはサービスと双子であることを再確認することができた。
……欲情が兆してくる。ハーレムを、抱きたい。
ハーレムは倍近くシンタローより長く生きている。そんなに年上の男に欲情するなんて変だ。シンタローは思った。
でも、感じてしまうのは仕方がない。
「なあ、ハーレム叔父さん……」
誕生日プレゼントにアンタのこともくれないか……シンタローがそう言いかけた時だった。
チャイムと共に、
「シンタロー、シンタロー」
と呼ばわる声がした。キンタローだ。
(しまった!)
キンタローもハーレムのことが好きなのだ。こんなところを見られたら、面白く思わないに違いない。それどころか、殺されるかもわからない。キンタローと揉めたくはない。エレクトしそうになった自身も萎えた。ハーレムも事情は似たようなものだったらしい。
ハーレムが舌打ちした。
「……キンタローか」玄関に向かうハーレムの後をシンタローがついて行く。
「ハーレム……シンタロー」
キンタローが肩で息をしている。走ってきたのだろう。
(……邪魔しやがって)シンタローはキンタローに文句を言いたい気持ちだった。ハーレムも同じ気持ちだったようだ。
「何だ?どうした?キンタロー」
「シンタローが……ハーレムと別荘に行ったと聞いて……」
「それがどうした」
ハーレムの声に苛々が混じる。
「俺も……今日はハーレム叔父貴と一緒にいたかったからだ」
「そうか……」
(モテるね、ハーレム叔父さん)
シンタローは心の中で呟いた。もちろん、嫉妬も含んで。
「部下も探してたぞ、シンタロー」
「悪い」
部下に何も言わずに外出したのは確かにこちらの落ち度だ。でも、そしたらキンタローは何で自分達の行き先を知ったのだろう。
「おう、何で俺達がここだとわかった」
「……グンマに聞いた」
そういえば、グンマにだけは話したっけ。きいてきたから教えただけだが……シンタローは思い出した。
「キンタロー、おまえへのプレゼントは後で渡す」
ハーレムが言った。
「ちなみにロゼワインだ」
「酒好きのハーレムらしいな」
「まあな」
キンタローは笑った。
「で、シンタローへのプレゼントは何だったんだ」
「指輪だ」
「……俺もそっちの方が良かった」
キンタローがしょげた。婚約指輪だの結婚指輪だのを連想させる指輪を、キンタローも欲しかったらしい。
「いつかやるさ」
ハーレムが言った。キンタローが、
「ありがとう」
と礼を述べた。そして続ける。
「そうだ。シンタロー、団の誕生日パーティーは夕方に始まるから、マジック伯父貴が今のうちに内輪で祝おうと言っていたぞ」
「ああ、そうだな。でもパーティーはちょっと食傷気味だな」
この間もグンマの誕生会があったばかりである。
「そういうな。みんな俺達の誕生を喜んでくれてるんだぞ」
「それはありがたいが……」
シンタローはハーレムの方をちらっと見遣った。ハーレムが口を開いた。
「……帰ろう、シンタロー」
「……ああ」
キンタローには逆らえない。ハーレムもそう思ったのであろう。しかし、シンタローは残念だった。
まあいいさ。また機会がある。それに、これで良かったのかもしれない。ハーレムにはキンタローもいる。
シンタローの恋。一応は叶ったのだ。それは、行為ができなかったのは心残りだけど……。
「行くぞ、シンタロー」
「うん」
シンタローはハーレムとキンタローの後を追った。

後書き
シン&キンハピバ! なんだかハーレムが出張っている感は否めませんが(笑)。
またしてもいろんなところからパクりました(汗)。
一応『時を駆けるシンタロー』シリーズの続きです。
2013.5.24

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