OVER THE TROUBLE ~組織壊滅編本編~ 28 その頃、アルフレッドとアーサーは―― 道に迷っていた。 「また道に迷ったんだぞ」 アルフレッドが腰に手を当てて堂々と言う。 「やれやれだな」 アーサーは、呆れたとでもいったように、溜息を吐いて肩を竦めた。 「そういうことを偉そうに言うんじゃない、アル」 「何で。君が方向音痴だから迷子になったんじゃないか」 「――って、あのなぁ。ここは複雑怪奇な道筋なんだから、俺のせいじゃない。まぁ、何にしても、耀とヨンスを見つけなければな」 「あの二人なら、大丈夫なんじゃない?」 「そりゃそうだろうけど、ほっとくわけにはいかんだろ」 「確かに」 アルフレッドは、両手を上に向けた。ちょっとバタ臭い仕草である。 「でも、俺だっていたずらにここまで来たわけじゃないんだぞ」 「ほうー……」 自信たっぷりのアルフレッドに、アーサーは冷ややかな視線を向ける。 「じゃあ、どんなつもりで来たんだ?」 「たとえばこのドアさ」 「ドア?」 「このドアを開ければ、ここの秘密がわかるというものさ」 「ただの非常口だろ」 「まぁ、見てなよ」 アルフレッドがぎぃー……と、扉を開けた。 その瞬間、二人とも目を剥いた。 「な……何なんだ、これは……」 フランシスは呆然と突っ立っていた。 「トーリス……フェリクス……アントーニョ、ロヴィーノ……ルートヴィヒにフェリシアーノも!」 「僕もいるんだけどな」 しかし、イヴァンの台詞はスルーされた。 「まぁまぁ」 ジョン・フォレストが物陰から出てきて、ぽんとイヴァンの肩を叩いた。 「ジョン・フォレスト! ああ、ジョン・フォレスト!」 フランシスは喜色満面で叫ぶ。 「久しぶりだな。て言っても、まだそんなに経ってないか」 ジョン・フォレストがにやにやと笑っている。 「ジョンさんはねぇ……ルートの怪我を治してくれたんだよー」 「俺のことはいい。マシューは無事か?」 「僕は無事です!」 マシューの声が聴こえた。 「僕、ちょっとあの魔術師と対決してくるから」 ジョーンズの声がした。 「何だよー、あの声。アルの声だしー。アルはどこにいるんよー」 「あれはアルフレッドじゃない。ジョーンズだ」 フランシスは、事情の飲み込めていない様子のフェリクスに説明した。そういえば、微妙に違う。 「俺も手伝うしー」 「気持ちはありがたいけどフェリクスさん。今のあなたでは足手まといかと」 「何だってー。俺、結構強いしー」 「でも、異次元の戦いは経験したことないでしょ?」 「う……それはまぁ……」 「安心しろ。普通はねぇよ」 フランシスが慰めの言葉をかける。 「そういう僕だって初めてなんだけどね……上手くいくかどうか……ちょっとこの次元を通り過ぎるから、僕の姿を見ても驚かないでね」 「う……うん」 生真面目にトーリスが頷いた。 次の瞬間―― 「ぎゃああああああああ!」 フェリクスが悲鳴を上げた。 「フェリクス! 今驚くなって言われたばかりだろう!」 相棒のトーリスが言う。そういうトーリスも、目が釘付けになって離れない。 「いちいち驚かれると、傷つくなぁ、僕」 ジョーンズはジョーンズなりの悩みがあるようだった。 「い……いや、ちょっとびっくりしただけで……すごいしー! かっけー!」 フェリクスはパチパチと手を叩いた。 「そう? ありがとう」 声の調子からして、ジョーンズは照れているようだった。 「こんなドラゴン、うちでも飼いたいしー」 「フェリクス……おまえポニーだけじゃ足りないのか」 フランシスが呆れ顔で言った。 「ドラゴン飼ってるなんて、マジイケてるしー」 「もういや。お兄さん。この子人の話相変わらず聞かないし!」 フランシスがハンカチを噛みしめる。つまり、普段通りの彼らだった。 だが、今回は――。 「うん、フェリクスの気持ち、少しわかる。だって……見事だもん」 トーリスも、夢の世界に誘われたように呟いた。 「すごいねー。おっきいドラゴンさんだねぇー。パスタ食べるかな」 フェリシアーノもはしゃいでいる。 「ふん。あんなデカ物、置くのに困るだろ」 そう言ったのはロヴィーノだ。 「あのドラゴン、うちでも欲しいやんなー」 「けっ、俺はいらねーぜ」 アントーニョの台詞に、ロヴィーノは吐き捨てるように悪態を吐いた。 「そんなこと言ってー。素直じゃないんやからー」 「うるせぇ! つっつくな」 「あはは、アントーニョくんとロヴィーノくんは相変わらずだねぇ」 イヴァンは笑っている。この笑顔からは、元々持っている彼の腹黒さなんて想像もつかない。 「うーん。あのドラゴンを飼おうとしたって無駄なんじゃないかなぁ。……ジョーンズはマシューの言うことしか聞かないから」 ジョン・フォレストがのんびりと口を開いた。 「ええー! マジー!」 「何だ……それならそうと早く言えよ」 フェリクスは――それからロヴィーノも残念そうだった。ロヴィーノは素直ではないが、態度に気持ちが現われる。 「で、我々は一体何をすればいいんだ?」 ルートヴィヒが訊く。 「ルート……さっきまで痛い思いしてたんだから休めばいいのに」 フェリシアーノは心配そうだ。ルートヴィヒは、フェリシアーノに向かってにこっと笑う。 「大丈夫。俺も国だ。これぐらいの修羅場はかいくぐっている」 「俺だって国だけど、あんな傷負ったら死んじゃうよ……」 フェリシアーノは思い出し泣きをした。 「じゃあ、僕らの為に祈っていてくれるかい? 祈りのパワーはすごいからね。敵をはじき返すほど」 ジョーンズの声だ。もちろん、みんな思い思いに祈り始めた。 後書き 祈りは大事なんですよー。 世界では祈りがきかれた例がいっぱいあります。 29へ→ |