OVER THE TROUBLE ~ファフナ―編~ 3

 マシューが振り向くと――。
 そこには頓狂な格好をした男が二人。アルフレッドとバッシュである。
 まるでRPGゲームみたい……。
 アルフレッドはドラゴンボールに出て来そうな胴着、バッシュは十字架のついた長い服(名前は知らない)を着ている。
「アル、バッシュ! その格好は?」
「ああ。気付いたらこうなっていたんだぞ」
「我輩は僧侶のようである」
 まるでテレビゲームのようだ。
「マシューはどこなんだ?」
「あの僕がマシューです……」
「そんなわけないんだぞ。マシューはもっと締まりのない顔をしてるんだぞ」
 ムカッ! 締まりのない顔で悪かったな!
 マシューは心の中で呟いた。
「僕は今、英雄ジ―クフリードなんだ」
「顔はマシューに似てるけど、醸し出す雰囲気が違う」
「話によると、僕がジ―クフリードの意識を奪っちゃったんだって」
「ジ―クフリードってマシューに似てるのかい?」
 と、アルフレッド。
「外見はな」と、バッシュ。
「ふぅん。俺もジ―クフリードになりたかったなぁ……」
「僕だってなりたいと思ってなったわけじゃ……」
「まぁまぁ。こうなってしまったら仕方ない。作戦を練ろうじゃないか。な、マシュー」
 こういう時、フランシスは頼りになる。例え普段は色事師であったとしても。
「ところで、アルフレッド。おまえさんは何のコスプレしてるんだい?」
 フランシスが質問する。 
「俺は武道家なんだぞ! 正拳突き! 回し蹴り!」
「わっ! アルったら危ない!」
「全く……お兄さんと違って子供だね。坊や」
 フランシスは自分のことをお兄さんと呼ぶこともある。
「関係ないね。俺の国は世界一強いんだぞ」
「あ、あの……」
 マシューがおずおずと言った。
「フランシスさんも……その格好は……」
「ん? お兄さんは騎士よん。この鎧をつけるのも久しぶりだなぁ」
 フランシスは中世ヨーロッパの騎士の格好をしている。普段の青と赤の洋服ではない。最初はどこかで着替えたのかもと思ったが、多分いつの間にかそんな格好になっていたのだろう。アルやバッシュと同じく。
「似合うだろ? マシュー」
「はい! とってもよく似合います!」
「俺は? ねぇ、君、俺は?」
 アルが自分を指差して訊く。
「はいはい。似合ってますよ」
「……何でおざなりなの? フランシスの時は目を輝かせていたくせに。そんなところまでアーサーに似なくてもいいんだぞ」
「呼んだか?」
「はい?」
 現われたのはアーサー……ではなくブリタニアエンジェルであった。
「アーサー……そのコスプレ似合わないからやめた方がいいんだぞ」
 それよりどこから来たのか疑問に思うマシューであった。
 白い天使の服に翼。星のついたステッキ。天使の格好をしたアーサーは結構可愛い。
 その姿を見せたくないんだな。アルフレッドは。全く。何だってこうやきもち焼きなんだろう。
 アルフレッドは天使のアーサーをじっと見ている。なんだかんだ言ってアーサーのこと好きなのだ。
 全く……素直じゃないんだから。
 マシューはくすっと笑った。
「何笑ってんだぞ。マシュー」
「ん……何でもない」
「ちょうど良かったのである。魔法使いの役が空いていたのである」
 バッシュが言うと、アーサーは複雑そうな顔になった。
「俺は今、ブリタニアエンジェル……ん? 何だ?」
 アーサーは白煙に包まれた。そして白い気体が消えた頃には――。
 アーサーは黒いローブを纏っている。
「うん。そっちの方がよっぽど君に似合っているんだぞ」
「そ……そうか?」
 アーサーはアルフレッドの言葉に少し気を良くしたようだった。
「あーあ、さっきの天使の服も良かったんだけどなぁ……露出度高くて」
「フランシスさん!」
 マシューが怒っている。
「冗談冗談。そう怖い顔しなさんな」
 フランシスはマシューの頬をびよーんと広げた。
「ははひへふははい」
 離してください、と言ったつもりである。
(おい、マシュー)
(何ですか)
 マシューは心でジ―クフリードに訊いた。
(おまえ、あのフランシスってヤツのこと好きなのか)
 ジ―クフリードの問いにマシューの顔がボッと赤くなった。
(は……あの……)
(俺にはわからない趣味だが、どうせ関係ないからな)
(寂しいこと言わないでよ)
(え? おまえは男好きなのか?)
(そうでなくて――『関係ない』っていうのがちょっと寂しくて……だって、僕達はもう友達だろ?)
(そんなに簡単に友達ができたら苦労はない)
(そんなぁ……)
(でも……俺の意識を乗っ取ったのがおまえでよかった――)
(何それ。どういうこと?)
(――何でもない)
 何となく。
 ジ―クフリードはいい人なのかもしれないと思った。
「あれ? なんか俺の前に字幕が出ているんだぞ」
「我輩にもである」
 アルフレッドとバッシュがほぼ同時に喋った。これは日本の名高いRPGゲームにありそうな……。
『あるふれっど ぶとうか Lv.51』
『ばっしゅ そうりょ Lv.52』
「ちょっと待て。俺よりバッシュの方がレベルが高いなんてどういうことだい!」
「ふん。レベルを上げたかったらもっと精進することであるな」
「納得いかないんだぞ!」
「やめろ、アル。大人げないぞ」
 アーサーはアルフレッドを窘める。
『ふらんしす ないと LV.66』
『あーさー まほうつかい Lv.60』
「うーん……俺もフランシスに負けるなんて複雑だな」
「な? アーサー、俺の気持ちがわかったろ?」
 アルフレッドは得意顔だ。

後書き
勇者ヨシヒコ観たかったよ……。

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