ニールの明日

第三話

行かなきゃ、行かなきゃ。
でも、どこへ?
何の為に?
この世のどこかにいるニール・ディランディの為にか…。
刹那は溜息を押し出した。外は雨。

一方、ニールは、
「今日はおまえの為に騒ぐぜ!」
と、酔っ払い達に捕まってしまった。ニールは、明日小型艇を操縦するので控えていたが。
(この連中ともこれで最後か…)
そう思うと、寂しいような気がした。
「ニール、アンタ、探し人が見つかるといいな…」
ボブは泣いていた。
「あ、うん。そうだな…」
「そいつのこと、そんなに愛してるのか?」
「ああ」
「じゃあ、おまえの為に乾杯だ…」
「おい、ボブ。それ、何度目の乾杯だ?」
ジョーが茶々を入れる。
「だってだって…うっうっ」
ボブは泣いてばかりでちっとも話にならない。
「おまえさん、恋人が見つかったら、一緒にこっちで働かないかい」
ニールは首を横に振った。
「…だよなぁ。おまえ。身に纏う空気さえ違うもんなあ」
「ありがとう、世話になった。ジョー、ボブ」
「いいってことよ」
ジョーが肩を叩いた。
「それより、その顔どうにかしろよ。恋人に嫌われんぞ」
そんなにひどい顔してたか?まあ、覇気がないのは確かだろうか。
刹那に会うまで、俺は心の底から笑うことが本当にできるだろうか。
「そらよ。もう一杯呑め。いける口なんだから」
「…わかった」
「これを呑んだら解放してやっからよ」
ニールは、
(明日はちゃんと地上に向かうことができるのだろうか…)
と危惧しないではいられなかった。

そして――。
ばしゃーん!
ニールの乗っていた小型艇は海に落ちた。
「何だよ!このオンボロはよ!」
ニールが怒鳴った。小型艇は、ランスが言っていた通りの代物だった。ここに来るまでに一週間はかかった。
沈み行く乗り物を見捨てて、ニールは泳いでいた。島が見える。そして…
船だ!

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