ニールの明日 第六十四話

ニールの明日

第六十四話

「そうか……やはり君が刹那・F・セイエイか。話の流れからしてそうじゃないかと思ってたんだ」
マックスは感に堪えたように呟いた。
「沙慈は……俺を探していたのか?」
「そのようだ」
マックスが頷いた。
「沙慈は昔の話はあまりしなかったが……姉の話は何度かしたことがある。以前はジャーナリストで確か……」
「絹江・クロスロードか」
「ああ、そう、そうなんだ」
それから、マックスと刹那は世間話を始めた。沙慈は作った煮物や余り物をよく刹那のところにおすそ分けに行っていたらしい。沙慈の料理の腕はプロ級だった。
「おい、早く本題に入れよ」
苛々したミハエルが言った。
「ああ、そうだね。……で、沙慈の姉、絹江のノートに『刹那・F・セイエイ』の名前があったらしい。ガンダムマイスターとして」
絹江は昔、誰かに襲われたと聞く。一説によると、ゲイリー・ビアッジという男だったという。一命を取り留めた絹江はしかし、黙して語らなくなった。ジャーナリストも辞めたらしい。
「好奇心、猫を殺す、か」
ニールが溜息と共に吐き出した。
「代わりに沙慈がいろいろ調べているらしい。刹那。君はガンダムマイスターなのかい?」
「ああ。わけあってしばらく留守にしていたが」
「君がキーマンだ、と沙慈は考えていたらしい」
「…………」
「取り敢えず、マックス。アンタの処遇を決めなければな」
ライルが提案した。
「カタロンに寝返るんだろう?」
「ミハエル、そんな言い方はないだろう」
「わかってるよ、ヨハン兄」
やはりミハエルはヨハンに頭が上がらないらしい。
「クラウスに連絡しないとな」
「そうしてくれると助かる」
ライルに対してマックスは笑顔を向けた。ライルは端末を取り出して自分の所属している支部に繋いだ。
「あ、クラウス?ジーン1だけど……え?しょうがねぇなぁ。ちょっとクラウスに代われよ。ああ、クラウス、あのな……」
ライルがマックス・ウェインのことについて話し出した。
「クラウスは色良い返事を返してくれているぞ」
ライルは嬉しそうだった。
「良かったな。マックス」
刹那の台詞にマックスの口角が上がる。
グレンとダシルは今あっちで何をしているのだろうとニールは心の奥で思いを馳せた。
「カタロンの一員になるということは、CBの味方になるということだ。何故ならCBはカタロンと手を組んだからな」
と、ニールが言った。
「ああ。そのことについてはティエリアから聞いたよ」
「そうか」
ティエリアも必要最低限のことは話していたようだ。
「私も前にいろいろ調べてみた……不当に監禁されている者や……アレルヤ・ハプティズムの居所も」
「ああ。ありがとう。マックス、アレルヤの分まで礼を言おう」
刹那が申し述べた。
「マックス!ありがとう!」
ニールも感謝の言葉を言った。
「アレルヤのことについては改めて謝意を表そう。マックス・ウェイン」
ティエリアが愁眉を開いた。
「役に立てたなら本望です」
マックスが頭を下げた。ニールが慌てた。
「そんなことしなくても……俺らの方が情報をもらったんだし」
「おい!俺達も協力したんだぜ!」
と、ミハエル。
「ミハエル。おまえは黙っていろ」
ヨハンが弟を睨めつけた。ミハエルはぐっと口をつぐんだ。ニールはヨハンの影響力を感じると共に少し溜飲が下がったのを覚えた。ミハエルなどよりヨハンの方が余程厄介な相手とわかってはいてもだ。
「これから僕達はアレルヤの救出に向かう。……その前にスメラギ・李・ノリエガを迎えに行きたい」
「俺が行く」
ティエリアの言葉に刹那が申し出た。
「俺も行く」
と、ニール。
「何で」
「何でとは冷たいじゃねぇか、刹那。俺とおまえは一蓮托生だぜ」
「やっぱりアンタ達って変」
ネーナの意見にミハエルはうんうんと頷いた。
扉が開いた。イアン・ヴァスティだった。
「イアン。入る時はノックを……」
ティエリアは美しい眉をひそめた。
「ああ、すまん。早く家族を紹介したくてな」
「家族?」
刹那がきき返した。
「おう。俺の妻と娘だ」
イアンに家族がいることは知っていたが、そう言えば見たことなかったな、とニールは思った。
「へぇー、おじ様の家族ね。ね、あたし達も見ていい?」
「もちろんだとも!」
イアンは快く諾った。
「俺、マックスといるよ」
ライルが言った。
「そうか……残念だな。妻と娘はいい女なんだが。それに、実は乗組員に新しい女性を入れたんだ。かなりの美女だぞ」
「美女……」
ライルが生唾を飲んだ。
「行ってきていい。ジーン1。ここに端末を置いてくれたならクラウスという男に話を聞いてもらうから」
「そうか。悪いなマックス」
「僕はここで待ってる」
ティエリアはずれた眼鏡を直した。
「俺は行く。イアンのおやっさんの妻子が見てみたい。刹那はどうする?」
「ああ……俺も行こう。しかしニール。やはりアンタも美女には弱いってわけか」
「なっ……!俺にはおまえだけだって」
ニールは慌てて言い訳をした。……いや、本当のことなのだが。
「大変だな、色男」
ミハエルがからかった。
「うるせぇ!」
ミハエルとニールの相性は最悪のようである。

2013.4.26


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