ニールの明日

第六十一話

イアン・ヴァスティとラッセ・アイオンがやって来た。
「ああっ!……と、ロックオン。双子だと思っててもびっくりするな……」
イアンが目を見張った。
「全くだ」
ラッセも同意した。
「イアン、ラッセ。モレノは元気だったぞ」
ニールは手短にモレノのことを語った。短い間ではあったが、モレノと行動を共にしたことを。
「そうか……Dr.モレノはもうこっちに戻るつもりはないのかな」
「さあな。モレノさん次第じゃねぇの?」
そう言いながらもニールはモレノがCB、ひいてはトレミーに戻ることはあるまいと何とは無しに感じていた。
「イアン、格納庫に行きたい」
と、刹那。
「よし来た」
「イアンのおやっさん。俺達も行っていいかな。ライルもガンダム見たいだろ?」
「ロックオン、むやみやたらに人にガンダムを見せるのは……」
ティエリアが諌めようとした。
「いいんじゃねぇか?見るだけなら」
イアンはがりがりと頭を掻いた。
「ティエリア。ライルはカタロンの人間だ。俺達に仇なすことはしないだろう」
「ロックオンがそういうなら……」
ティエリアも折れた。
「ただし、僕も行く」
「お目付け役ってわけか。でも、俺もガンダムには興味あるからな」
ライルが言った。
「ラッセ、おまえも来るか?」
イアンが尋ねた。
「ガンダムはいやというほど見てますよ。それに今からトレーニングの時間だ」
「ははは、ラッセはガンダムより肉体の鍛練の方に夢中らしいな」
ニールはラッセが相変わらずなので笑った。これでスメラギ・李・ノリエガがいれば……。そして、勿論忘れてはいけないアレルヤ・ハプティズム。
絶対助け出す。アレルヤ!

格納庫には四体のガンダム。
「整備中のガンダムもあるにはあるが、そいつはまだおまえさん達に見せることはできない。でも見たら驚くこと請け合いだぞ」
「ありがとう、イアン。楽しみにしている」
あ、刹那が笑ってる。
どこまでガンダム馬鹿なんだとニールは少し呆れる思いがした。でもそんな刹那がニールは好きなのだから、
(俺も馬鹿だな)
と思った。要は元気な刹那を見ることができればいいのだ。
刹那は愛おしそうに愛機のガンダムエクシアを撫でた。
「ただいま……エクシア」
ニールには刹那がエクシアに対する執着はわからない。いや、全くわからないわけでもないが、刹那のエクシアに対する情は度を超えている。だが、刹那が幸せそうだとニールも嬉しい。
「良かったな、エクシア。傷ひとつついていない」
刹那はエクシアを優しく触る。
「それは俺達の整備の賜物だ」
イアンは腰に手を当てて得意そうに胸を張った。
「ティエリア、久しぶりに訓練をしたい。ニール、アンタの射撃も見てみたいし」
刹那が振り向いた。
「よっしゃ!狙い撃つぜ!」
「それより……会わせたい人がいる」
そう言ったティエリアは憂い顔だ。本当は会わせたくないんじゃないかとニールは穿った見方をした。
「いや、人達と言った方がいいかな」
「ん?」
ニールは首を傾げる。ティエリアはけして乗り気ではないようだ。スタッフでも増えたのだろうか。もしそうだとしても何ら不思議はない。
だが、ティエリアの様子から見るとただの人間ではないようだ。
あ!もしかして!
「ティエリア、アレルヤのいる場所を教えてくれた奴がいるのか」
「ああ、まあな……」
「是非とも礼が言いたい!会わせてくれ!」
「そのことについてはやぶさかではないが……」
ティエリアは憂鬱そうだ。何か嫌なことでもあったのだろうか。その人物に迫られているとか?ティエリアは美人だから……。
「なぁ、ティエリア……何があったんだ?」
「来ればわかる」
ティエリアはある小部屋に案内した。ライルと刹那も一緒だ。
そこにいた男は淡い金髪で眉毛の色も薄い。だが、ごくごく真っ当に見えた。
「マックス・ウェイン。もとアロウズの兵士だ。カタロンに協力したいと言う」
ティエリアが言うと、一緒にいたライルが、ひゅうっ、と口笛を吹いた。
「マックス。俺はライル・ディランディ。カタロンの構成員だ。仲間からはジーン1と呼ばれている。宜しく」
「宜しく」
マックスがしめっぽく握手をした。
「あなたがカタロンからの迎えの人ですか?」
「いや、俺は兄さんの活躍ぶりを見に来ただけなんだ」
ライルは後ろのニールを親指で指差した。
「双子で?」
「ぴんぽん」
ライルが言った。
この男には特に変わったところとか異常なところは見られない。でもティエリアの様子は変だった。
ばたん、と扉が開く。
「おまえ達は……!」
忘れもしない。それはトリニティ兄弟だった。

2013.3.17


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