ニールの明日

第十二話

(ごめんな、デュナメス)
ニールは自分の愛機に詫びた。ガンダムデュナメスのことである。
このところいろんなことがあり過ぎて、デュナメスを思い出すことは滅多になかった。刹那のことで頭がいっぱいだったということもある。
(いずれちゃんと供養するからな)
しかし、モレノがこの近くで働いていることは朗報だった。
靴に砂が入る。
「暑いからこれでもかぶれ」
グレンはベールをニールに渡した。
「あ、ありがと。……おまえは?」
「俺はいい。……街はもうすぐだ」
多分な、と自信なさげに付け加えた。
(こうして見るとやっぱり刹那に似てんなぁ)
ニールは感心しながらグレンを見つめた。
「どうした」
「……何でもない」
刹那、今どうしてる?
ニールが刹那に心の中で呼びかけた。
「あんたは何しにここまで来た?こんな辺鄙なところまで」
グレンがきく。
「刹那を探しに来た」
ニールの答えに、グレンは、ああ、と言った。
「見つかるといいな」
「見つけるさ」
ニールは改めて誓った。
刹那との間には見えない糸がある。そのことをニールは疑ったことはなかった。
ヤシの木が見えてきた。オアシスだ。
「案内ご苦労だったな。ダシル」
グレンが労いの言葉をかけた。
「いえいえ」
ダシルが嬉しそうに答える。
「だが、足労だがモレノのところにも連れてってもらえないか?」
「わかりました」
モレノの病院のある場所は、粗末なところであった。
(こんなところにモレノがいるのかな)
ニールは辺りを見回した。
「モレノさん、お客様ですよ!」
ダシルが呼ばわった。
「誰だ?」
モレノがこちらも見ずに誰何した。
「モレノさん……俺です」
ニールはかぶっていたベールを外した。
「ロックオン!」
「久しぶりです」
「はっはっはー。お互い死に損なったな!」
モレノは立ち上がって、ニールの肩を叩きながら握手をしてくれた。
「今何してるんだ?」
「相変わらず患者の面倒を見とるよ」
「あのー、ロックオンって?この人はニールじゃないんですか?」
ダシルがモレノに質問する。
「ああ、私達はソレスタルビーイングの仲間だ」
「おい、モレノさん……」
「いいだろう。ソレスタルビーイングは秘密組織じゃなくなった」
「ソレスタル……ビーイング!」
グレンの口調が厳しいものになった。懐から銃を取り出す。
「動くな、二人とも!」
「やっぱり秘密にしておいた方が良かったみたいね」
「……だな」

→次へ

目次/HOME