ニールの明日

第百九十二話

「よぉ、リヒティ」
 イアンがリヒティ――リヒテンダール・ツェーリに声をかけた。
「おやっさん!」
 リヒティが嬉しそうな顔をした。
「お疲れ様、だな。お前には一番危ないところを任せて済まなかった」
「いいっスよ。俺、半分機械のようなもんだし」
「――お前に何かあったらクリスとリヒターが泣くからな。他の皆もだ」
「おやっさんこそ……無事でいてくださいよ。リンダさんとミレイナちゃんの為に」
「当然だ。俺達は死なない。――やれることは全てやった。後はトレミーがラグランジュ3に無事たどり着けるかどうかだな」
 イアンは廊下の向こうを見遣った。つられてリヒティも何となくそちらを見た。

 ニールの部屋――。
「刹那……」
 ニールが刹那に手をかけた。
「離せ……シャワー浴びてくる」
「シャワーなんて浴びなくても――俺はお前が今すぐ欲しい」
「汗臭いぞ」
「そのままのお前を味わえていい」
 刹那が肩にかけられたニールの手を振り払った。
「はーん……まぁいいや」
 ニールがいいことを思いついた、という風に刹那に笑いかける。
「どうした? また碌でもないこと考えたか?」
「一緒に浴びようぜ。刹那」
 刹那が呆れたように溜息を吐いた。
「そう言うと思った――まぁ、俺に否やはない」
「刹那……!」
 ニールが感動しているようだった。
「一緒にシャワー浴びるのは久しぶりだな」
「そうだったか? ――変なことはするなよ」
「えー、好き合ってる者同士が愛し合うことのどこが変なことなんだ?」
 こいつには言っても無駄だ。刹那はそう言いたげな目をした。確かに、ニールも自分を抑えきれる自信がない。
「一緒に洗おうぜ、刹那」

 シャワールームに水音が響く。ニールは早速ボディタッチした。刹那のミルクコーヒー色の若い肌が弾む。その美味しそうな果実のような肌が水を弾く。
(いい体だよなぁ、ほんと)
 思念が届いたのか、刹那がきっとニールを睨む。ニールは知らんぷりをした。
 ニールが刹那の肩にキスを落とす。
「変なことはするな、と言ったろ」
「変じゃないさ」
 刹那はニールのするがままにさせておいた。ニールの手はやがて某所に伸びる。
「あ……そこは……」
「反応してるぜ。刹那の可愛いとこ」
 刹那の花芯が蜜を湛えてふるふると反応している。流れる水が刹那の蜜を溶かして排水溝に流れて行った。
「前より少し成長してきたんじゃねぇか?」
「そんなこと知らない――ああっ!」
「食いたいぜ――刹那」
「俺は……汚れている。そんな俺でもいいというのか」
「お前だからいいんだ。それに、汚れていると思ってたら手なんか出さないぜ」
 刹那が言っているのはアリーのことだろう。アリーは刹那を蹂躙していた。けれど、アリーはもういない。きっと娘のニキータとあの世で幸せに……かどうかはわからないが、暮らしていることだろう。
(俺の物だ、刹那――)
 ニールは凶暴な本能が兆してきて、ニールは刹那の肩を噛んだ。
「ああっ!」
「良くしてやるぜ。刹那」
 ニールは噛み跡を舌でなぞる。刹那の花芯を手で扱きながら。だが、刹那はきっと水が傷に沁みて痛いだろう。それすらも快感に変化させてやる。
「うっ!」
「わりぃ、刹那。我慢できそうにない」
 ニールは刹那の蕾に指を宛がう。そして――巧みな指さばきで解していく。
「ニール……」
 刹那の声に甘さが混じる。でも、まだ我慢だ。刹那が自分を求めてくれるまで。
「ニール……ベッドへ……!」
「俺はここでもいいんだけどな」
「――このケダモノ」
「あ、そんなこと言うんだったら、もう触ってやんなくていいんだな。刹那のここはこんなにひくひくしてるのに」
「…………」
 刹那が怖い顔をする。これは失敗だったかな――と流石のニールも思う。だが――。
「――れろ」
「え?」
「さっさと挿れろって言ってるんだ! この馬鹿」
「はい。上出来!」
 ニールは解れた刹那の綺麗な蕾に己を宛がい、後ろから、ずん、と貫いた。
「ああっ!」
 シャワーのお湯で濡れたまま、二人は交合した。どちらもシャワーを止めよう、などと言わない。
「綺麗な肌だぜ。――刹那」
「ニール――あっ……!」
「いい声だ」
「くっ……」
 刹那は少し屈辱を感じているらしい。結局はニールの良いようにされているのだから。
 ニールは刹那の体をゆっくりと味わった。相変わらず締め付けが良い。
「好きだぜ。刹那。お前の体も――魂も」
「魂? そんなものある訳ない……」
「どうしてだ? イノベイターは魂で話してるんだぜ」
「相変わらず適当なことを――うっ!」
 ニールは勢い良く相手の体を突くと、そのままゆるゆると体を引く。刹那の蕾が彼のいのちを求める。
 ニールはまた刹那の感じやすいところを突いてやる。刹那の体が歓喜に震える。
「刹那――いい体だ」
「こうなるのがわかってたから、お前とシャワーを浴びたくなかったんだ……くっ」
「もっと声を出せよ。刹那。いつものようにさ」
「俺だって――声を出したいさ。だけど、お前の与える快楽に負けたくない」
「――もう手遅れだよ」
 ニールはまた引いて今度は深々と奥処を思いっきり穿ってやる。刹那が鏡に精を放つ。
「ニー……ル……」
 そう言って、刹那はくたっとなった。ニールが刹那の体を支えてやる。
「おっと」
「ニール……だからベッドへ行きたいと言ったんだ」
「――だな」
 ニールも、刹那の射精後の肉壁から伝わる心地良さと、濡れた黒い髪から覗く刹那の色っぽい横顔を見て達した。刹那が一旦シャワーのコックを捻ってお湯を止める。ぽた、ぽた、とニールと刹那の二人の髪の毛先から水滴がしたたる。――彼らは息を整えようとする。
「刹那……その誘っているとしか思えん表情で俺をイかせるなんて――やるじゃねぇか」
「そういうことしか言えんのか。お前は」
「まだ時間はあるぜ。ベッドへ連れて行ってやる。その前に後片付けだな」
 今度はニールが蛇口を捻り、シャワーのお湯で刹那の中から自分の精液を掻き出す。刹那が時々もらす艶のある声で、ニールのものは再び頗る元気になって行った。刹那の花芯も天を仰ぐ。

2017.1.17

→次へ

目次/HOME