リョーマと跡部のおじい様

「景吾様。大旦那様がお見えです」
 ――メイドの一人が言った。
 ついに来たか! この日が!
「大旦那様?」
「……俺の祖父だ」
「跡部さんのおじいさん?! 俺も会いたい!」
 リョーマがはしゃぎながら言う。こいつ、おじじ――いや、おじい様に会ったらどんなこと言うだろう。……ああ、胃が痛ぇ……。
「景吾。友達が来てるようじゃが……」
「あの人が跡部さんのおじいさん?」
 リョーマ……人の祖父を指差すのはやめろ……。
「そうじゃが、君は」
「越前リョーマっス」
「越前君か。孫を宜しくな」
 リョーマがじーっとおじじを見つめている。ああ、滅多なこと言うんじゃねぇぞ。リョーマ……。
 俺様は気持ちを落ち着かせるために紅茶を飲んだ。ああ、高級茶だというのに、味も香りもわかんねぇ……。
「宜しく跡部のおじいさん、――それにしても、あなた、ハゲてますね」
 俺様はぶーっと紅茶を吹いた。何てこと言うんだ! リョーマ!
「失礼! リョーマは今ちょっと調子が悪いんですよ!」
 そう言って、俺様はリョーマを引っ張って行こうとする。
「な……何すんだよ跡部さん!」
 俺様はリョーマの腕を引っ張って部屋へと連れていく。全く! 何てこと言うんだこのガキは! 確かにおじじはハゲているけれど――それは年のせいだしどうしようもねぇじゃねぇか! 皆固まってたぞ!
「どうしたの? 跡部さん――そんなにがっついて……」
「うるせぇ! がっついてる訳じゃねぇ!」
「冗談だって……ハゲてるからいけないなんて言ってないじゃない。ただ事実を言っただけじゃん」
「おめーなぁ……本当にああ言えばこう言う……」
 俺様は深い溜息を吐いた。越前リョーマという少年と付き合うのは、本当にある種の覚悟が必要だ。
「それに……ハゲても素敵じゃん。跡部さんのおじいさん」
「そうか……」
 この言葉は後でおじじに伝えてやってもいいかな、と俺様は思った。確かに、おじじはハゲてても味がある。
「ねぇ、跡部さん。跡部さんも将来ハゲるの?」
「俺様はハゲねぇよ!」
「でも――俺、跡部さんが年を取ってもハゲになっても、愛することが出来る自信あるよ」
 リョーマ……。
「そうかい、ありがとうよ。でも、俺様はハゲねぇよ。ハゲの遺伝子は母方から来るってテレビで観たからな――お袋の家系はふさふさだからな」
「ふぅん……」
 俺様がシャワー室に行こうとしたら、リョーマに押し倒された。
「何する……んっ」
 リョーマにキスされた。長いキス。けれど、本当はそんなに長い時間経ってなかったかもしれねぇ。
「貴様……シャワーくらい浴びさせろ」
「いいじゃん。跡部さんいつも綺麗にしてるから――いい匂い」
「だからって発情すんな。うわっ!」
「跡部さん……」
 リョーマがキスを繰り返す。こっちもその気になって来ちまったじゃねぇか。くそっ。
「跡部さんもきっちり反応してるじゃん。責任とって満足させてあげるね」
「だからやめろって……こら」
 リョーマが俺様のズボンと下着を下ろし、俺様のペニスを咥える。――もう……勝手にしろ!
「跡部さんの……美味しい……」
「そうかよ……」
 やべぇな……イキそうだ……。リョーマのヤツ、いつの間にこんなに上手くなったんだ? こいつは『千歳飴を舐める要領だよ』と以前ほざいていたが――俺様のは飴か? それに、俺様は千歳飴というのを舐めたことがねぇ。あってももう忘れてる。
「んっ……リョーマ……いや、だっ」
「それはいいってことだね。――いいよ、イっても」
 畜生。こんな年下のガキにいいようにされやがって。俺様ってば――これでも跡部家の人間か。
「あっ、ああっ!」
 俺様は我慢出来ずにリョーマの口の中で出してしまった。リョーマが俺様のを飲み込む。
「てめ……正気かよ……」
 リョーマはよく、俺様のを飲みたがる。リョーマによれば、『牛乳や乾汁よりは美味しい』って――。牛乳はともかく、乾汁と比べられたかねぇぞ、俺様は!
「さ、今度は俺が満足させてもらう番だよ」
 ――リョーマは口の端から俺様のを垂らしながら、アルカイックスマイルを浮かべた。その様が、何とも艶やかだ。俺様を誘っているようだ。――俺様は、リョーマの色香に、負けた……。
「お前ばかりじゃなく、俺様の方もちゃんとよくさせろよ」
「あれ? さっきのじゃ足りなかった? ――跡部さんてば欲張りなんだから。……でも、そこが好きなんだけど。――大丈夫。ちゃんと天に昇るような気持ちにさせてあげるから」
 俺様は、精液の匂いのキスをリョーマから受けた……。

 あー……もう朝か。俺様は朝は弱い方じゃねぇんだけど……やっぱり抜かずに三発されたのはしんどかったのかもな。しかも、長い時間かけて……。
「リョーマ?」
 リョーマがいねぇ! 俺様は腰が痛いのも忘れてリョーマを探し出す。
 どこにいる、リョーマ!
 ――リョーマは食堂でおじじと歓談していた。おじじが愉快そうに笑う。何だ? あの二人――意気投合しちまったって訳か。
「おはよう。景吾」
 笑顔でおじじが言う。
「あ、おはよう、跡部さん。朝から元気そうだね。どうしたの?」
「てめぇを探してたんだよ。リョーマ。――あ、おじい様、すみません」
「いやいや。景吾。お前さんの友達は楽しい子じゃね」
「俺は跡部さんの友達じゃないよ。跡部さんのこい――」
「わーっ、わーっ!」
 俺様はリョーマを止めようとした。リョーマは遮られて、不満そうに呟いた。
「別にいいじゃん――いつかはわかることなんだし……」
 でも、リョーマもそれ以上恋人だのなんだのとぬかすのはやめるつもりだったらしい。
「景吾をボウズにしたのはお前さんだったんじゃな。リョーマ君。その時の写真を見せてもらったが、なかなか男前に写っているじゃないか。なぁ、景吾」
「はぁ……」
 ボウズをかけたテニス対決で、俺様が負けたのはそう遠い昔のことではない。
「でしょう? 跡部さん、ボウズも似合うって思ってましたもん」
「ちょっと、今の南次郎に似ていたな」
「げー、親父と? 跡部さんの方がいい男っス」
 俺様はうんうんと頷いた。いいこと言うじゃねぇか。越前リョーマ。――けれど、おじじは何で今の南次郎さんを知ってるんだ? 確か、南次郎さんは近頃はメディアには滅多に出ていないはず。
「おじい様は最近、南次郎さんと会ったこととかあるんですか?」
「散歩の途中にな。南次郎もいい男じゃないか。ああいう息子が欲しかったね」
 ――おじじと親父の仲はそんなに良くない。いや、悪くもねぇのかもしれないが、互いにいつも憎まれ口ばかり叩いている。その代わり、祖父は俺を溺愛してくれている。
 おじじだって親父のことを本当はそう嫌っていないのかもしれねぇが……親子間の仲というのは、いつだって謎だな。
「さぁさ、お食事にしましょう。景吾さん」
 お袋がソフトな声で言う。
「あ、俺達先に食べたから」
 リョーマが指を動かした。何だろうと思って耳を寄せる。
「跡部さんのお母さん、美人だね」
 俺様もリョーマの耳元で言う。
「お前のお袋さんには負けるがな」
 ――俺様達はクスクスと笑う。
「まっ、やだわ。内緒話だなんて――何話してたの?」
「お袋――野暮だぜ」
「俺達の母さんが二人とも美人だってことを話してたの」
 まぁ、そう――と、笑顔で言いながら、お袋はメイドに食事を持って来るように頼む。やはり俺様のブレックファーストはイギリス式でないとな! 俺は和食が好きなんだよ――リョーマはおじじにそう言っていた。

後書き
pixivからの再録です。
『リョーマくんと、跡部のおじい様』のつもりのタイトルでしたが、将来はリョーマくんのおじい様にもなるかも?!
リョ跡万歳! 18禁ですが(笑)。
2020.03.27

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