真ちゃんの誕生日を祝うのだよ(まぁ、とにかくそういうことなのだよby高尾)

「真ちゃーん、真ちゃーん」
「うるさい、離すのだよ、高尾」
「そんなこと言わないでさー、みんな真ちゃんの誕生日祝いたがってるよー」
「いらないって言ってるのだよ」
「えー? でも、去年のオレの誕生日にはいなかった人もいるんだしさー。噂聞いて待ってる人いるんだよ?」
「高尾の誕生日とオレの誕生日は関係ない!」
「あー! そんなこと言っちゃうんだ。わかった。相棒の言うこと聞かない勝手な真ちゃんにはもうちゅーしてあげない!」
「どこなのだよ。誕生会の会場とやらは」
「真ちゃん……素直に言うこと聞いたよ……」
 オレ、高尾和成はマジで感動した。
「教室だよん、行こう」
「待て。引っ張るなと言ってるだろう」
 ふー、と真ちゃんが体勢を立て直す。
「真ちゃん、ハッピーバースデー」
 そう言ってオレは真ちゃんにキスをした。
「――キスしないんじゃなかったのか?」
「これから教室行くんでしょ? 素直な子にはご褒美☆」
「何がご褒美なのだよ……」
 2m近い真ちゃんが屈んで教室に入ると――
 パーン パパパーン。
 勿論、真ちゃんがそんなクラッカーの音にビビるはずもなく――。
「ふん」
 と鼻を鳴らした。意地っ張り真ちゃん。ほんとは嬉しいくせに。
「ハッピーバースデー。緑間君」
「誕生日おめでとう、緑間」
 クラスメートがわらわらと群がってくる。
「こ……これは一体どういうことなのだよ。オレはこんなにクラスメートに懐かれるようなことはしていないのだよ」
「高尾君のおかげよ」
 ええっ?! オレの?!
「高尾と一緒にいる時の緑間ってマジ面白くてさー、もう最高!」
「だから、オレは面白いから高尾といる訳ではなくって――ああ、もうめんどくさい! 誕生日祝ってくれてありがとうなのだよ。これで気が済んだか!」
 真ちゃんが息を荒げている。
「きゃああああ、緑間君のツンデレー!!」
「おまえ、マジおもろ!」
「えー、こほん。今から授業中なのだが?」
 空気を読まない古文の先生だ。尤も、その空気の読まなさがかえって珍重がられているが。
 みんなは特に文句も言わず、大人しく、
「はーい」
 と、従った。みんなに言う。ある程度は空気が読めない方が、いい。オレなんか空気読んでばっかだから。
 授業も終わり、昼休みになった。
「ケーキが来たよ。隣のクラスから」
「えー?! うっそ!」
「調理実習だったんだってー。ほら、あの家庭科の先生、緑間君ファンクラブに入ってるから」
 いつの間にできたの? そんなファンクラブ。
「私達で作ろうと思ったのにねー。五時限目に」
 五時限目は調理実習なのだ。オレ、そんな話聞いてなかったぞ。
「オレ、知らなかった」
「だって、これは女子部の計画だったからねー」
「真ちゃん……」
 のけ者にされたオレは泣いた。真ちゃんには払いのけられるし。
「でも、材料とかどうしよう……」
「放課後に2組と合同で祝えばいいじゃん」
「どんどん話が大きくなっているのだよ」
 真ちゃんが言う。
「うん……オレもちょっと怖い……」
「電話にはお祝いの言葉が届くし」
「うん。普通は嬉しいことだけどね」
 オレは一応フォローする。
「主将からLINE来た?」
「来た」
「何て?」
「『たんおめ』」
「それだけ?」
「――だけ。まぁ、その方が有り難いのだよ」
 みんなに祝われて怖がる主賓もどうかと思うけどねぇ……。
「まぁま、この際流されてみるのも手じゃない?」
「これはそういう時に使う言葉じゃないのだよ」
 女子達がきゃあきゃあと騒ぎながらスマホを見ている。
「みんな真ちゃんのことについて話し合ってるんだよ」
「オレがそんなに人気あるとは思えんが?」
「何言ってんの! 真ちゃんは世界一のシューターだろ?」
 ――オレ、何恥ずかしいことまくしたててんだろ。しかも、秀徳一でなくて世界一。
 真ちゃんの顔つきが変わった。微笑んでいる。そんな顔も綺麗だけど。
「ありがとう――なのだよ」
「うわっ、はずい、はずい」
「きゃあ、たかみどたかみど!」
「何よ、みどたかに決まってんでしょ?!」
 何だかわからないが、女子連に亀裂が入りそうになった時――。
「まぁまぁ。みんな仲良くしようよ。ほら。せっかくのお祝いなんだしさぁ――」
 オレが割って入る。女子達にも思うところがあったらしい。
「そ……そだよね。ごめんね。高尾君。緑間君」
「オレに謝んなくてもいいよ。カプ論争なら他でやってね」
「カプ論争とは何なのだよ」
「……真ちゃんは知らなくていいのだよ」
「――真似するな、なのだよ」
 ああ、もう、真ちゃん可愛い!
 真ちゃんはそのままの真ちゃんでいて!
 あー、でも、真ちゃんの可愛さは卑怯だよ。ずっとオレのモンでいてお願い!
「――高尾」
「何?」
「お前は何か持ってきたか?」
「あ、わかるー? 図書券だよ。真ちゃん本好きっしょ」
「何だ。普通だな。それにプレゼントを選ぶ労力も惜しむなんて」
「まぁ、後はそのうちにね」
 オレはね、真ちゃん。別の日にお汁粉が美味しいお店に連れて行く予定だったんだ。今日はみんな盛り上がってるしそれどころじゃないし。
 でも、これだけは言おう。生まれて来てくれてありがとう、真ちゃん。
 オレ達、真ちゃんが大好きだよ。ちょっとツンデレなところもね。
「図書券が不満だったらさ、どこかで一緒に本選ぼうぜ」
「――わかった。ちょうど読みたい本があったのだよ」
 真ちゃんの読みたい本て何かなー。お汁粉屋の帰りに本屋に寄ってもいいなぁ。――取り敢えずおめでとう真ちゃん。

後書き
真ちゃんお誕生日おめでとう!
やっぱみどたかすっきゃねんなぁ(笑)。
今年も真ちゃんはツィッターで皆に祝われてたよ!
高尾君といつまでも仲良くね。
2015.7.7

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