オレが緑間で緑間がオレで

※この話は18禁です。ぬるいけど。

「うーん……ん?」
 いやに視界がぼんやりしてる。隣では緑間真太郎が寝ている……あれ?
「真ちゃん……ねぇ、起きて」
 オレの声も心なしか低い。真ちゃんの緑の頭が黒く見えるのは気のせいか?
「何なのだよ……わぁっ!」
「なんだよー、真ちゃん。そんなに驚くほどオレ、変?」
「もしかして高尾か……? ――鏡を見るのだよ」
 オレはぼんやりした視界の中、目を凝らして鏡に近付いた。――後数秒でオレが真ちゃん以上の声を上げて騒ぐことになる。

「何なのよ! お兄ちゃん……じゃなくって、さっきの叫び声、もしかして真太郎さん?」
「え……う……」
「ごめんなさい。あんなに騒ぐのはお兄ちゃんしかいないと思ったものだから」
 ひどいぜ、なっちゃん……。
「で、何があったんです?」
「――何でもない……のだよ」
「勝手に入ってきてすみません。どうもお邪魔しました」
 なっちゃんはドアを閉めた。オレ、そんなにうるさかったのかなぁ……。
 今、真ちゃんはオレの家に泊まっていた。勉強もそれなりにした。エッチなこともそれなりに。
「オレの方こそとんだ災難なのだよ。こんな姿になったなんて……」
「何だよ、災難て……そんなにオレの体、嫌?」
「う……いや……」
 真ちゃんもどもってしまっている。そりゃそうだよなぁ。中身が入れ替わったなんて。フィクションじゃありがちだけど。
「取り敢えず、朝飯、食おうぜ」
 オレは真ちゃんを誘った。
「待つのだよ、高尾」
「えー? 今はそっちが高尾和成でしょうが」
「何だ、わかってるじゃないか……いらぬ困難を呼び寄せぬよう、中身の入れ替わりについては内緒にしておいた方がいいのだよ」
「そうだね……じゃあ、語尾から直そう。オレは『なのだよ』をできるだけ使うようにする。真ちゃんは『なのだよ』を使わない。もし使ったらオレがふざけて使った風を装うこと。わかった?」
「ああ、わかったのだよ」
 そうして、オレ達は階段を降りて行った。

 オレ達バスケ部は夏休みも練習がある。オレはじゃんけんに負けて真ちゃんを乗せている。でも、傍目には真ちゃんがオレを乗せているみたいに見える。
「おー、なんだー、お前ら。今日は緑間が自転車漕いでんのかぁ?」
 宮地サンがにやにやしながら訊く。
「え……はい……まぁ」
「がんばれよ」
 そう言って宮地サンはオレの肩をぽんと叩く。
 がんばれって言われても、もう目的地に着いたんだけどね。
「おーい、高尾……降りるのだよ」
「ちょ……ちょっと待って……」
 やっぱりぎこちないな、オレ達。
 まぁ、同性で、気が合ってて――だから、少しは慣れてもいいはずなのに。
 オレ達は体育館に向かう。バッシュのスキール音が耳に心地よい。
 うーん。視界が高いな……。
「高尾」
 真ちゃんがちょんちょんと突く。小声だ。
「眼鏡がなくても目がよく見えるのだよ。ちょっと感動したのだよ。ホークアイも使えるし」
「そりゃ良かったね」
 吹き出しそうになりながらオレは答えた。だって、あの真ちゃんが小学生みたいなことで感激してるんだもん。
 でも……。
「部活中はなのだよ禁止!」
「わかった……」
 真ちゃんがしょげた。可愛い! 見た目がオレ自身だから特に! あ、別にナルシストなわけじゃないけど、自分の顔って何となく愛しいじゃん。
 真ちゃんがホークアイを使えるということは、もしかして――。一度アレやってみたかったんだよねぇ。オールレンジシュート! オレはひゅっとボールを放つ。ボールは見事な放物線を描いてゴールリングに……何とか入った。
「うしっ!」
「何で人事を尽くさない高尾のシュートが入るんだ」
「へっへー。今はオレ、無敵のシューターだもんね」
「緑間」
 やべっ。大坪サンだ。
「な……何でしょう」
「お前、いつもと違うんじゃないか?」
「そ、そんなことありませんよー」
「ならいいが」
 大坪サンはどこかへ行ってしまった。真ちゃんが言った。
「良かった……。キャプテンにバレなくて……こんなみっともない姿になったなんて、バレたらいい笑いものだ」
「それ、すっげーひでーいい草……」
 シャワーで汗を流す。うん、真ちゃんのって相変わらず大きい。こんなもんがゆうべオレの中に入ってたのか……。
 オレがシャワーを終えても真ちゃんはまだ出てこない。やっと出てくると、赤い顔していた。あ、オレのいじってたな。
「早く行くのだよ」
「おう」
 今は二人きりなので、口調が戻っても構わなかった。

 今日も真ちゃんはオレん家に来ている。家族が構わない方で助かった。
「真ちゃん。背中流しっこしよ」
 真ちゃんは微笑しながらも頷いた。
「お前がちゃんとオレの体を洗うかどうか見張っていてやる」
「どうもご親切に」
 オレと真ちゃんは体をごしごし洗った。背中も洗った。今はオレが緑間の背中を。緑間がオレの上半身を。
「あ……」
 真ちゃん……。
「なに勃起させてんだよ。真ちゃん。轢かれたいの? ねぇ、轢かれたいの?」
 オレは宮地サンの口癖を真似して詰め寄った。
「――不可抗力なのだよ」
 真ちゃんは淡泊に見えて結構エロい。
「まぁ、いいや。その代わり、今晩抱かせて!」
「え――?」
「真ちゃんも抱かれる方の快感味わってみたくない? 抱かれる方が気持ちいいって言うし。男だから事情は違うかもしれないけど、結構快感かもよ。オレ、開発されてっから」
「最後の言葉はあてつけか?」
「勿論」
 そして、オレ達はベッドインした――。

 ――イッた後、オレ達はベッドでうだうだしていた。
「真ちゃん……良かった?」
「ああ……少し疲れたがな」
「オレも自分がどんなに名器かわかったし~。オレの体でヤるのって超気持ち良かった~。最初は自分自身を抱いてるみたいで複雑だったけど」
「お前は抱かれる方が向いているのだよ。せいぜい貞操を狙われないように気をつけることだな」
「はーい。エース様。つか、こんなこと真ちゃんにしかさせないし」
「――もう寝るのだよ……」
 オレも「おやすみなさい」と今は真ちゃんの魂が入っているオレの額に口づけた。
 因みに。朝になったらオレ達の心と体は元通りになっていた。つまり、緑間は緑間の姿で。オレはオレ自身の姿に戻っていた。
 今でも何故かはよくわからないけどね。入れ替わったのも、元に戻ったのも。

後書き
これはパラレルです。
後、緑間が高尾に抱かれるお話も他にありますが(まだ発表してないけど)、それとは違う世界のお話☆
2014.11.27

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