ローカルサイトでラブラブ9 ~コスプレしたのだよ~

「緑間くーん」
「しーんちゃん」
 ひな子と高尾がやってきた。こいつらが来ると碌なことがない。しかも、何か企んでいるようで――。
「ようこそ。朝倉さんに高尾君」
「はい!」
 ひな子もすっかり母と打ち解けている。
「先に部屋に行っていてくれないかしら。お母さん、真太郎と話があるから」
「わかりました」
 高尾とひな子がいなくなると母が耳打ちした。
「朝倉さん、可愛いわねぇ。真太郎も隅におけないわね」
「はぁ?」
「だって、朝倉さん、あなたの彼女でしょ?」
「――ひな子には彼氏がいるのだよ」
「……そうなの。まぁ~、残念。まぁ、あれだけ可愛ければねぇ……」
「大体、ひな子を彼女にするくらいなら、高尾を彼女にした方がマシなのだよ!」
「え……?」
「あ……」
 オレは口元を押さえた。硬直している母を後目に、オレは急いで部屋へと上がって行った。

「今回はね、高尾君と緑間君にコスプレやってもらいたいの。写真撮ったらサイトに載せるのよ!」
「勿論ローカルサイトだね。ひなちゃん♪」
「……その大荷物は何だ」
「衣装に決まってるじゃなーい。高尾君にも運搬協力してもらったよ」
「へへっ!」
 ひな子はどびら~っと荷物を広げた。セーラー服に執事服。ウェイトレスに王子服……何故かウェディングドレスまである。
「着物も持ってきたかったんだけどねぇ……あれって重いでしょ?」
「そういう問題か!」
 高尾がセーラー服を持ってどこかに消えてしまった。再び現れた時は、セーラー服を見事に着こなしていて、オレは思わず噴いてしまった。
「なっ、なっ、高尾……!」
「どう、真ちゃん、ひなちゃん、似合う?」
「似合う似合う」
 高尾とひな子がきゃっきゃっとはしゃぐ。
「高尾君てば立派な男の娘ね~」
「ありがと~」
 そう言って高尾はくるくると回る。スカートから出る小麦色の脚の部分に視線が行ってしまう。――女装の男に欲情してしまうなんて、オレは変態か。
 でも、そうなるのは相手が高尾の時だけだし――黒子には全然欲情しなかったし。
 高尾がいなければオレはまともだったのだよ……。
「あー、緑間君ガン見してる!」
「やーん。真ちゃんのエッチ」
 人を煽っといてそれはないだろう。押し倒されたいのか? え? 押し倒されたいのか? ――でも、ひな子がいるから一生懸命我慢した。
「真ちゃんも着ようよー」
「断る!」
「今日のおは朝のラッキーアイテム、学校の制服じゃなかったかなぁ」
「その手には乗らないぞ」
「高尾君、こっち向いてピース!」
 ひな子がデジカメを構えた。高尾はノリノリでピースした。
「後で緑間君にも写真あげるね」
「いらないのだよ」
 ――ほんとは欲しい。
「えー。本当は欲しいんでしょう。ま、いいわ。ひな子のお願い聞いてくれたらあ・げ・る」
「――何をすればいい」
 結局、折れたのはこっちだった。
「んーとね……前々から緑間君にして欲しかったコスプレがあるのね――高尾君押さえてっ!」
「あいよ」
「ちょっとお前ら何す――わぁーっ!」
 そして――
「ふぅ、できた」
 ひな子が得意そうな顔をした。
「ひなちゃん、すっげードヤ顔。それに力も強いし」
「こう見えても鍛錬しているのよ」
「おい。――何だこの格好は」
「わー、真ちゃんすげぇ不機嫌な顔」
「当たり前なのだよ」
 ランニングシャツに右腕に黒い腕サポ。黒いズボンに腰回りの長い白い紐。
 思ったより真っ当な格好だが……一体これは何だ?
「真ちゃんがシンタローのコスプレしてるー」
「似合うー! 黒髪のウィッグも持ってくるべきだったかしら?」
「だから……何なのだよ、これは」
「えー? 真ちゃん『南国少年パプワくん』知らないのー?」
「……何なのだよ、それは」
「……まぁ、無理もないか。私達が生まれる前のアニメだもんねー」
「『PAPUWA』って続編もあったけど、アニメのあの後どうなったかなぁ」
「私、南少もPAPUWAもコミックス持ってるから貸したげるー」
「ありがとーひなちゃん♪」
 高尾とひな子はオレをほっといて知らないマンガの話で盛り上がっている。――さ、寂しくなんかないのだよ!
「ひなちゃん、あまり真ちゃんほっとくと可哀想だよー。寂しがり屋だもんね。真ちゃんは」
「誰が!」
「うさぎは寂しいと死んじゃうんだよねー」
「緑間君、こっち見て」
 カメラがオレを捉えた。
「もう一枚。今度は横向いて!」
「こ……こうか?」
「目線はこっちよろしくー」
 ――そうして、オレは何枚もシンタロー(という名前のキャラ)の格好で写真を撮られた。
「『南国少年パプワくん』だったらさ、後でお母さんに聞いてみて」
「うちの母はそういうアニメには詳しくないのだよ」
「じゃ、オレらが後でレクチャーするね」
「高尾君、緑間君、コスプレで結婚式してくれる? 緑間君が花嫁で」
「絶対やらん!」
「真ちゃんは195㎝もあるから、抱き上げたら重そうだなぁ」
「じゃあさ、緑間君が高尾君をお姫様抱っこして? 前にもそういう場面があったけど、撮り損なっちゃったの」
 ひな子の目はきらきら。迫力負けしたオレは結局高尾を横抱きすることになった。
「わーい。ひなちゃんありがとー。またこれでローカルサイトも賑やかになるよ」
 高尾は喜んでいる。ああ、そうか……これはローカルサイトの為の写真だったんだ。――オレは何となくぐったりとした。
 ひな子のヤツは、「リアルバニコテの写真が撮れた~」とご満悦らしい。
「緑間君、緑間君。緑間君には秘蔵写真見せてあげる」
 それは肌蹴た着物姿の高尾だった。――な、な、何という格好なのだよ! でも、思わず興奮してしまったことはひな子や高尾には言わない。
 オレ以外の人間にそんな姿は見せるななのだよ。高尾め……ったく。
 高尾だったらこういう時、素直に「その写真欲しい!」って言うんだろうな……。
 後でメールで送るね、とひな子は約束してくれた。

後書き
今回もオリキャラのひなちゃん大活躍!
真ちゃんのコスプレ写真だったら私も欲しいです(笑)。
ローカルサイトも充実充実~♪
2020.01.22

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