ローカルサイトでラブラブ15 ~みんなにバレたののだよ~

「こんにちは。済みません。緑間君」
「はーい、緑間君」
「黒子にリコ……何の用なのだよ」
 他にも何だかぞろぞろと――多士済々と言うより烏合の衆に近い。
「ローカルで作ったRPGの存在が誠凛バスケ部全員にバレました」
 ……あ。そう言えば、あれはローカルで作ったのだよ。高尾や黒子達と一緒に。
 いずれバレる気はしたのだが、こんなに早くとは……。
「最近、火神君と黒子君がバスケもそこそこに急いで帰ること多いから問い詰めた訳」
 リコが問い詰めたのか……。リコは男勝りだと聞く。そうでなければ男子バスケ部のカントクなんてやってられやしない。
 ――少々黒子と火神を気の毒に思うオレであった。
「んでさー、オレらもオマエらの作ったRPGで遊びたいな~と思った訳」
 そう言ったのは小金井慎二――確かそういう名前だった。
「う……まぁ、そう言うなら……だが、ちょっと待ってくれ。高尾にも連絡しないと」
「もう高尾君の了承は取ってあります」
「そうか。じゃあ来てくれ」
 オレは自分の部屋に誠凛の連中を通した。
 メンバーは、日向、伊月、水戸部、土田――そして前述の小金井と黒子とリコである。――火神はいなかった。
「火神はいないのか?」
「ああ、あいつ、鈍った体を立て直すんだと言って降旗達とバスケコートで練習してる」
 と、伊月。むっ、火神達がそんなに張り切っているのならオレも頑張らなければな。オレ達も誠凛に勝ちたいしな。
 しかし、取り敢えずそれは明日のことなのだよ。今はバスケ部は休みなのだよ。
 オレはパソコンを立ち上げた。
「おおっ!」
 小金井が歓声を上げる。オレはパソコンを操作する。タイトルが現れる。
『blue est blue』――これが正式な名前なのだよ。考えたのは高尾なのだよ。
「おお、かっちょいい!」
 小金井が興奮している。気に入ったなら良かったのだよ。
「ふんふんふ~ん♪」
 パソコンの前にみっしりと人が集まる。ちょっと人口密度が多いのだよ。まぁ、リコのいい香りがここまで届くのは嬉しいが……。
 はっ、オレは何を考えているのだよ! オレには高尾がいるのだよ!
「おお、モンスターだ! ……かっわいい!」
 小金井に褒めてもらえた。それはオレのデザインしたモンスターなのだよ。――密かに嬉しかったが、何も言わずちょっと口の端を上げるだけに留めておいた。
「はぁ……逃げられないから倒しちゃった……。モンスターを仲間にするシステムとかないの?」
「善処してみるのだよ」
「顔グラもかっこいいな。黒子が勇者なのか」
 誠凛高校バスケ部主将の日向が言う。黒子の先輩の一人だ。そして、クラッチシューターでオレのライバル的存在。――黒子はちょっと間を置いてから「ええ、まぁ……」と答えた。
「高尾が必死に拝み倒したのだよ」
 オレが補足する。
「はい……まぁ、そんな感じです」
 黒子は困ったように頬をぽりぽり掻いたが、満更でもなさそうだった。
 あ、そうだ。高尾にもメールするのだよ。ひな子にも伝えておこう。
 ひな子からは――
『わかった。名作はどうしたって世に出る物なのよね……いいわ。誠凛の人達にモニターになってもらって』
「攻撃も爽快だな。コントロールしていて気持ちいいんだよね」
 小金井が楽しそうにコメントする。皆、いつの間にか夢中になっているようだった。
「カントクー。オレらもこんなゲーム作らない? 水戸部も作ってみたいって」
「それよりもバスケでしょ。小金井君。水戸部君」
 リコがツッコむ。オレにだってバスケがあるのだよ。――水戸部はさっきから黙っている。誰も声を聞いたことがなくて、小金井が通訳しているらしい。
「じゃあ、バスケの要素を取り入れたゲームにしてみればいいんじゃないかな?」
 と、伊月が提案する。
「そうねぇ……」
 と、リコが考える素振りを見せる。
「バスケに支障がなければ、いいわ」
「やったー!」
 小金井は大きく拳を振り上げる。煩い奴だが悪い人間ではない。……小金井はオレよりひとつ上だったか。
「うーん、でも、オレ達にこんなすごいゲーム作れるかなぁ」
 土田さんは控えめに言った。
「土田さん、オレ達も最初は初心者だったのだよ。でも、いろいろ試しているうちに作れるようになったのだよ」
 もし、高尾が言い出さなかったら、オレもこんなゲームは作らなかったのだよ。だから――高尾や仲間達には感謝なのだよ。言うとつけあがるけどな。特に高尾。
「木吉が見たら喜ぶぜー」
 と、日向も嬉しそうだ。木吉は今アメリカにいて、痛めた膝の治療中ということだった。そのことを告げた時の日向は、喜んで小金井達とはしゃいでいたさっきとはうってかわって、少々寂しげである。気持ちはわからなくもないのだよ。けれど、木吉も順調なようであった。
 そして――高尾から電話があったのだよ。何だというのだろう。
『真ちゃーん。ごめんね』
 高尾も黒子と同じことを言うのだよ。次の台詞が手に取るようにわかるのだよ。
「……今度は誰にバレたのだよ」
『ああ。火神とちょっとバスケで遊んでたら青峰と黄瀬が来てさぁ――ゲームのこと、話しちゃった。ごめん』
 やはりか……。
「わかった。オレ達の家にも今、誠凛の奴らがあのゲームで遊んでいるのだよ。――そっちにはどうせ降旗達もいるんだろ? せっかくだから呼んで来い」
『それがあいつらは先に帰っちゃったらしくってさぁ……。――で、ゲームの感想は?』
 おーいおいおい――小金井がそんな風に泣いている。
「どうしたのだよ、小金井さん」
 オレは『さん』づけで小金井を呼んだ。土田さんも『さん』づけだが。小金井は兎にも角にもひとつ上だ。敬意は表さなければならない。バスケの腕もなかなかの物だし。
「何で――何でイリアを殺したんだよー。オレ超好みだったのにぃ」
「そんなことで泣いてたらこれから先体がもたないのだよ」
「えー、これ以上非道な展開が続くの?」
「非道とは聞き捨てならないのだよ」
「小金井先輩、大丈夫です。非道な展開はこれで終わりです。これからは感動的なシーンが続きますよ」
 黒子が脇から入った。
「ほんと? ほんとに?」
 小金井が黒子の差し出したティッシュで鼻水を拭いた。
「はい。ですから安心してください」
 そう、それに、これが伏線にもなるんだし――。オレはこっそり心の中で呟いた。
『もしもーし、真ちゃーん。もしもーし』
「……ああ。小金井さんがイリアのイベントで泣いていたのだよ」
『ほんと? あそこ超力入れたんだよね。イリアさんがこの先蘇ることは言った?』
「――まだ言ってないのだよ。秘密にした方が感動するだろうか……」
『そうだね。オレもそうだもん』
 高尾はゲームに詳しい。シナリオには高尾のゲームに関する知識も加えられている。
(ロザリーとデスピサロのような話も入れたいんだよね。オレ)
 大抵のゲーマーが知っているエピソードである。オレも賛成したのだよ。ただし、相当アレンジして。
「ひな子にも誠凛の連中にゲームのことバレた事実を言っておいたのだよ。青峰のことも言っておいた方がいいんだろうか」
『いいんじゃない? ひなちゃん何て言ってた? 青峰達のことはオレから言おうか? ――あ。青峰』
『よぉ、緑間』
 青峰が高尾のスマホを取ったのだろう。高尾の「返せー」と言う声が遠くから聞こえる。
『お前もゲーオタだったんだな。目が悪いのもゲームのし過ぎか?』
「勉強に力を注いだのだよ。お前と違ってな」
『ま、いいや。高尾からお前らの作ったゲームのことはあらかた聞いた。今からお前んち行くけどいいか。お前らのゲームと言うのを俺達にもやらせろよ。黄瀬も興味あるみたいだったぜ』
「勝手にするのだよ」
 トラブルの予感を感じながら、それでもあいつらが来るのを心待ちにしているオレがいた。

後書き
誠凛の皆にバレてしまいました☆
青峰クンや黄瀬クンにも。
イリアさんのイベントってどんなのだか詳しく知りたいです。
2020.04.17

BACK/HOME