ローカルサイトでラブラブ11 ~またRPGを作るのだよ~

「ねぇ、真ちゃん。エンカウント率どうする?」
「お前に任せるのだよ」
「TPとかあった方がいい?」
「お前に任せるのだよ」
「やっぱりゲームバランスは考えた方がいいよね」
「せっかく考えるのだから属性のことも忘れない方がいいのだよ」
「シナリオどうする? 黒子も書きたいようだけど、真ちゃんもやる?」
「俺もやるのだよ」
「そっか。――実は俺も考えたいんだよね」
 高尾は意外と文才がある。悔しいがハイスペックと言われるだけのことはある。まぁ、文才とバスケの才能は俺の方が上だけどな。
「じゃあ、モンスターのキャラデザは真ちゃんね」
「――どうしてオレがモンスターを考えなければならないのだよ」
「だって、モンスターを描くことにかけては真ちゃんは天才じゃん♪ 俺の顔もモンスターにしてしまうぐらいだし」
「褒めるふりしてさりげなく貶すな」
「勇者はどうしようかねぇ……」
 今は秀徳高校のオレ達の教室。オレと高尾はRPGの作成について話している。学校で話すことでもないと思うが、今は休憩時間だしな。
「何話してるの? 面白そうじゃない」
 秀徳の婦女子――いやいや、女生徒の朝倉ひな子がやって来た。
「RPG作る話をしてるんだよ。――あ、そうだ。ひなちゃんも混ざらない?」
「え?」
「高尾! ひな子なんか相手にするのではないのだよ!」
「まぁ、嫉妬? 緑間君てばこわーい」
「ひなちゃんには勇者をデザインしてもらおうよ。オレより絵が上手いからさ」
「何でひな子でなきゃダメなのだよ」
「だって、さっきも言ったけどオレより絵が上手いし。真ちゃん絵なんか壊滅的じゃん」
「う……」
「楽しそう! 私も仲間に入れてくれるのね!」
 ひな子の目がきらきら輝いている。あ、これは食いついたのだよ。
「あと、誠凛の火神と黒子も参加することになってる」
「多士済々ね。リアルでもRPGみたい」
「あ、そっか。確かにオレ達もRPGのパーティーみたいだね」
 高尾はひな子の例えに感心しているようだ。
「じゃ、明日土曜日だから四時に花園公園の広場に集合ね」
「わかったわ」
「しかし――ひな子が混ざると煩くなるような予感しかしないのだよ」
「まぁ、ご挨拶ね。緑間君」
 ひな子が少しムッとしたようだった。けれども、ひな子が案外懐の深い女であることはこのオレも知っている。オレは口が悪いので有名だが、ひな子はへこたれる様子がない。
「ゲームの勇者だのその仲間だののキャラデザはオマエがやってくれ。ひな子」
「OK」
 オレが言うと、ひな子が笑って答えた。
「モンスターのデザインもお願いできない?」
「いいわよ。高尾君」
「まぁ、真ちゃんが描いた方が面白いの出来そうだけどねー……」
「どういう意味なのだよ。高尾」
「じゃあさ、モンスターは共同で作ろうよ」
 ――ひな子の提案にオレも乗った。
「――でも私、本当に参加していいの?」
「今更なのだよ」
「別にいいじゃん。ひなちゃんもう真ちゃんやオレのローカルサイト知ってんだし」
「ありがとう、緑間君。高尾君。――それにしても、ローカルでやるんだ」
「そうだな。素人が作る物だしな」
「ま、かなりクオリティ高い物になるだろうと予想はしてるんだけどな。何てったって真ちゃんがシナリオ作るんだもん」
 高尾が得意げに言う。オレのことまでさらりと褒める。――照れるのだよ。

「んでさ~、朝倉ひな子ちゃんという子もプロジェクトに加わることになったんだ」
 高尾はうきうきしているようだ。こいつはいつもこんな感じだ。
「――プロジェクトなんていつ決まったのだよ」
「英語ってかっこいいですよね。火神君には英語の台詞を担当してもらいますか」
「はぁ? 何でオレ?」
 オレは高尾と、黒子や火神と話しながらひな子の待つ広場に向かう。オレと高尾は待ち合わせ場所へ行く途中、黒子達と偶然出会ったのだ。ひな子は広場で一人で待っているに違いない。
 果たして、ひな子はいた。
「あ~、緑間く~ん、高尾く~ん」
 俺達の姿を見かけると、ひな子はひらひらと手を振った。そして、火神達の前に来る。
「朝倉ひな子です。宜しくぅ」
「あ……よ、宜しく……」
 火神は柄にもなく緊張しているらしかった。この女の本性も知らないで。
 黒子が密かに火神の靴を踏む。
「でっ!」
「こんにちは。朝倉さん。僕は黒子テツヤです。隣の彼は火神大我君。僕の友達です」
 黒子がしれっと言う。火神は涙目になりながら黒子を睨む。そしてこう呟く。
「黒子め……覚えてろよ」
 火神と黒子の痴話喧嘩のことはどうでもいい。オレ達はオレの家に向かう。
 今は春菜のヤツ、いないだろうな……。ま、いたらいてもいいけど、ひな子ともめるのは勘弁なのだよ……。どうも春菜はひな子と相性が悪いようだからな……。
「今度はさ、うちにも来いよ。真ちゃん家みたいに広かねぇけど、お菓子作りが好きなお袋と可愛い妹ちゃんが歓待します」
 馬鹿な高尾……敵と慣れ合ってどうするのだよ。――もう既に慣れ合ってるか。
「なぁ、黒子、勇者になってくれよ」
 オレの家に着くなり、高尾が拝み倒す。
「え? その話は断ったはずですが」
「だって、他の誰が勇者になっても絶対後で騒ぎになるって。オマエだったら皆納得するからさ。頼む! この通り!」
 高尾がパンと手を合わせて頭を下げた。
「……僕なんかで良ければ」
「そか。良かった」
 高尾が胸を撫で下ろす。
「洛山の赤司はどうなんだよ」
「あの人は魔王です」
 火神の質問に黒子は即答した。まぁ、確かにあいつは勇者より魔王の方が似合うな……。高尾が尚も続ける。
「よし、じゃあ、勇者は黒子で――火神は戦士なんかいいんじゃね?」
「おう。任せとけ」
「真ちゃんが僧侶で、オレが――」
「遊び人」
「ひっで! 真ちゃん!」
「何を言う。賢者になれる最短ルートなのだよ」
「まぁ、そうだけどさ、オレ達はドラクエみたいなRPGを作ろうとしているのであって、ドラクエそのものを作るつもりはないんだぜ」
「FFの要素も入れろ、か」
「そうそう。他のRPGを参考にしたっていいんだしさ」
「あのさ、私はどうなるの? 裏方でもまぁいいけど――」
 ひな子が口を挟む。高尾が答えた。
「ひなちゃんも出ることになると思うよ。ほら、真ちゃん、シナリオにひなちゃんの役割も書いて」
「面倒なのだよ」
 なかなか楽しいではありませんか――黒子はそうほざいていたが、これが日常だと結構疲れるのだよ……はぁ。

後書き
私もシナリオ作りだったら手伝いたいですなぁ。
緑間クン達がどんなRPGを作るのか、楽しみです。
それにしても、赤司様すっかり魔王……(笑)。
2020.02.15

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