ローカルサイトでラブラブ10 ~RPGを作るのだよ~

「んでさ~、オレ、ローカルでRPG作ろうと思ってんだよ」
 オレ――緑間真太郎の相棒、高尾和成がそう宣った。意味がわからないヤツはとばしてくれ。
「RPGというのはゲームか?」
「そうだよ。ドラクエやFFみたいなゲームが今やオレ達みたいな素人でも作れるんだぜ~」
「それは本当か?!」
 オレはガタッと席を立った。
「真ちゃん静かに。ここ一応公共の場だから」
 ……ぐっ! 高尾に諭されるとは思ってなかったのだよ。
 因みにオレ達は今マジバにいる。マジバも公共の場なのだろうか。というか、オレ達秀徳高校の生徒は寄り道なんて禁止なんじゃなかったのか? まぁ、今では有名無実だけどな。
 ――取り敢えずオレは大人しく座る。
 実はオレはテレビゲームが好きだ。イメージが壊れるから黙っていたのだが。
 小学生の頃熱中していて、それが近眼の遠因になったんじゃないかと考えるくらいだ。
「で、どうやって作るのだよ」
「RPGツクールってソフト使えば、簡単に作れるんだぜ。……多分。金はかかるけどな」
「――夢のような話だな」
「そのソフトはオレが購入しとくから。真ちゃん勇者ね♪」
「か……勝手に決めるななのだよ」
「何? 勇者嫌?」
「いや、嫌じゃないけど……まだソフトは買ってないんだろ? 作ってるうちに飽きたらどうするんだ? 金が勿体ないのだよ」
「ローカルサイトを充実させるには設備投資にかける費用は惜しまない」
 高尾が得意そうに言った。
「本当は一から作ろうと思ったんだけど、これが存外大変でさ。オレ達バスケもやってるだろ? 二足の草鞋を履くのは荷が重いんだよな~」
「だったらゲームを諦めればいい」
「え? 真ちゃん降りるの? 自分の作ったゲームで遊びたくないの? 真ちゃんだってノベルゲーム作ったんだから、ゲーム作りの楽しさわかるんじゃないの?」
「う……」
 確かに高尾の言う通りであった。オレはノベルゲーム『不思議の森』を作ったことがある。自分で言うのもなんだがなかなかの出来だ。高尾達のお墨付きだ。
 けれど、オレにはバスケがあるし勉強があるし――。
「オレはいろいろ忙しいのだよ」
「合間の休みとかにゆっくりやればいいんじゃねぇの?」
「オマエも忙しいだろう」
「んーでもオレ、時間の使い方上手いからね。――やっぱり真ちゃん乗り気でないようだね」
「そんなことないのだよ。オレだって皆がひっくり返るようなゲーム作りたいのだよ」
「じゃあ決まりだね」
 高尾がニッと笑った。
「面白そうな話してますね」
 今の涼やかな声は――黒子! 黒子テツヤ!
 火神大我も一緒にいた。こいつは初対面の時、『オレのこと覚えてても覚えてないって顔しそうだもんな』みたいなこと言ってたのだが。粗野で馬鹿に見えてなかなか頭の切れる男だ。 
 オレは言った。
「何でオマエらがここにいるのだよ」
「どうでもいいでしょう。それよりゲームの話をしてましたよね」
「おう。真ちゃんとゲーム作る話してたんだ」
「混ぜてください。ゲームは好きだったんで」
「えっ、ちょっ、黒子――」
 オレが慌てていると、高尾の馬鹿はこう言いやがった。
「いいじゃんいいじゃん。誠凛さんともこうやって親睦を深めるのもさ」
 敵と親睦を深めるつもりはないのだよ。オレはびしっと注意してやろうとしたのだが。
「あ、相席だね。黒子隣に座る? 火神は向こう側ね」
 ――どうしてオレが火神の隣に座っていなければならないのだよ。
「でさ、ドラクエみたいなゲーム作ろうと思うんだよね」
 高尾が早速黒子を相手に話し始める。黒子はバニラシェイクを啜りながら頷く。
 ――何だか中学時代を思い出すのだよ。デジャブというやつなんだろうか。
「それは興味深いですね。シナリオとか作りましたか?」
「残念ながらまだ……。真ちゃんに作ってもらおうと思ってさ」
「ボクもシナリオ作りには興味あります」
「ほんと?! じゃあ黒子も俺達と一緒にゲーム作る?」
「仲間に加えてくれるなら嬉しいです」
 ――黒子が微笑んだ。
「ねぇ、真ちゃん。こいつらも真ちゃんちによんでいい?」
「――な、何でオレの家なのだよ」
「多分、一番広いっしょ」
「火神君の家も広いですよ」
「でも、オレの家、物がねぇからな」
「火神君は料理も上手いですよ」
「へー、食ってみてぇな」
 火神も黒子も高尾と打ち解けたみたいだった。高尾はどんな人間とも友達になれる、オレから見れば稀有の才能を持っている。高尾に言わせれば、オレがコミュ障なだけなのらしいが。
 しかし、火神と黒子とも、バスケを通して仲良くなれた……んじゃないかな。それとも、オレが勝手にそう思ってるだけなんだろうか。
「それにしても、ゲーム作るなんてすげぇな。緑間に高尾」
「火神君も一緒ですよ」
「――そっか。んじゃ、緑間ん家にお邪魔するか」
「今じゃないけどね。改めて日にち決めようよ。真ちゃん、宜しく~」
 高尾が笑うと、オレもまぁいいかという気がしてくる。土曜日の夕方にオレ達は待ち合わせする約束を取り決めた。

「緑間君、高尾君」
 オレ達が待っていると火神と黒子が現れた。大柄な火神と並ぶと黒子が小さく見える。黒子もそう身長が高い方ではないが。
「じゃ、行こうぜ」
 オレの家はこの近くにある。母が喜んで出迎えてくれた。
「まぁまぁ、いらっしゃい。高尾君。黒子君お久しぶり。そちらは新しいお友達?」
「火神大我です。宜しくっす。緑間達はゲームを作るらしいですから、オレはご飯作るの手伝いますよ」
「そう、悪いわね。火神君料理作るの好きなのかしら?」
 母は嬉しそうに火神と台所に消えて行った。オレ達は二階の自分の部屋に行く。
「誰を主人公にしましょうか」
「真ちゃん!」
 高尾が即答。
「……オレは主人公には向かないのだよ」
「そんなことないと思いますがねぇ」
「そう言われるのは嬉しくないこともないが……やはり他の人物がいいのだよ。黒子、お前どうだ?」
「僕も向きません。影ですので」
 理由にもならん理由だ。
「じゃあ火神にしようか」
「いいな。モンスターをうんと強くしてフルボッコにするのだよ」
「……僕も『真っ黒子』とか呼ばれてますけど、緑間君もなかなかいい性格ですよね。高尾君も大変でしょう」
「いんやぁ~。オレはこの性格の真ちゃんが好きで付き合ってるんだから」
「――高尾君てMなんですね」
 オレもそう思う。
 シナリオはオレ達であーだこーだと相談して方向性を決めた。主人公は火神。因みにオレのフルボッコ案は却下された。
「あ、そうだ。モンスターにあの絵使っていい? 真ちゃんが前にオレのこと描いてくれたでしょ? あの時の絵」
「――あれは高尾なのだよ」
「要するに緑間君て絵が下手なんですか」
 黒子は時々無意識に人にダメージを与える。だからオマエは『真っ黒子』と呼ばれるのだよ。
 母と火神が夕飯を作ってくれた。いつもより豪華だ。火神が作ったというサラダはなかなかに旨かったのだよ。黒子が自慢していただけのことはあるな。

後書き
私も緑間クン達の作ったゲームで遊びたい!
というか、私がゲーム作りたい!
スペックが低いので未だ成し遂げてませんが……。
2020.02.05

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