勝っちゃった……!

「勝った……!」
 オレは自分で出したチョキを見つめていた。
 真ちゃんに……じゃんけんで勝っちゃった……!
「わーい! ばんざーい!」
「――うるさいのだよ、高尾!」
 パーを出した真ちゃんに思いっきり怒鳴られてしまった。でもいいもんね。嬉しいんだから。
「んっふっふー。ルールは忘れてないよね。真ちゃん♪」
 真ちゃんはふーっと大きく息を吐いた。
「……仕方ないのだよ」
「じゃ、オレ、真ちゃんを抱くね――ドキドキするなぁ。こんなこと、一生ないかと思っていた。優しくするからね」
「ごたくはいいのだよ。さっさとするのだよ」
「はーい。じゃ、早速……」

「あっ、あっ……」
 真ちゃんが色っぽい声で喘ぐ。
 真ちゃんは睫毛が長くて美人だ。特に下睫毛がいい。真ちゃんはいつもかけている眼鏡を今は外している。
「高尾……」
 あ、真ちゃんの目、焦点が合ってない。これじゃぼんやりとしか見えないだろう。
 ま、いっか。オレの今の顔、きっと余裕のなさが表れてると思うから。
 だって、真ちゃんを抱くのなんて初めてなんだもん……。抱かれたことはもう数えきれないほどあるけれど。
 夢のようだよ。真ちゃん。
「あ……っ!」
 ここか。ここがいいんだな。
 前戯にたっぷり時間をかけて挿入して今に至る。
 真ちゃんの体も締め付けが良くて美味しいな……。オナニーとはまた違った味わいがある。
 オナニーなんかより、ずっとずっといい。
 あ、そうだ。オレ、童貞だったんだ。忘れていた。
 でも、処女ではない。真ちゃんはオレの体を傾国の体だ、などと称していたけど……。
 真ちゃん、お前の方がよっぽど傾国の体だよ――。
 しかも、テクニックも上等と来ているんだから。オレは今、真ちゃんの真似をしている。初めての相手は真ちゃんだったんだから――。
「真ちゃん、平気……?」
「あ、ああ……なんか、オレに抱かれているような気がするのだよ」
「あ、ほんと? オレ、真ちゃんの真似してるから、今」
「真似なんぞ、しなくてもいいのだよ……」
「んで、今のところ、どう? 合格?」
 真ちゃんは微笑んで親指をぐっと立てた。
「ん……じゃ、ラストスパート、いい?」
 オレも自分の欲に追い詰められている。真ちゃんが言った。
「ああ。オレも――イきそうなのだよ……」
 ぐっと真ちゃんの体を貫くと、オレは真ちゃんと一緒にイってしまった。
「ん、あ、あ……!」
「高尾……!」
 どくん、どくんと何度かにわけて精を放つ。オレは――真ちゃんの体ならどこも好きだ。
「高尾……お前、イく時の声、色っぽいのだよ……」
 何言ってんだか……。
「真ちゃんの声の方が……腰に来るよ」
「ふ……」
 真ちゃんは本当に今、デレデレだ。喜んでもらえたなら、良かった……。
 オレも気持ちよかったし。
「抱かれるのも悪くないのだよ――負担はかかるけどな」
「あ、ごめん……」
「いや……オレの方こそ、お前とした後、お前が翌日しんどそうにしていた訳がわかったのだよ……」
「じゃ、オレのこと、これからもっと大事にしてくれる?」
 冗談のつもりだった。真ちゃんはきっと一蹴するに違いない。そんなことを思っていたら。
 真ちゃんがぎゅっと抱きしめたので、オレはバランスを崩した。
「おわっ!」
 真ちゃんの上に倒れる。真ちゃんは言った。
「一生大切にするのだよ」
 うわー、恥ずかしい。真ちゃん、それ、すげぇデレだよ。
 真ちゃんの心臓がとくんとくんと脈打つのがわかる。
 ああ、オレ、真ちゃんのこと、抱いちゃったんだなぁ……。
 すげぇ、満足……。
「ねぇ、真ちゃん。満足――」
 真ちゃんは眠っていた。
 そっか。疲れたね。真ちゃん。
 それにしても長い睫毛。真ちゃんの顔、とても綺麗。
 オレも、真ちゃんのこと、大切にするね。
 そして、オレも真ちゃんの唇にキスをした。
「高尾……?」
「あ、起きちゃった?」
 オレはいたずらっぽい表情を浮かべていただろう。
「おは朝占いは――よく当たるのだよ」
「は?」
 何故そこで占いが出てくんの? いやいや、真ちゃんのことだ。こんなことでびっくりしてたら付き合えない。
「今日の――いや、もう昨日のか――蟹座の順位は12位だったのだよ」
「ふぅん」
「で――蠍座は1位だったのだよ」
「――へぇ」
 だから、真ちゃんはオレに負けたのか。でも、待てよ。
「真ちゃん。ラッキーアイテム持ってたでしょ?」
「持ってない。忘れてきた。だからだな、お前を抱けなかったのは」
「何? オレを抱くのがそんなにいいの?」
「ああ。抱かれるのも悪くないが、やはり抱く方がいい。お前を抱くのは最高なのだよ」
 んー。男としてそう言われるのはちょっと複雑かな。オレ、抱かれる方の性じゃないし。でも、確かに――オレも、真ちゃんに抱かれる方が気持ちよかったりするんだよな。
 ああ、緑間真太郎。オレをこんな風に変えちまって。
「またじゃんけんするか?」
「今まで寝てたのに、元気だね、真ちゃん」
「キスで目が覚めたのだよ」
 王子様のキスでね――オレが王子様か? それにしても真ちゃんめ。いつもだと死んだように眠っているくせに。嬉しくない訳じゃないけど。嬉しくない訳じゃないけど。
「かずなり……」
 真ちゃんがオレを下の名前で呼んだ。そりゃずるいってもんだよ。真ちゃん。
「オレはこんなに……誰かに夢中になったことはない」
 そうかぁ? オレが知らないだけで結構あるんじゃ……真ちゃんは情が深いから。
 でも、オレにとって真ちゃんは初恋であったわけで――。
「オレも、だよ」
 そして、ごそごそと布団の中に潜り込んだ。
「あ、高尾……何を……」
「真ちゃんにサービス♪」
 そして、オレは真ちゃんの半身を口に含んだ。止めるのだよ……と言われても気にしない。どうせいつもされていることだし。
 真ちゃんのイッた時の声、また聴きたくなったんだよね。オレも真ちゃんに夢中だな。

後書き
18禁。高緑ですね。
高尾ちゃん、誕生日おめでとう! ずっと前に書いた作品ですが。
2019.11.21

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