花井と双子の姉妹達

 花井がロッキングチェアーに座って本を読んでいると、まだ小さい双子の姉妹が来て言った。
「ねぇねぇ、お兄ちゃん。はるかとあすか、どっちがかわいい?」
 花井としては、「どっちもかわいいよ」と言うしかない。
「じゃあさ。どっちをお嫁さんにしたい?」
 この質問には、さすがの花井も、椅子からずり落ちそうになった。
「あすかだよね、お兄ちゃん」
「はるかだよ」
「お兄ちゃんははるかにあげるから、あすかはお父さんと結婚しなよ」
「やだ! あすか、お父さんいらないから、お兄ちゃんと結婚したい!」
 お父さんが聞いたらショックだろうなという応戦が続く。
 慕われているのは、いいことなのか、そうでないのか。
「お兄ちゃんははるかの!」
「あすかの!」
「うーっ、このッ!」
「うわぁん、髪ひっぱんないでよ!」
「いたっ! 蹴らないで!」
「もうその辺でやめな」
 花井が仲裁に入った。
「じゃあ、どっちと結婚する?」
「うっ……」
「やっぱりあすかの方がいいんだー!」
「いや、そうじゃなくて……」
「じゃあ、はるかの方が好きなんだー!」
 そうして、二人合せて泣きだした。
「お兄ちゃん! はるかとあすか、泣かせるんじゃないわよ!」
 母に怒られて、
(泣きたいのはこっちの方だ……)
と、花井は溜め息を吐いた。

 きょうだい同士で結婚できないことを、双子の姉妹が納得したのはずっと後。
 西浦主将、花井梓にも、人知れぬそんな苦労があったのである――。

後書き
パプワでも同じようなシチュエーションで、描かれてあった同人誌がありました(この場合はマジック兄ちゃんの取り合い)。なかなか面白かったです。
この話では、もちろん細かいところは、いろいろ変えてます。
姉妹って、何かにつけて張り合うんだよね。
2008.7.19


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