ボーイ・ミーツ・ボーイ

 オレは、コイツの為に何かしてやりたい……。
 だって、コイツ、がんばってんだもん。
 オレは、コイツが好きだ。
 そうか。この気持ちは。
 いつの間にかオレは――投手、三橋廉と恋に落ちていた。

「三橋ー」
 投球練習は、こいつと気持ちを通わせる貴重な時間だ。だから、積極的になるのも仕方ない。
 オレは、三年間こいつに尽くすと誓った。
 恋心がなくても、そうしただろう。やましいことなんてない。ああ、ないさ。
 でもこいつ、普段は可愛くて、そんでもって、球を投げる時はかっこいいんだよなぁ……。
 って、見惚れてる場合じゃねぇんだよ!
 ま、見惚れてても、三橋のボール捕り落とす俺じゃねぇけどな!
「阿部って、三橋に惚れてるみたいだよな」
 いつだったか、そう言ったのは、同じチームメイトの田島だ。
 な……何てこと言うんだ! 相手は男だぞ!
 せっかくバレてねぇと思ってたのに……。
「何言ってんだよー。田島ー」
 キャプテンの花井が思いっきり引いた口調で応答する。
 そうだ。花井、おまえが正しい!
「え? 何か悪いこと言った?」
 田島は悪びれもしない。
「阿部が三橋に惚れてるなんて……」
「ああ、そのこと」
 田島はにかっと笑っている――のだろう。心臓がドキドキして、いたたまれなくてしばらくそちらを見れなかった。
「三橋の投球に、阿部が惚れてるってこと」
 な……なぁんだ。
「おまえなぁ……いろいろ言葉はしょり過ぎだろ」
「え? どうして?」
 天然の田島に、花井ははーっと、言葉にならない分、溜息を吐いた。
 わかる……わかるぞ花井。そいつには何言ったって無駄だ。
 ――と、そんなことが前にあった。ま、天然なのは、三橋も一緒だけどな。
 三橋はオレを頼っている。オレがそうした。
 全部、オレのサイン通り投げろ――と。
 そう。三橋は、オレの操り人形だったんだ。ある意味では。
 でも、それもそろそろきつくなってきた。
 オレは怪我をしてしまったし。
 へへっ。情けねぇよなぁ。三年間、オレが三橋の球捕るって言ったのによぉ……。
 でも、田島になら任せられる。
 後は、飯食って――肉中心のメニューな――、たくさん寝て、リハビリもして……。
 榛名には負けたくないからな。
 でも、あいつの気持ちも、ちょっとわかるな。今なら。
 オレだって、怪我こえぇもん。
 この怪我が治ってくんないと、三橋の球が捕れねぇ。キャッチャーになれねぇ。
 いつまでも田島に頼っているわけにはいかない。
 それに、オレが嫌だ。
 三橋がオレ以外のキャッチャーの球捕るなんて。
 オレだって、本当は三橋以外の球なんて捕りたくない。
 オレ達って、なんつーの? 相性がいいっていうか。
 体の相性もいいと嬉しいんだけどな――って、オレはエロ魔人か?!
 仕方ねぇよな。オレ、高一だもん。ヤリたい盛りだからな。
 その筆おろしが、三橋だと願ったり叶ったりなんだけどな……。
 潤んだ瞳。どもりがちな声。二つ外したボタン。
 うー。鼻血出そ。妄想でイってりゃ世話ないよな。
 オナる時は、手に入る何かを見ながらだけど、三橋関連のことだけについては妄想が先走る。
 三橋が下半身丸裸にして、
「あべ、くん。オレの球、捕って、ください」
 なんて言われた日にはもう!
 ああ、息子が勃ってきちまう……。
 下品な話で、読んでいる奴スマン。ていうか、未来のオレだな。確実に。
 こんな話、恥ずかしくて公開できねぇもん。
 大人になったオレは、いつか三橋のことも忘れて、このこっ恥ずかしい日記を燃やして永久に闇に葬ってしまうんだ。
 いや、今すぐ消去してぇ……。
 じゃあ、何故書いてるかって? 頭を整理する為だよ。ちょっとSS風でもあるかな。
 オレは、三橋が好きなんだ。
 でも、三橋にはこの気持ち、絶対バラすわけにはいかない。
 せっかく気持ちよく投げられるようになったのに、三橋を混乱させるわけにはいかない。
 ……待てよ。三橋は本当に気持ちいいのか?
 オレの命令でただ投げるだけなのに?
 でも、三橋が言ったんだ。オレに球を捕って欲しいと。
 だけど、あのクソ親父、友達いないだろうって言ってきたんだ。
 すげーむかつく。俺にだって友達ぐらいいる。
 まず、三橋だろ?
 それから、田島、花井……えーと、そんぐらいか? チームメイトは友達だよな。
 しのーかも……友達かな?
 三橋、しのーかみたいなタイプ好きかな。
 ……
 ……
 ……。
 はっ。今、なんつーこと考えてたんだ。恋敵がしのーかなんてぜってぇ有り得ねぇ!
 文字にできねぇ想像してしまったぜ。
 三橋が恋敵って言うんなら、まだマシだけどよぉ……。
 オレもいよいよアブノーマルか? 勘弁してくれよ、マジで。
 三橋は……最初は、球筋に惚れたんだ。それから、三橋本人に惚れて、それから……。
 あーもう! どうせオレはアブノーマルだぜ! ちきしょう!
 どっかに三橋を忘れさせてくれるいい女いねぇかな。そしたら、オレだってキャッチャーに専念できるのに。
 ああ、三橋の球を受けたい。三橋の性格そのままの球を受けて、オレも気持ち良くなりたい。
 オレは……三橋の全てを手に入れたい。
 オレの日常は、三橋で埋まっている。自分の体重計るより、三橋の体重気にしてる。あれ以上減らないように。
 だって、あれ以上減ったら、消えてなくなっちまうかもしれないんだぜ。煙みたいに。
 三橋が消えるのなんて、オレ、やだからな!
 だって……オレ、アイツが初恋の相手だし。三橋もそうだといい……いや、そこまで夢見がちではないがな。
 何か……読み返すとすっげ恥ずかし。でも、捨てらんねぇ。
 誰が読むと言うわけでもないのにな。つーか、読まれたら人格疑われちまうぜ。せっかくクールなキャッチャー目指してんのによ。
 榛名に見せたら、笑われるな、コレ……。
 アイツにだけは負けらんねぇ! たとえアイツが、生まれながらのエースだとしても!
 オレのエースは三橋、おまえなんだぜ!
 Boy meets Boy.
 つまり、オレの恋はあらかじめ決められてたってことか? 三橋もあれで結構鈍いからな。前途多難だぜ。
 クソッ! 純愛風にまとめたかったのに、エロ日記になっちまった! やっぱ後で燃やすわ、コレ……。

後書き
すみません。一部エロに走ってしまいました。
2011.8.4

BACK/HOME