Sweet kiss 3

 先週、三橋とキスをした。あの千載一遇のチャンスに!よりによってオレは熱を出して倒れた……。情けねぇ……。
 次こそチャンスをものにしてやる!
 それにはまずチャンスを作らないとな。オレは嬉々として計画を練りはじめたのだった。

 空は曇りだが、オレはワクワクしていた。
「三橋、今日、オレのうちに来ないか?」
「あ、阿部君の家?」
 三橋はパチパチと瞬きした。
「いやか?」
「そ、そんなことない!い、行きたい!阿部君のうち!」
 よし!身柄確保!今日は両親とも遅いし、弟も部活で遅いと言ってた。しばらく二人きりで過ごせるぜ。

「あ、雨降りそうだね。」
「そうだな。天気予報じゃ、降るのは夜って言ってたけど。」
 たわいもない会話をしているうちに家に着いた。よし!確かに誰もいない。二人きりだ。

 三橋がきょろきょろとオレの部屋を見回している。
「き、きれいだね。あ、阿部君の部屋。」
「あんまり見るなよ。なんか照れくさい。」
「ご、ごめん!オ、オレね。人のうちって、あ、あまり入ったことなくて。」
「あ~、とりあえず座ってて。飲み物取ってくる。」
 なんか、今頃緊張してきた。いや、今度こそ!
 ゆっくりゆっくり麦茶を飲む三橋の唇を、オレは見つめていた。
「な、何?あ、阿部君?」
「キ、キスしていいか?」
 キスだけならもう3回目だってのに、まだ緊張する。
「う、うん。」
 三橋は目をぎゅっとつむってうつむいた。
 顔をすくうように仰向かせるとわずかに震えている。良かった。緊張しているのはオレだけじゃなかった。
 そっと唇を重ね、三橋の唇にゆっくりと舌を這わせる。三橋がオレのシャツを握りしめる。
 三橋の小さな体を抱え込んで、何度も角度を変えて唇を重ねる。
「ふ……ん……。」
 三橋がくぐもった声を上げ、体から力が抜けていく。引き結んだ唇が緩んだのを逃さずに、オレは舌を滑り込ませた。
 背中に回された三橋の手がぎゅっと握られる。一瞬触れた三橋の舌が縮こまるのがわかった。ゆっくり歯列をたどり、そっと逃げた舌触れると、三橋は
「あ。」
 と小さな声を上げて身をよじった。
 震えている三橋が可愛くて仕方ない。オレはそっと三橋を抱き上げるとベッドに横たえた。
「あ、阿部君……。」
 三橋が不安げに見上げてくる。
「大丈夫だ。」
 オレはキスを繰り返しながら、手のひらを胸に這わせた。
「三橋、脱がせていい?」
 三橋が朦朧とした表情で頷くのを合図に、オレは三橋の胸のボタンを外しにかかった。三橋の息が荒い。白い肌が露わになっていく。オレは思わず息を飲んだ。

 その時……。

「兄貴ー!誰か来てるの!?もしかして三橋さん!?」
 ドアを蹴破りそうな勢いで弟が飛び込んで来やがった!
「てめえ!部活じゃなかったのか!!」
 オレはまさしく鬼の形相だったに違いない。
「こんな土砂降りの日に部活ができるわけないじゃん。」

「三橋さんですよね!兄貴に聞いた通りの人だ。一度お話したいと思ってたんです!」
「え?あ、その……。」
 オレはベッドから顔を上げる気力もなく、弟がまくし立てる声と雷鳴を聞いていた……。

Tomokoのコメント
山之辺黄菜里さんからの頂きもの小説、『Sweet kiss 3』です。
待ってましたよ~!
シュンちゃんは未来のライバル?なんて考えてしまいました。
せっかく三橋を美味しくいただけるチャンスだったのにねぇ……阿部。
でも、ディープキスにはときめきました。
いいとこで邪魔されるのが、このシリーズの良いところですv 阿部には可哀想ですが。
雨が降りそう、というところで、既に伏線張ってますね。
黄菜里さん、いつもありがとうございます。
2008.7.8

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