オレの夢

 オレは、田島悠一郎。西浦高校野球部の四番打者。
 野球も好きだけど、オナニーも好きだ。だからもちろん女の子も好きだし……好きなものはいっぱいある。
 そんなオレが今ハマっているのは……ズバリ、野球と彼女探し!
 あてがあるのかって? もちろん!
「なーなー、花井」
「……なんだ」
「おまえんとこの双子、一人ちょうだい」
「断る」
「なんで?」
「おまえの義兄になるのはごめんだ」
「なぁんだ。そんなこと。オレはいっこうにかまわないんだけど」
「オレが構うんだーーーーっ!!!!!」
 花井が渾身のちゃぶ台返し。ていうか、ちゃぶ台ってどこにあったんだ? って?
 学校の机に決まってるじゃん。
「一人ぐらいよこせよー」
「い・や・だ・ね」
 花井はオレの拳をぐいぐいと押し返す。
 ちなみに、花井は馬鹿力だ。
「おまえ、オレのクラスに遊びに来たと思ったら、そんなことか」
「ううん。弁当なくなったから、わけてくれ」
「どうせ早弁でもしたんだろ」
「あったりー♪」
「購買で買え! それから、おまえ家近いだろ。取りに行って来い!」
「えー。花井ん家の弁当も美味しいのに」
「毎回人にたかるな、人に」
「ちぇー。わかったよ」
 オレは花井からぱっと拳を離した。
「田島君てさー。花井君と仲いいよね」
 花井のクラスメートの女の子が声をかけてくる。
 あれ? 俺、意外と有名人?
「まぁね。未来の義兄さんですから」
「オレは認めないぞ」
「それに、息もぴったりだし」
「オレはおまえと漫才やって時間を無駄にする気はない」
「もう。義兄さんたら」
「義兄さんじゃなーーーーい!」
「あはは。ねぇねぇ、私、お笑い研究会なんだけど、田島君入んない? 野球部やめてさ。もちろん、花井君も一緒に」
 花井のクラスメートの女の子が声をかける。
「見ろっ! おまえのせいで俺まで色モノ扱いだ!」
「あはは、だってー」
 花井の拳をぶんぶん避ける。
 自慢じゃないけど反射神経には自信がある。
 はぁっ、はぁっ、と花井が肩で息を切らす。もうちょっとスタミナが必要だぞ。
「悪いけど、オレ、今野球に夢中なんだよなー」
 それと彼女探しと。
「右に同じく」
「あれ? 花井、いたの?」と、オレは言ってやる。
「『いたの?』じゃねぇ! どういう神経してるんだ、おまえは」
「あはは、冗談冗談」
 なんだかんだ言って、花井からもらったサンドイッチを頬張りながら、「部活の時間はいつかなー」と心待ちにしていた。

「こんにちはー」
「あー、田島君、一番乗りだよー」
「えへへ。野球の神様がオレを呼んでるのさ」
 マネージャーのしのーかに笑顔でアイサツをかわす。アイサツはゲンミツに大事だよ、うん。
 しのーかもかわいいんだけどねぇ……もっと胸があったらもっと好みなんだけどな。
「あら。田島君。いつも早いわね」
 そう言ったのは、モモカン。野球部の監督だ。
 女だからというので、やいのやいの言うやつらもいるけど、オレは気にしない。
 というか、そこらの男よりよっぽど野球が上手いんだぞ!
 巨乳で美人だし――オレ、せめてあと五歳ほどモモカンが若かったら、確実にアタックしてたな。
 今だって若いけどさ――ほら、花井がモモカンのこと好きそうだから、エンリョしてんだぜ、これでも。
「モモカン、シガポはー?」
「まだよ」
「そっかぁ」
 ま、シガポは数学の先生だもんな。野球部のことばかり気にしていられないか。
 でも、シガポだって、野球が好きなんだ。
 オレも、モモカンも、しのーかも、野球が好きだ。
 三橋と阿部のバッテリーも、野球命だ。
 花井だって、なんだかんだ言っても、野球に熱中している。
 主将の仕事だって、ちゃんとやってる。
 うん。オレが花井のこと、ソンケーしているのは、その辺なんだな。
 力もあるし――主将にぴったりだ。
 だから。オレは花井の義弟になってもかまわないし、あすかちゃんもはるかちゃんも好きなんだけど――そこんところが上手く伝わってないらしいんだ。
 うちのチームメイトは、みんな野球が好きで好きでたまらない。
 モモカンも上手に力を引き出してくれる。だから、オレ、モモカンが好きなんだー。
 野球部の為にあんなに尽くしてくれて、いい人だよな。
 泉も、栄口も、水谷も、巣山も、沖も、西広も、野球があれば他に何もいらない、というヤツらだ。
 ああ、そうそう。浜田もそうだ。浜田は、オレ達のためにいろいろフォローもしてくれる。これもいい人。
 っつーか、西浦野球部って、いいヤツそろってない?
 これでいつか甲子園行けなけりゃ、オレ達の力不足ってことになるじゃん?
 チアガールもいるし――二人だけだけど。でも、どちらもかわいい。オレの圏内だ。
 あれ? 彼女探しの話をしていたのに、いつの間にか野球部の自慢になっちゃったぞ。
 まっ、いいや。だってオレ、野球も好きだもん。
「しのーか、アクエリー」
「はーい。ちょっと待ってー」
 しのーかがアクエリの入った紙コップを持ってきた。
「はい。田島君、一番乗りだから特別」
 おー、やったー! オレは思わずガッツポーズ。
「どうしたの?」
「いや。嬉しくってつい……」
 オレはアクエリをあっという間に飲んでしまった。
「んっめー!」
 オレが口元を拭っていると、しのーかが言った。
「田島君、美味しそうに飲むね」
「だって、うめーんだもん。よく冷えててさ」
 しのーかは阿部が好きだから、オレが手を出すわけにはいかないんだ。いい娘だけど。
 こん、にちはー、と三橋が言った。三橋も来たか。よし、二人で投球練習だ。
 いつかみんなで甲子園に行くこと。かわいい彼女を作ること。これがオレの夢なんだ!
 応援ありがとう!

後書き
困った時の田島様。ネタに詰まった時の田島様。
田島様って素晴らしい!
甲子園行けるといいね! 彼女も作れるといいね!
それでは!
2010.3.28

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