独占欲 ~おお振りパラレル小説~

 やべぇな、どうしよう……。
 この頃マジでアイツに参っちまってる。
 三橋廉。
 それがオレの片思いの相手だ。
 アイツはすごい奴だ。
 球に速さはないけど、次々に変化球を繰り出していく。
 その球筋に、オレはマジ惚れだ。
 いや、それだけではない。
 三橋は……愛らしい。
 あのくしゃっくしゃした髪も、ちょっと締まりのない口元も。
 それから目。
 相手を見ているようでいて、全部自分の中に返って行ってしまっているのではないかと思う、あいつは、自分のことしか見えていないんじゃないか……自意識過剰とかそういうんじゃなくて、可哀想なまでに周りに対して卑屈なんだけど、やっぱりアイツの視線は、どこかを通り越した後、アイツの中に戻っちまうんだと思う。
 キャッチャーはピッチャーにとって女房役だというが、オレは、良き女房役だと思う。これは、自信を持って言える。
 アイツの相手は、オレしかいない。
 アイツの目が、田島に、花井に、泉に向けられているとき、たまに怒りに似た感情をおぼえる。
 人はそれを、嫉妬と呼ぶのかもしれない。
 アイツの全てをオレのモノにしたい。
 オレだけの――。
「おーい! 阿部ーっ!」
「田島……」
「どっかわるいの? あ、わかった。これのことでも考えてたんだろ」
 そう言って、田島は小指を立てる。
「田島……それ、おっさんくさいぞ」
 でも、田島の言っていることも、当たらずと云えども遠からず、かな。
 アイツは恋をしないだろう。どんなに周りが奉っても、おろおろして、何もできないだろう。いや、それよりも、アイツは恋ができないのだ。自分の内部に捉えられた者として。
 でも、アイツがオレ以外の誰かに恋をしたら……。

 オレはそいつを

 殺してやる

 アイツと共に――

後書き
黄菜里さんの『白い狂気』に触発されて書いた、(アベ→ミハ)の小説です。
おお振り小説は初めて書きました。けど、楽しかったです。
内容はちょっと暗めですが(汗) 
暗めと言うより、怖いかな。
阿部って、絶対独占欲強そうだなぁと思います。
原作、続きも買いたいです。

追記
あまり詳しくないときに書いたため、阿部がニセ者になっております(汗)。

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