おまえ知らないだろ

 花井、おまえ知らないだろ。
 オレが誰よりも早く、おまえがキャプテンにふさわしいと思っていたことを。

 おまえ知らないだろ。
 子供の頃のおまえの写真、はるかちゃんやあすかちゃんより可愛いと思ったこと。

 おまえ、知らないだろ。
『花井梓』という名が、おまえに似合ってて、「いいな」と思ってること。

 おまえ知らないだろ。
 南京錠の番号が『871』になったとき、一番嬉しかったのは、このオレだということ。

 おまえ知らないだろ。
 おまえの背、高ぇのがほんとにうらやましいということ。(オレもまだ伸びるけどな)

 おまえ知らないだろ。
 本当はおまえと同じクラスになりたかったということ。

 おまえ知らないだろ。
 それでもオレは、おまえと同じ高校でよかったということ。

 おまえ知らないだろ。
 わりと早くから、西浦で競うとしたら、おまえ相手だろうと思っていたこと。

 おまえ知らないだろ。
 オレがおまえのこと、ゲンミツに見ているということ。

 おまえ、知らないだろ。
 おまえの引っ張るところ、嫌いじゃないこと。

 おまえ知らないだろ。
 おまえと会ったことで、オレの世界も変わったということ。

 おまえ知らないだろ。
 おまえがオレの『特別』なんだってことを。

 おまえ知らないだろ。
 オレは知ってるんだぜ。おまえがモモカンにほれてること。
 それを知っていることを、おまえ知らないだろ。
 そして、うまくいってほしいと願っていること。

 おまえ、知らないだろ。
 おまえと出会えてよかったぜ! 本当に!

「おーい、田島ー。早く来いよー」
「おう!」
 花井、おまえ知らないだろ。
 オレが――
 オレがこんなにもおまえを想っていることをさ!
 だから、一緒にがんばろうぜ!

後書き
田島の一人称です。
書いてから、これはむしろ花井にふさわしい語りだったかな、と思いました。
そもそも田島様、自分の心を語るようなこと、しそうにないですもの。(でも、書いてしまったけれどね)
これを見てもわかるように、私、タジハナ好きです。マイナー。この話はタジ→ハナですけれども。
2009.8.19

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