あのコが武蔵野に入ったら

「元希さん、おはようございます」
 目の前に、タカヤがいた。
「た……タカヤ、オマエ、西浦であのヘロピーとバッテリー組んでたんじゃなかったのか?!」
「え? 何言ってるんすか? オレ、武蔵野の選手っすよ」
 何だって?!
 タカヤは、オレに逆らってあの無名校に行ってしまったというのに。
 これは夢か? 夢なのか?!
 夢なら、何したっていいってわけだよな。
 と言うことは――。
「うわっ!」
 オレはタカヤを押し倒した。
「何するんですか、元希さん!」
 オレはそれには答えず、ユニフォームを剥いて上半身に舌を這わす。
 タカヤの弱いところなら、全て知っている。
「元希さん、元希さん――」
 すすり泣くような喘ぎ声に艶が出る。
 ズボンを脱がしオレも下半身をはだけて、前戯もそこそこに挿入してタカヤと一緒にあっという間に頂上に登り詰めていった。
 だがオレのモノはまだ萎えないでいる。この調子なら何発でもできそうだ。
「も、元希さん――」
「元希でいい」
「元希、元希――」
「タカヤ、タカヤ、タカヤ――」
「コラァ! 起きないか榛名ァッ!」
 横っ面をはたかれた感触があった。
 カグヤンの顔がオレの目に飛び込んできた。どうやら、オレを殴ったのはこの先輩らしい。
 他のヤツならぶっ飛ばすところだけど、カグヤンじゃなぁ……。
 白々とした、埃っぽい部室の風景が広がっている。
「オマエ、タカヤ、タカヤってうるさかったぞ」
「え……? 聞かれてた……?」
「まぁ、どうでもいいコトだけどな。それよりオマエ、今日は休んだ方がいいぞ」
「どうして?」
「そんな青臭い匂いぷんぷんさせて練習に出るつもりかよ」
 あー……確かに、ちょっと臭ぇな……。
「監督にはオレから言っとくから、オマエは帰って寝ろ。いかがわしい夢なんか見ずに」
 カグヤンは背を向けて、
「この学校には、タカヤはいないんだからな」
 そう、ぽつんと呟いて。
 は?
 そんなの当然だろ?
 なに当たり前のこと言ってんだ? カグヤンは。
 オレは、一人ぼっちで部室に取り残された。
 タカヤが武蔵野に入ったら――
 一緒に野球やって、喧嘩もセックスもたくさんして――
(タカヤが武蔵野に入ったら)
 だが、そんなことは考えても仕方のないことだった。

後書き
うーん。榛名はもっとかっこいいんだがなぁ……。
私が書くとついこうなってしまうのだよなぁ……。
カグヤンも別人です。
でも、まっ、いっか(結論がそれか)。
2009.6.21

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