Sweet kiss 5

 最近、三橋に避けられてる気がする。さっきだって声かけたのに……。聞こえてなかったはずはないんだけどな。まあいい、どうせ部活で顔合わせるんだ。とっつかまえて、はっきりさせよう。


 部活中に込み入った話はできないからな。部活終わって着替えたら、速攻で捕まえるぜ。
「三橋、一緒に帰ろう。」
 三橋の肩が跳ね上がった。
「オ、オレ……た、田島君と……。」
「悪いな、田島。今日はオレ、三橋と大事な話があるんだ。帰るぞ、三橋!!」
「は、はい!!」


 オレは有無を言わさず三橋を連れて外に出ると、裏道に連れ込んだ。道と言っても、人が踏みならした道だ。ここなら人目もない。
「三橋、何でオレを避けてるんだ?」
「え?さ、避けてなんて……。」
 三橋のやつ、いつも以上に目が泳いでる。
「じゃあ、オレの目を見ろよ!!」
 顔に手をかけてこちらを向かせた途端、三橋の顔が真っ赤になった。何だ、この反応!つられてオレまで頬が熱くなる。
「だって……オレ……オレ……。」
 三橋の目に涙が浮かび始めた。
「だって……オレ……は、恥ずかしくて!!」
「恥ずかしい?」
「あ、阿部君の顔見るとお、思い、出しちゃう……から……。」
 今度はこちらが赤面する番だった。思い出すって……、こないだした、あんなことやこんなことを?
「オレ、バカみたいじゃん!!」
「あ、阿部君?」
「オレはてっきり嫌われたのかと思って……!」
「ご、ごめんなさい。」
「とりあえず、キスしていいか?」
「うえっ? ここで?」
「こんなところ、誰も通らねえよ。」
 言うなり、オレは三橋の唇をふさいだ。嫌われてないと分かったからには、こうして確かめたい。
「阿部君……好きだよ……。」
 そんなこと言われたら止まらねえだろう。キスだけじゃ足りねぇ。驚かさないように、そっとシャツのボタンを外す。首筋をなめ上げると、三橋があっと声を上げて口元を抑えた。
「今日も声、聞かせてくれねぇの?」
 耳元で囁くと、三橋はさらに赤くなった。
「だって……だって……。」
 瞳に涙が浮かぶ。ああ、三橋が可愛くて可愛くて、どうにかなりそうだ。そっと押し倒すと、今度は三橋の胸元に口づけた。舌を這わせるたびに、三橋の体が震える。
 オレも目を閉じて、指と舌の感触に集中する。ある一点に触れた時、三橋が甲高い声を上げてのけぞった。
「あっ!! ダメッ!! やめてっ!!」
 こんな声聞いて止められるわけがねえ!!


 その時、
「三橋?と阿部?こんなところで何やってんの?」
 脳天気な声が降ってきた。
「た、田島?」
「オ、オレ……ここは、田島君の通学路だって……言おうとしたのに……。」


 屋外だということをすっかり忘れていたオレは、またしても中断させられ、口止め料として肉まんをおごらされることになったのだった……。

Tomokoのコメント
山之辺黄菜里さんの頂き物小説、『Sweet kiss 5』です。
お互いの気持ち、確かめ合うことができてよかったですね。
でも、やっぱり最後まで行けないと言う……(笑) でも、お互いの仲は少しは進展したようで。
今回も焦らしてくれますね、黄菜里さん。
田島様が出てくるオチで、私はとても喜びましたね!
田島様、誰にも言いませんよね。ね。
それにしても、肉まんで済んでよかったですね。
黄菜里さん、ありがとうございます。

サイト掲載日 2009.1.13
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