続・兎と虎のカプリチオ
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「ただいま」
「よぉ、バニ―」
「虎徹さん!」
 バーナビーは突然ハグをしてきた。
「どうした? 甘えっ子モードか? 楓が機嫌良かったんで、俺も気分いいんだ。もう何でも聞いちゃうよ」
「あのですね――ファイヤーエンブレムさんに、僕が虎徹さんに対して本気かと聞かれました」
「んで、どう答えた」
「本気だ、と答えました」
「おいおい、バニ―ちゃん。冗談言っちゃいけないよ、誰がこんなくたびれたおっさんを――」
「虎徹さんはくたびれてはいません。プロポーションだって良いし、いい顔してるし、感度だって……」
「わかった、わーかった。……おまえ、随分変わったよなぁ……前はスカした顔して『おじさん』って蔑んでたじゃねぇか」
「その時の僕をゴミ箱に投げ捨てたい!」
「――バニ―ちゃんがこんなにデレるとは思わなかったよ。なんかケツの辺りがむずむずすんだけど」
「誘ってるんですか? 虎徹さん! 誘っているんですか?」
「スカイハイじゃないんだから、二度言うな」
「僕はもう、貴方と一緒に寝ることが楽しみで……」
「はいはい。わかったよ」
 ぎゅうっとバーナビーに強く抱き締められた虎徹は苦しそうにもがいた。
「虎徹さんだけです。僕は永遠に貴方を愛します」
「永遠か……」
 虎徹が呟いた。
「あのな、バニ―ちゃん。俺の年になると先が見えて来るんだよ。簡単に永遠なんて言葉、信じられねぇ。だから、精一杯今日を生き抜くのみよ」
「そうですか……じゃあ、今、この瞬間を楽しみましょう」
「だな――ありがとよ」
「僕の方こそ」
 そして、バーナビーはお姫様抱っこで寝室に虎徹を運んで行った。
「虎徹さん。マヨネーズばかり摂取してると太りますよ」
「んなに重いなら降ろせ!」
「いえいえ。僕なら軽々運べます」
 バーナビーはハンサムスマイルを浮かべた。
 バーナビーはキスも巧みになってきた。自分より上手いではないかと、虎徹は感嘆すると同時に嫉妬もする。
 くわえてあの裸身。まるで彫像のようだ。
(……非の打ちどころがねぇじゃねぇか、全く)
 自分がバーナビ―にかなりべた惚れなのはわかっている。けれど、相手はその数倍、自分に参っているようなのだ。
 どうしてなのだかはわからない。ただ、今は目の前の快楽を追うだけ。
「バニ―ちゃん……バニ―ちゃん……バニ―……」
 まるで波にたゆたっているようだ。穏やかな時間。二人は口内を貪り合う。
「ん……ん……」
 まるで芯までとろけそうだ。虎徹のモノが反応し始める。
 でも、自分ばっかり感じさせられるのは不公平ではないか?
 バーナビーの頭が虎徹の露わになった下半身に近付いていく。そして――。
「? バニ―ちゃん?」
 バーナビーは眠っていた。気持ち良さそうに。
 ああ、そういえば、この頃出動続きだったからなぁ……バニ―ちゃんも疲れてたんだな。
 ファイヤーエンブレムと一緒だったのなら、酒でも飲んでいたのかもいしれない。
 虎徹は初めて、バーナビーを可愛いと思った。
 でも、このままでは少々辛い。虎徹は体を起こすと、バーナビーの体を改めてベッドに横たえた。
 だが――。
(本体は潰れてんのに、こっちは元気なままかよ! ――疲れマラ?)
 それが一個の生き物のように脈打っている。
 さすが若いわ……って、感心してる場合じゃない。
(うわっ。おっきぃ……こんなもんが入ってたのかよ――俺の中に)
 これが虎徹の中を動いていて、そして――。
 虎徹は想像するのをやめた。体が火照って来る。
 このままでは目のやり場に困る。これでもし体やシーツを汚したりなどしたら、バーナビーは恥をかくだろう。僕としたことが――なんて。
 よし。ここは一発抜いてあげよう。
 虎徹はティッシュを持って来た。
「失礼しまーす」
 バーナビーの自身は、剥かれた先端が紅色で、男の目から見てもなかなか形よくできていた。
 自分のもそう捨てたものでもないと虎徹は日頃思っているが、バーナビーのと比べると男としての劣等感が先に立ってくる。
 知らず知らずのうち、虎徹はバーナビーの先端にキスをしていた。
(うわっ! 何してんだ?! 俺……)
 我に返って虎徹はがばっと身を離した。
「えーと……やっぱ抜いてやんなきゃつれぇかもなぁ……」
 虎徹は、他人の自身を愛撫したことがない。
 しかし、そこは男としてのキャリア。どこがいいところかわかってはいるつもりだ。――いるつもりなのだが……口淫は未だに自信がない。
 でも、手での技なら自信がある! 伊達に男やもめはしていない!
 虎徹はバーナビーの自身を上下にしごき始めた。ピアニストのように指が滑らかに動く。
「ん……んっ」
 バーナビーが寝言で呻く。
 しまった! 俺まで元気になってきた!
 虎徹は自分のまでしごき始める。
 とろとろの蜜がバーナビーの先端から出て来る。虎徹のからも。
 時々親指でバーナビーの先端を擦ってやる。バーナビーは起きる気配を感じさせない。
「起きないでくれよ~。頼むから」
 こんな恥ずかしいところ、バーナビーほどスタイリッシュでなくても普通の男なら見られたくない。
 愛撫のスピードが早くなってくる。
(ん……おっ? 出る……か?!)
 バーナビーの先端が大きくなった。虎徹は慌ててティッシュでそこを押さえた。バーナビーの自身が痙攣する。
 ティッシュがどろどろに濡れて行くのがわかる。虎徹は好奇心でティッシュを鼻先に近付ける。嗅ぎ慣れたバーナビーの匂い。いつもより濃厚な匂いだった。しかしそんなに嫌な気持ちはしない。
 あ……俺も……!
 虎徹は新しいティッシュを取り出して自分のペニスに当てた。そうして自分の欲も放出する。
 気持ち良くなかったわけではない。だけど……。
(俺、バニ―ちゃんとしたかったなぁ……)
 早く元気になれよ、と虎徹は言い、バーナビーのこめかみにキスを落とした。

 数時間後――
 むくっとバーナビーが起きた。虎徹はしどけなく眠っている。
「ふふっ。甘いですね。虎徹さん」
 実はバーナビーは起きていたのだ。虎徹がバーナビーの自身に愛撫を施し始めた時から。
 あんなことされて起きない男なんていませんよ。しかも愛しい相手から。
 狸寝入りは疲れた。しかも声を出してしまった。起きていることを知られないようにするのに苦労した。
 しかし、虎徹は自分を慰める行為に夢中で気付かなかったようだ。バーナビーが薄眼を開けていることすらも。
「可愛いですね、虎徹さん」
 虎徹の頬を撫でながらバーナビーはくすくすと笑った。その笑顔を妖艶と形容する人もいるだろう。
 虎徹さん。御馳走様でした。記録ができなかったのが残念だけど……。
「僕が起きている時もこんな風に素直になってくださいね」
 取り敢えず今日は眠ろう。バーナビーは幸福に酔っていた。
 少し恥ずかしかったのは事実だが――それよりも虎徹の痴態を見られた満足の方が大きかった。

 ――やはりバーナビーの方が一枚上手らしい。虎徹は何も知らずに寝息を立てていた。

後書き
うふふ。去年書いた兎虎です。つーか、虎兎?
結構気に入っていたりして。
2013.4.29

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