お礼画面 ~山南さんの朝~

「おはよう、ケースケくん」
 携帯から鳴る、マジック元総帥の、ダンディな低温ボイスの声。
 この声を聞いて、山南は心地よく目覚めるのだが……今日は違った。
「何か……物足りない」

「んで、俺達を招集して会議かよ」
 斉藤ハジメは、不満そうに言った。
「そうだよ、諸君! 私がせっかくマジック先生の声で気持ちよく起きようと云うのに、機械越しじゃあ朝の仕事だってろくろく手につかんじゃないか」
 山南は熱弁をふるった。
「そんなの、いつものことだよな」
「変わらないよね」
 斉藤と永倉シンパチはお互いに頷き合った。
「ああ、これは世界の大損失だ! こんな天才的な頭脳を持ってしても、マジック先生の声が聴けなきゃ、効率が悪くなってしまう~。是非とも生マジック先生のお声が聴きたい~」
「何してるんだ?」
「あ、ススムちゃん。どうもしないよ。いつもの発作だよ」
 山崎ススムは、シンパチの説明で、大体の見当をつけた。
「マジック先生、マジック先生。一度でいいから生の声で『おはよう』と言ってもらいたい~」
「おはよう、ケースケくん」
「はっ、そのお声はッ!」
 山崎はもう一度繰り返した。
「おはよう、ケースケくん」
「マジックせんせーーーーーーーっ!! どっからどう聴いてもマジック先生のお声だ! マジック先生よりマジック先生だよ!」
「マジックよりマジックって……なんか変じゃねぇか?」
 斉藤がツッコミを入れる。
「ススムちゃん、声色上手いもんね」
「山南さん、僕、フェレットが欲しいんですが」
「ああ、買いたまえ買いたまえ! その前に、携帯で録音するから」
 山崎と山南のやり取りを見て、
「あーあ、就職先間違えたかな、俺」
と、斉藤が愚痴った。
「エルフを雇うところなんて、どこにもないと思うよ」
「シンパチ……俺を人間扱いしろ……」

 こうして、朝の会議は、順調に(?)進んでいったのであった。

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