ヴィク勇の俺が本気で勇ヴィクしてみた

※18禁です。

 長谷津にある温泉旅館ゆーとぴあかつき。
 そこで勝生勇利に勧められヴィクトル・ニキフォロフが大量の酒をきこしめす。
「あー、いい気持ち。日本酒も美味しいね」
「当り前じゃん。ヴィクトル。うちのはそんじょそこらの酒とは訳が違うんですからね~」
 どう違うんだろうと、ヴィクトルは疑問に思う。他の旅館の酒は飲んだことがないからだ。そして、ここでしか勇利とセックスしなかったから――
(ここは俺にとって最高の旅館だな)
 勇利と共にフィギュアスケートの未来について語らい、食事をして酒を飲んで勇利を抱く――。こんな天国が他にありますかってんだ。カツ丼も美味しいし。
 でも、今日は――。
 ちょっと飲み過ぎたらしい。油断していると前後不覚に陥りそうだ。
「僕、そろそろ部屋に戻るよ」
「じゃ、俺も――」
 そこからヴィクトルの意識はブラックアウトした。

 ヴィクトルが目を覚ますと、そこは畳の部屋だった。勇利との逢引きでよく使う部屋だ。ヴィクトルと勇利の仲はもう周知のものとなっている。
 今はマッカチンもここで寝ている。
(あー、失敗した)
 十代のガキでもあるまいし、意識が暗転するまで飲むなんて――。
 それに、頭が痛くて勇利を抱くどころではない。幸いにして吐き気はないが。
 せっかく勇利と一緒の部屋なのに――。
「あ、起きた? ヴィクトル」
 眼鏡をかけた、可愛いくせにどこか謎めいた勇利がヴィクトルに声をかけた。
「うん……」
「大丈夫?」
「――あんまり、大丈夫じゃないかもしれない……」
「ヴィクトルすごい飲んでたもんね。待って、今、水持って来る――」
 勇利が布団に蹴躓いたらしい。
「わっ!」
 勇利が倒れ、ヴィクトルの上に乗る。マッカチンが目を覚ましたみたいだが、何も変事がないと知ると、また夢の中へ入って行った。
「ヴィクトル、ごめん――」
 勇利の真っ赤な顔が真近にある。ヴィクトルの心臓は破れそうだ。
 勇利も同じような状況らしい。
(俺、役に立つかな――)
 情欲の兆しがめらめらと燃えている。もう頭痛も吹っ飛んだ。
 勇利は眼鏡を外し、ヴィクトルにキスをした。ヴィクトルがいつも勇利にしている濃厚なディープキスだ。
 はぁっ、と勇利は甘い吐息を吐いた。
「可愛いね、勇利」
「な、何ですか。――俺はヴィクトルの方が可愛いと思ったよ……」
 そして、勇利はそっぽを向いた。
「僕だってヴィクトルのこと――抱けるんだからね」
「何だい、それは。女役が不満かい?」
「僕だって男だって言いたいの!」
「そうだね。勇利は立派な男だね」
 ヴィクトルは勇利の陰部をまさぐる。勇利がびくっとした。
「ほら可愛い。若いね、勇利」
「僕はあんな酒量程度で役に立たなくなる誰かさんじゃありません」
 ――皮肉も上手くなって。
「酷いなぁ、勇利」
 ヴィクトルはわざと傷ついたような顔をした。泣きそうな表情も浮かべてやった。そうすると勇利は慌てて謝って来るのだ。
「あ……ごめん」
 ――ほらね。
 このカップルではヴィクトルの方が主導権を握っている。ヴィクトルも無駄に性生活を謳歌してきた訳ではない。相手は女性だったが。男は勇利が初めてで――。
 だが、勇利はどんな男でも狂わすであろう魔性の体を持っている。
 浮気したら許さない、勇利。
 自分のことは棚に上げてヴィクトルは思った。この男は俺だけのもの。
「じゃあさ、今日は勇利が俺を満足させてよ」
「?!」
 勇利が目を見開いた。勇利には男役の経験が、ない。つまり、処女ではないものの、まだ童貞ではあるのだ。
「あ……でも、僕、経験がないから――」
「逃げる気?」
 ヴィクトルは挑発的に言った。勇利の目がゆらゆらと泳いでいる。だが――やがて勇利は雄の顔になった。
「痛くても――知らないよ」
「おや? 君は俺に抱かれた時、気持ち良くなかった? 痛いだけだった?」
「…………」
 絶句した勇利にヴィクトルはくすくす笑った。その笑っている唇に舌がねじ込まれた。
「んん……う……」
 ヴィクトルが施すのとは違う、初心者のキス。でも、そんな下手なキスにも感じているヴィクトル。それに、下手と言っても性の天才でもあるヴィクトルと比べれば、の話で、平均的には充分上手い方に入るだろう。――ヴィクトルが手ほどきしたから。
 勇利みたいな魅力たっぷりのかっこよくて可愛い男をほったらかすなんて、女達は馬鹿だ。
 ――ヴィクトルが勇利の舌に舌を絡める。
「うっ、はぁっ……」
 勇利に余裕がないのがわかる。だって、今夜は男としてのセックス。童貞喪失の儀式をこれからするのだ。
 まさか、このままイクんじゃないだろうな、勇利――。
 だが、勇利はきっちり自分を抑えてヴィクトルの浴衣をはだけると、枕元に置いてあったローションをヴィクトルの菊花に塗りたくる。
(へぇ……勇利、意外と長い指……)
 それに、二本指の動きは意外と上手い。ヴィクトルのも自然勢い良く反応する。
「いいよ、勇利――」
「そ、そう……?」
「俺の中に――挿れて」
「う……うん……」
 浴衣の間から勇利のモノが現れる。ヴィクトル程は大きくはない。けれど、挿れたら気持ち良さそうな立派なモノが天を突かんばかりに大きく勃ち上がっている。
 やっぱ、若いな、勇利は――。
 そんな事実が今更だがふと少し寂しくなってヴィクトルは自分が力なく微笑んだ気がした。
 いつもなら、そんなヴィクトルの顔を見ると、「どうしたの?」とワンコみたいに心配そうに訊く優しい勇利だが、今はもうそれどころではないらしい。
(まぁ、俺にも同じような経験があるさ――)
「来なよ、勇利」

 ――間もなく、ヴィクトルはさっきの自分の台詞を後悔した。
 気持ち良過ぎるのである。痛いだけなら自分を保っていられるのに。これじゃ、自分がバラバラになる。勇利がこんなテクをいつの間にか身に付けていたなんて――。
「ど、どうでしょう……」
 どうでしょうはないだろう。勇利。ヴィクトルは思わずツッコミを入れた。
「天国にいるみたいだよ。勇利」
「ほんと?!」
 勇利の黒い瞳が輝く。
 男役でも女役でも自分を酔わせることができるなんて――しかも、百戦錬磨の自分を。一言で言うなら――
(勇利! 最高!)
 勇利の体が小刻みに震える。
「ヴィクトル、俺、もう――」
「いいよ。イッて――」
 自分はもう、充分に満足したんだから。勇利のからだから熱い熱が放たれた。次の瞬間、ヴィクトルも。
 ヴィクトルは勇利を死んでも離すまいと決心した。こんな恋人は他にはいない。
 ――そして四ラウンド目。目が艶っぽくとろんとしている勇利はまだやり足りないようだ。あのスタミナで朝まで抱かれるのか。確かに勇利は最愛の恋人ではあるが、ヴィクトルは勇利の精力に少々恐れをなし始めた。

後書き
ユーリオンアイスの二次創作です。18禁です。
風魔の杏里さんの影響でこのアニメYOIにハマってしまいました。
ヴィクトルも勇利もかっこいいので、ヴィク勇も勇ヴィクも大好きです。
この小説のタイトルは杏里さんが出した本をアレンジしたもの。杏里さんの本のタイトルは、『勇ヴィクの俺が全力でヴィク勇してみた』というタイトルです。
この小説は、YOIを教えてくださった風魔の杏里さんに捧げます。続きも……あるんだかないんだか(笑)。しかもスケートは全くしてないと言う(笑)。
2017.5.13

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