シーランドとアメリカのイギリス争奪戦☆ こんにちは。シーランドです。 シー君この頃不愉快でしようがないのですよ。 ヒーローオタクのアメリカ、シー君だったら、ヒーロー好きもほほえましいですみますけど、あの男、結構いい年ですよ。ま、あんなジジイ、シー君には関係ないですけどね。 ただ、面白くないのは、アメリカがイギリスの野郎と急激に仲良くなったことですよ。 イギリスはシー君のですよ! イギリスは生意気だから、大きくなったらやっつけてやるんです! イギリスが負けたら、子分にしてやるのですよ。 シー君は体は小さくても心がとっても広いから、イギリスも許してやるのですよ。 アーサー・カークランド。 それがイギリスのもうひとつの呼び名なのですよ。 国の名前と人としての名前を、シー君みたいな国は持っているのですよ。 ちなみにシー君は、ピーター・カークランド。 同じカークランド姓でも、シー君は高貴な顔立ち、イギリスは単なる太眉毛なのですよ。 でも、シー君この頃変なのですよ。 イギリスの姿見るとドキドキするし、アメリカと仲良くしゃべっているのを見るとイヤな気持ちになるのですよ。 思えばアメリカは出会いも最悪だったですよ。 目を合わせたときに、互いに、 「こいつは敵だ!」と感じたのですよ。 イギリスのこともあるから、シー君とアメリカは不倶戴天の敵なのですよ。 イギリスはアメリカとチューしたことがあったりしたのですよねぇ……。 イヤです! そんなイギリス認めません! アメリカのヤツ殺してやります! 「シーランド、俺、イギリスと大人のキスしたことがあるんだぞ」 そう言って得意げにふるまうのですよ。アメリカは。 シー君だってそのくらいできます! この間イギリスに「チューしてほしいのですよ」と言ったら、イギリスは笑って、 「わかったよ」 と言って小鳥のキス……。 子供扱いにも程がありますよ! シー君にも大人のチューしてください! アメリカみたいに! だって、だってシー君、イギリスといろんなチューしたいのですよ。 いつからかわからないけど、イギリスが好きなのですよ。大好きなのですよ。 だから、アメリカを見たとき、一目でライバルと見破ったのですよ。 アメリカにイギリスは渡しません。子供には子供の特権があるのですよ。 子供の特権って何かって?えーと、えーと……。 「シー君、イギリスの膝に乗ってあげてもいいですよ」 でも、 「なんだい?シーランド、イギリスの膝に乗せてもらっているのかい?」 「ああ。アメリカ。昔はおまえのこともこうやって抱っこしてたな」 「よしてくれよ、昔の話は」 ガーン! これも経験済みだったとは! アメリカ手強いですよ……。 それに、アメリカとイギリスが過ごした時間の方が、シー君とイギリスと過ごした時間より長いのですよ……。 パパ、こんなときいったいどうしたらいいですか……。 「おい、シーランド、いつまでイギリスの膝を占領しているつもりだい。そろそろ帰るよ」 会議も終わって、みんな引き上げて行ったらしいのですよ。ちなみに、この会議で、シー君は正式に国と認められたのですよ。 イギリスを待っているアメリカがちょっと怒っているようですよ。ざまあ見ろなのですよ。イギリスはずーっとずーっとシー君のものなのですよ。 「そうだな。もう降りろ、シーランド」 イギリスまでシー君を邪魔にするですか?! 「イヤなのです!」 「なにぃ?!」 アメリカの眼鏡の奥の瞳が光ったような気がするですよ。でも、どいたら負けなのですよ。 「シーランド、君はイギリスにどんなに負担をかけているかわからないのかい?!」 「いや、おまえの方が俺に負担をかけていると思うのだがな……」 イギリスは迷惑そうなのですよ。しつこい男は嫌われるのですよ、アメリカ。 「で、でも、君にもいい思いをさせてるじゃないか!」 「アメリカ! そんなこと人前で言うな!」 イギリスが赤くなってるですよ。どうしてですかねぇ。 「どうせシーランドにはわからないよ」 アメリカのセリフ、カチンと来たですよ。 シー君だってわかるですよ。いいことって、チューのことなのですよ。 「シー君だって、イギリスといいことしてるですよ」 「ええっ?! イギリス、君はショタコンだったのかい?」 「何をバカな……シーランドも変なこと言うんじゃない!」 「いや、わからないぞ、君は車に発情するお国柄だからな」 「アメリカ!」 このぐらいの口げんか、この二人なら日常茶飯事なのですよ。 それにしても……。 「変なことって何ですか?」 シー君の質問に、二人は我に返ったようですよ。 「そうか、シーランドはまだ子供だったな」 「俺も大人気なかったよ」 なんですか! 二人だけで納得して! ずるいです! 仲間に入れて欲しいのです! シー君、グレるですよ。 「あ、シーランド泣いてる。イギリスが泣かせたんだ」 「ばっ……なんで俺のせい?!」 「大声出してびっくりさせたじゃないか」 違うですよ……言いたいけど、しゃっくりが止まらなくて言えないですよ……。 「あー、シーランド、すまんな」 イギリスが謝ったです! あのプライドの高いイギリスが! シー君勝ったです!何に勝ったのか、よくわからないのですが。 「さ、シーランド、泣き止め」 イギリスがハンカチを出してくれたですよ。きちんと折り目がついているところが、性格出ているですよねぇ……。 「イギリス、それ、俺が誕生日にあげたハンカチ……」 ゲッ! アメリカ野郎のハンカチなのですか?! こんなもん丸めて投げ捨ててやるですよ! 「あっ、何すんだよ、シーランド!」 イギリスが慌てるけど、同情なんかしないのですよ。アメリカのプレゼントを大事に持ってるなんて、許せないのですよ。 シー君なんか、きらきら光るキレイな石をあげたのに、アメリカはチンケなハンカチなのですか。 「シーランド、機嫌悪そうだな。もっとも、俺にはいつも機嫌悪いけど」 あたりまえなのですよ、アメリカ!恋敵に親切にしてやる男なんていないですよ! 「なあ、もう泣き止めよ、な。言うことなんでもきくから」 イギリスが機嫌を取ろうとしているですよ。こいつを利用しましょう! 「じゃあ、一緒に寝てくれますですか?」 恋人同士は一緒に寝るものだと、聞いたことがあるですよ。 「ああ、いいとも!」 イギリスが笑いながら言ってくれたですよ。やった! 「ええー?! イギリス、今日は俺と……」 「そのうちな」 アメリカが頬を膨らませたですよ。子供っぽい顔なのですよ。 なんか知らないけど、アメリカに勝ったようなのですよ。 「眠くなったから、おんぶして欲しいのです……」 「ああ。さ、乗れ」 イギリスがシー君を背中にしょってくれたですよ。 「俺も子供に戻りたくなってきたな」 おっ?! 早くも敗北宣言なのですか?アメリカ。 「バーカ」 イギリスがアメリカの鼻を押したですよ。 「おまえが子供だったら、おまえのいういいことも、できないんだぞ」 「イギリス……」 アメリカの顔がぱあっと輝いたような気がしたですよ。面白くないのですよ。この二人には秘密があるようなのですよ。 「ようし、シーランドが寝たら一戦交えるか!」 「一戦で足りるのか?」 「いやあ、君が望むなら何度でも」 バカアメリカ。シー君今夜は寝ませんよ。二人の秘密をあばいてやるのですよ。 ところが、その日に限ってうっかり寝てしまったのですよ。夜更かしとインターネットは特技なのに。 アメリカは昨日よりイギリスとラブラブなのですよ。許せませんですよ。 シー君も大人になったら、イギリスと、好きなだけチューしてやるのですよ。あの二人もいっぱいチューしたから、仲がよくなったのですよ。そうに違いありません! シー君達はイギリスの家に泊まったのですよ。朝食には昨日の残りのシチューがふるまわれて、意外と旨かったですよ。 あれ?手帳が落ちてますね。シー君、拾って見てみます。 かわいい男の子の写真がありましたですよ。シー君の方がかわいいですがね。なんだかどこかで見たような……。 「あーっ! シーランド! 俺の手帳返せ!」 イギリスが飛びかかるのをひらりとかわしたですよ。 「イギリス、写真の男の子誰なのですか?」 手帳に入れて始終持ち歩いているくらいなんだから、大切な存在なのですね、きっと。どうせならシー君の写真を持っていればいいのにですよ。 「幼い頃の……アメリカだよ」 そう言ったイギリスの顔は真っ赤になったですよ。 むむ……アメリカめ、こんな小さい頃からイギリスを誘惑するなですよ。あ、でもシー君も同じことすればいいんですよ! まず、アメリカはどうやってイギリスのハートをつかんだのですかねぇ。 「あいつは俺の弟だから」 シー君の疑問に、イギリスはそう答えたですよ。バカにするなですよ。イギリスのあの顔! 恋する者の顔なのですよ! 隠し事はよくないのですよ! 「この時から、イギリスはアメリカのこと、好きだったのですか?」 「どうでもいいだろ、そんなこと」 「よくないね」 後ろにアメリカ……怖いのですよ、背後霊みたいなのですよ。 「ねぇ、イギリス。その頃から俺のこと好きだったの?」 アメリカ野郎のセリフに、イギリスはうつむいたですよ。そして、こう言ったのですよ。 「……だったらどうだってんだよ」 「イギリス……」 イギリスとアメリカは互いに近寄っていったのですよ。ああ、見てられないのですよ。二人でメロドラマ始めて。 でも、アメリカの野郎がこんなに小さい頃からイギリスに惚れられていたとすれば……この時と同じような年頃のシー君にもチャンスはあるかも?! ……って?! ななななななにやっているのですか!二人とも!シー君の目の前で! あれは大人のチューなのですね?! 「アメリカ、シーランドが見てるぞ」 「いいから見させておきなって。将来のためにさ」 ああ、この時ほど、早く大人になりたいと思ったことはなかったですよ。 でも、シー君諦めるつもりねーですよ。 シー君は、ロケットパンチでアメリカを葬り去るのですよ。 まずは宣戦布告! 「アメリカ! シー君はおまえにだけは負けたくないのですよ!」 「はあ? なんだい? 急に」 「とぼけたって無駄なのですよ! イギリス奪っといて! イギリスはシー君のものなのですよ!」 「えー? イギリスは俺の恋人だよ。それに、シーランドがイギリスのものだというなら、話はわかるけど」 「シー君はイギリスの子分ではないですよ!」 イギリスがシー君の子分なのですよ。近いうちそうなるです。 「……やれやれ。なんか野郎ばかりに惚れられるな、俺……」 イギリスは洗い物をしようと台所に立ったのですよ。その姿も結構様になっているのですよ。 「なあ、イギリス。この前、俺のこと嫌いじゃないって言ったよな」 「……言ったかな」 「言ったよー、もう忘れちゃったの?」 「それって、好きってことだよね?」 アメリカが攻勢をかけているのですよ。 「イギリス! シー君も君をシー君の方に振り向かせてみせるですよ!」 もう、こうなったら戦いですよ! どすんばたんと絨毯の上でシー君達は暴れ回ったですよ。イギリスはその間見向きもしなかったのですよ。ひどいヤツです。 でも、アメリカとのイギリスを巡っての争いは、まだ始まったばかりなのですよ。両方とも、いつかひざまづかせてやるのです! 後書き 風魔の杏里さんからのリクエスト、シーランドとアメリカのイギリス争奪戦です(そのまんま)。 この話では、イギリスとシーランドは、他人同士ということになっております。 2009.10.25 |