リトポ小咄『ケータイ』

「ポー。ご飯できたよー」
 トントンと、ポーの部屋の扉を叩くリト。
 しかし、返事がないので、勝手にガチャリとドアを開ける。
「あー。リトか……」
「寝てたの? ポー」
「あー、いや、うん……」
 はかばかしい返事をせずに起き上ったポーの枕から、ケータイがぽろっ。
「ポー……もしかしてケータイしながら昼寝してたの?」
「あー? そんなことあるわけないしー」
 だが、リトはポーの言葉を信用しない。
「もしかして、ネットに繋いでた?」
「それがどしたん?」
「ネットしながら寝てた?」
「んなわけないじゃん? そんなドジ踏むわけないしー」
 ポーの顔を、リトはじっと見た。
「あー。その顔は、もしかして信じてないん? リトに信じられてないなんて、俺、超悲しいんだけどー」
「わかったわかった。ご飯冷めないうちに降りてきてね」
「うん。ちょっとしたら行くしー」
 扉を閉めて、リトは溜息を吐いた。
(パケ放題にしておいてよかった……)
 だが、ポーのことだ。知らずに有料サイトを見ていないとも限らない。
 他人のことながら、リトはポーに対していつもはらはらしている。
 ――リトの心配の種は尽きまじ。

 ポーの来るのが遅い。
 リトが部屋に行くと――
 ポーはまた寝ていた。
「全く、しようがないんだから」
 でも、そんなとこも憎めないんだよね。心配させられ通しだけど。
 ポーの傍には、ケータイが転がっていた。
 インターネットに繋がったままだったのを切って、ケータイを充電器に差し込むと、リトは、涎を垂らして寝ているポーに布団を掛けてやった。

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