イギイギの初体験――大人の遊び ※18禁ですので、お読みになりたい方は下へスクロールしてください。 あれはいつのことだっただろう。 多分、俺がまだ十二歳ぐらいの頃だったかな。 「アーサー。大人の遊びしよーぜ♪」 そう言ったのは、悪友のフランシスだった。 最初は体を触り合ったり、いけないところを軽くいじるだけのものだったが、気がつくと最後までいってしまった。 年上のフランシスは、俺にとっては反発の対象であると同時に、憧れの存在でもあった。 そのフランシスに任せておけば、万事が上手くいくと思っていた。 あいつは、俺のこと征服したいって、いつも言ってたからな。 制服って何かな?と思っていた俺は、おめでたい奴だったと思う。 味をしめた俺達は、随分悪いことをした。 それがいけない――少なくとも、結婚した相手とでなければ不道徳なものであったということは、結構後になってからだった。 俺にも思春期はある。 それでも、性について悩んだことはなかった。 フランシスは上手かった。 俺の体は、男に抱かれることに慣れてしまった。 それもこれも、全部フランシスのせいとまでは言えない。俺にもそういう要素があった。 性的な禁忌を犯すのも、悪いこととは思わなかった。 俺はその頃、ピューリタンではなかったと思う。 清教徒革命が起きた時に、少々、「困ったぞ」と思うぐらいで。 フランシスと同棲していたことにも、何の疑問も感じなかった。 あいつのことは好きでもあり、嫌いでもあり。 それでも、夜のことに付き合うぐらいには、好きではあったんだと思う。 「坊っちゃん、好きだよ」 その台詞に何度騙されたことか。いや、嘘ではなかったのかもしれない。 けれど、フランシスは遊び人だった。 アホだし、変態だが、フランシスは美形だった。男も女もほいほいだ。俺は、その中の一人だったんだと思う。 だから――だから面白くなかった。 何故だか知らないけど、面白くなかった。 フランシスに恋していると知ったのは、十五くらいになってからだと思う。 俺は真剣だったが、フランシスは浮気者だった。 時々ベッドから跳ね落とした。それで溜飲を下げていた。そんなこともあったんだ。 あてつけに、俺もいろいろやった。みんな、俺の体に夢中になり、俺のことを手放したがらなかったが、フランシスより上手い奴は滅多にいなかった。 フランシスはやっぱりスケベだったんだなぁと思う。俺も人のことは言えないが。 今だって、マシューとつき合っているくせに、俺のこと誘うもんな。 でも、俺は、今はあいつとしかやらない、と決めていた。 あいつ。――アルフレッドのことだ。俺はアルと呼んでいる。 アルが弟になった時、このままでは駄目だと思った。 肉体関係を持っている奴らとの付き合い、全部断ち、俺は「いい兄」という役割に専念した。 今でこそ図体ばかりでかい生意気なアホに育ったが、アルフレッドは可愛い子だった。今でも、面影は残っている。 それでも、フランシスとの関係だけは、続けていた。 だが――俺はアルには、俺みたいには育って欲しくなかった。 禁欲生活に飽いて、自慰をしていた時、アルフレッドに、 「何してるの?」 と訊かれて冷や汗をかいたことがある。 俺は――相当好き者だったことは否めない。 けれど、アルまでがまさか「そういう目」で見ているとは思わなかった。 心の中では抵抗もあったけど、しかし、嬉しくなくもなかった俺も俺だ……。 でも、アルには、いつまでも可愛い弟でいて欲しかったなぁ。 俺が、アルに対しての想いに自分で気付いた時、 (これはヤバい) と思った。 俺がだよ。みんな夢中になって俺の体を貪って、俺自身もそれを悦びとしていた俺がだよ。 アルに恋をした――なんて、自分で信じられなかったよ。あいつは弟なのにさ! 俺は自分で、 (俺はどこまで恋多き男なんだ……) と、落ち込んだよ。 いくら何でも、弟にまで発情するなんて……。 俺はアルに何度も謝った。寝顔で抜いたこともあるなんて、バレたら困るよなぁ……。 アルに抱かれる夢を見たことも、一度や二度ではない。その度に、自分に嫌悪感。 だから、そういう時は、フランシスと遊んでやった。 フランシスと寝なくなったのは、俺が本気でアルとの恋に目覚めた時だった。フランシスの浮気も原因だが。 フランシスは、 「坊っちゃん、アルで物足りなくなったら、いつでも呼んでくれよ」 と言った。あいつなりに、優しい奴だったんだ、と思う。好色だけど。 アルは、俺の過去を知った時、当然いい顔をしなかった。けれど―― 「それでもアーサーはアーサーなんだぞ」 と言ってくれ、付き合ってくれた。 優しい奴だ。俺と付き合ってくれた男は、多少の例外を除いて、みんな優しかったような気がする。 罪悪感の裏返しで、そう感じるのかもしれないが。 俺はどうしようもない男娼かもしれないが、アルが育つまで待とうと思った。 或いは――もしアルと結ばれなくても、一生孤閨を守ろうと。 フランシスはしかし、そんな俺を放っておかなかった。 よく誘いはかかってきた。断るのも面倒になってきたけど。 フランシスは笑って言った。 「坊っちゃん……本気なんだねぇ……アルに対して」 当たり前だ、バーロー。 おまえとの時のように流されてではなくて、本当に心からアルを欲してんだ、俺は。 それなのに、アルの恋情には長い間勘づかなかった。 アルは俺の弟だったからな……それに、アルに劣情を持って欲しくなかったのかもしれない。 あいつには、いつまでも清らかな天使でいて欲しかったのかもしれない。 いや、天使は俺の専売特許だ。何てったって俺は、ブリタニアエンジェルにもなれるんだからな。 肉体の悪魔――いや、天使といったところか。 もう、アル以外とは寝ない、と決めたがな。 昔の欲が疼く時もある。それも、昔の話だ。 今は、アルが埋めてくれる。お世辞にもテクニシャンとは言えないが、俺の快感を引き出してくれる。 しかし、時々フランシスが恋しくなることもある。 アルには内緒だぜ。 でも、フランシスはマシューとよろしくやっている(んだと思う。マシューはお堅そうだが)。 この前会った時、 「マシューはじっくり料理するつもりよん♪」 と言っていた。可哀想なマシュー。あんなに可愛いのに、フランシスの餌食にされるなんて。 俺は人のことは言えないが、フランシスがマシューに恋をしたと知った時、何だかいろいろ複雑な気分になった。 大丈夫かな。マシュー。フランシスの浮気癖に泣かなきゃいいけど。 そしたら、俺がフランシスのところへ行って、大事なものを使いものにならなくしてやる! 元ヤンなめんな! ま、そんときゃちょっと惜しいかな、と思うかもしれないが。 でも、もういいんだ。俺の恋人は、アルなんだからな。 俺とアルは、こないだ結ばれた。 だから――思う。 フランシスも、俺のことは諦めてこれからは新しい恋に励んで欲しい。 だって、あれでもあいつは大切な悪友――だもんな。それにやっぱり思い出の、初めての男だったんだし――な。 後書き ちょっと今回は大人の話。 2011.7.11 |