やっぱりあの子は好きになれない

「はぁっ……はぁっ。氷室さん……」
「君は……黒子君……どうしたんだい?」
「あなたは……火神君とどういう関係なんですか?」
「言ったろ? 義兄弟って感じかな?」
「もしかして――噂に聞くそういう関係なのですか?」
「タイガと僕がゲイかって?」
「はい」
「ぷっ……あははは。僕もタイガもそういう趣味はないよ。タイガは今はどうかわからないけど、僕の知ってる限りでは」
「――でも、アメリカでは多いと聞きましたので」
「……黒子君はタイガが好きなんだね?」
「はい。そういう意味で、好きなんです」
「……そうか。で、僕は何をすればいいのかな」
「特に何も」
「何も?」
「はい。自分の好きな人のハートぐらい、自分で射止めます。――それでは」
「――本当に面白い子だね、君は」
「ありがとうございます。決着はウィンターカップでつけましょう」
「ああ。タイガと仲良くね」

「テツ君いる?」
「桃井さん。ここは誠凜の体育館なんだけど。こんなとこまで何しに?」
「カントク……」
「黒子君……」
「テツくーん!!」
「うわっ!」

「さ、邪魔な男子陣は追い払ったわよ。話、聞かせてくれるわね。黒子君はここにいてね」
「はい」
「私……青峰君に嫌われたかも……今年のミス桐皇優勝候補の私に対して『ブス』って言ったのよ」
「あなたねぇ……遠回しに自慢するなら帰ってくれる?」
「ごめんなさい。Bカップのリコさん」
「あたしはねー、胸はなくとも可愛いって評判なのよ! でも、確かに胸の大きい可愛い娘は嫌いだわ。ついでに言うとうじうじめそめそ泣く子も嫌い!」
「うう……カントクさんの意地悪」
「ふん。小娘が。――ま、能力は買うけどね」
「はい……」
「あなた、黒子君が好きなのよね」
「もちろんです!」
「青峰君も気になるのね」
「そうなんです! 放っておけないっていうか――あいつ一人で突っ走るくせがあるから……」
「複雑な女心ってわけね」
「とか言って、カントク……本当にわかって言ってるんですか?」
「わかるわよ――私も似たような悩み抱えているもの」
「ええっ?! Bのくせに恋愛の機微とかわかるんですかー?!」
「何よそれ。胸がないと恋しちゃだめって言うの?! ――まぁ、ここは取り敢えず、流れに任せてみるのもいいかもよ」
「――あのう、カントクの好きな相手って火神さんですか?」
「……もっといい男よ」
「火神君はいい男ですよ」
「ええっ?! 黒子君ちょっと怒ってる?! てか、影薄いから忘れてたわ!」
「テツ君火神君ともしかして禁断の関係?!」
「…………」
「ま、まぁ相棒けなされたら誰だって怒るわよね」
「そ、そうですよね、カントク」
「取り敢えず青峰君と和解しなさいよ、桃井さん。気になるなら。こんなところで泣いてるよりよっぽど為になるわ。青峰君だって本気で嫌いになったわけじゃないと思うし。本当に嫌いだったらもっと早くにそう言うわよ。青峰君、火神君より沸点低そうだもの」
「わかりました。カントク、優しいですね。Bカップのくせに」
「Bカップで悪かったわね。胸はでかきゃいいってもんじゃないのよ。ホルスタインじゃないんだから」
「随分強がってるようなのはわかります」
「黙れ黒子!」
「あ、そうだ。カントク、Tシャツありがとうございました」
「いいのよ別に」

「あーあ。桃井さん帰っちゃったか」
「黒子のヤツ、今頃彼女に何してるんだろうなぁ、もう!」
「ちゅーぐらいしてるんじゃね?」
「あの黒子にそんな甲斐性ないない」
「わからんぞ。黒子ってあー見えて大胆だからな」
「あー、もう男子! 切り替えなさい!」
「カントク、桃井さんと話した?」
「ちょこっとだけね。案外悪い子ではないわね。――でも、あたし、やっぱりあの子は好きになれない」

「誠凜のバスケ部に立ち寄ってみて良かったー。テツ君からお土産ももらったし。やっぱり私、誠凜に来たかったなぁ。桐皇も悪くないけど。それとカントク、ああいうお姉ちゃんがいたら良かったな。――そうそう、テツ君の新技のこと、青峰君に早く知らせなくっちゃ」

後書き
黒バス9巻を読んで速攻で作ったプロットです。勢いだけです(笑)。
2013.6.23

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