ロング・インタビュー1 ……インタビューアーは私、夕城さなえが務めさせていただきます。 夕城(以下Y)「――てなわけで、やってまいりました。第一回~。 このコーナーはですね、 対談形式でキャラクターの本音を聞いちゃおうというコーナーなのです。それでは、第一回のゲストさん、どうぞ~!」 シンタロー(以下S)「第一回のゲストは俺か。まあ、基本だな(あるのか、第二回)。あ、どうも、みなさん。シンタローです」 Y「いやぁ、ガンマ団の総帥におなりになったとは聞いていましたが、やはり真っ赤なブレザー着ていらしたんですね。結構ハデ目ですが…似合ってらっしゃいますねぇ」 S「はは…どんな服でもわりと似合うと言われますね。自分でも密かにガンマ団ナンバー2のベストドレッサーを自称していたり(笑)」 Y「ほうほう。シンタローさんは確か、そちらの方でもナンバー1を名乗っているんじゃありませんでしたっけ?」 S「サービス叔父さんが団に戻って来たから、ナンバー1は叔父さんに譲ります。ちなみにワーストドレッサーはハーレム叔父さんね(笑)」 Y「こらこら、どうしてそういういらんことを(-_-;) ……え~い! 私がハーレムファンと知っての台詞かー!!」 S「え? あの獅子舞叔父貴を?!」 Y「こほん。彼は唯一サービスさんとタメ張る美形だと思ってますわよ」 S「まあ、双子だしなー…美形って認めんのについちゃ、やぶさかでもないけど…センスは悪いよな」 Y「ああ…まあ…ね。センスはね。それについちゃ反論のしようがないかも。…で、なんだっけ?」 S「どっちがインタビューアーだか(笑)。俺が引っ張ってくしかなさそうだな」 Y「単刀直入に訊きますけど、パプワ島に帰りたいですか?」 S「…………」 Y「(やば。いきなりこの質問はまずかったか!)」 S「……そうだな。帰りたくない、といえば嘘になる。帰りたいよ。帰りたい。不思議なもんだな。あれほど出て行きたがっていた島が、こんなに懐かしくなっちまうなんてな。だが、俺が、あの連中についてくることは許されなかった……」 Y「…………」 S「でも生きていればいつか会える。そう信じて、俺はガンマ団の総帥になった。いつかパプワと、胸を張って会えるように」 Y「シンタローさんは“いつか”――それから“また”とか、そういう曖昧な言葉は嫌いなんじゃなかったですか?」 S「ああ。少し前までは、すぐそんな台詞を吐く自分が許せなかったよ。だけど、そういう希望にすがって、生きていくことも必要だいうことも、学んだんだ。大人には、大人なりの事情があるんだ。――まるっきり望みがないということもないと思うよ。叔父さんとジャンの例もあるし(笑)」 Y「イトウくんとタンノくんには、会いたいですか?」 S「うーん…まぁ、一回ぐらいはな。でも会った後は即、ガンマ砲だろうな」 Y「再会したとき、彼らがシンタローさんのことを忘れているかもしれないという可能性については?」 S「やなこと訊くね(苦笑)。――それについちゃ、考えないようにしている」 Y「アスとのつながりも訊いてみたいんですが。ときどき自分の中に二人いるような、変な感じはしなかったですか(笑)?」 S「そうだなぁ。あんまり気付かなかった。気にする方でもないし。 …でも、そういえば、日記なんか書いてる最中に、文が勝手に……『ジャンが憎い』って。ジャンって誰だって(笑)」 Y「キンタローの体を間借りしていた頃(結果的にはそうなりますね)三人いた計算になりません?」 S「うーん…俺があの体にいた頃は、あいつの意識はまだそんなに育っていなかったみたいだ。あいつに訊いても、外に出る前の記憶はさっぱりだって」 Y「ふぅん。青い玉にロックされていたのかな」 S「俺に何らかのことがあった場合、それが解除されるようになっていたのかも」 Y「コタローくんに討たれたときね」 S「あれはショックだったな。俺、ほんというとあの時までコタローのこと、ただの可愛い弟としか見ていなかったから。……別人みたいに思えたな。だけど俺は、けっきょくあいつのことをよく見ていなかったんだな」 Y「……なんか、暗くなっちゃいましたね。気を取り直して、ね。帰ってきてから、アラシヤマさんとはどうですか?」 S「……何故……」 Y「だって、シンタローさんのこと、親友だって思い込んで、べったりくっついてたじゃない。シンタローさんだって、満更でもなかったんじゃない?」 S「……(-_-;)。ま、あいつ俺のためによく戦ってくれたよな。前は敵だった俺のために。友達としてなら……認めてやってもいいかな。あ、言っとくけど、あくまでただの友達だからな。ただの」 Y「はいはい。友達から親友へ。やがて二人は……」 S「いらんいらん。そーゆー展開はいらん(-_-;)」 Y「アラシヤマさんは以前よりだいぶ明るくなってきてるんじゃありませんか」 S「ああ。以前よりはな。きっつい所は、相変わらずだけど」 Y「他の三人は何をやってるんですか?」 S「四人とも、俺の補佐だ。あいつら頑張ってくれてるよ。俺が新米ながらも何とかやっていけるのは、あいつらのおかげなんだ」 Y「だいぶ謙虚になられましたね。マジックさんとは違う意味で、シンタローさんもいい総帥になれると思いますよ」 S「ありがとう」 Y「ジャンさんが帰ってきてから、ガンマ団内で新たなプロジェクトが動き出してるようで。確か、『宇宙船ノア』を造るとか、他にもいろいろあるとか」 S「ああ。ジャンの他にグンマやイバラギなどの技術開発部の連中も加わってる。…最初はジャンが言い出したことみたいだけれどな」 Y「不可能だ―――と、考えたことはないですか?」 S「まぁな。最初は俺も反対したよ。だが、ジャンって奴は―――奴とは以前にケチのついたこともあるけれど、精神力だけはタフっつーか、案外強い奴なんだよな。どんな奴であれ、夢に賭けることのできる奴は嫌いじゃない」 Y「キンタローさんも科学者への道を進んでるようですが、技術開発部ではないんですか?」 S「違う。高松の助手やってる。グンマによると、あいつはずいぶん飲み込みが早いそうだが、高松が言うには、生物の分野での方がすごいんだそうだ」 Y「父親に似たんでしょうねぇ」 S「俺も天才の息子に生まれたかったぜ(笑)」 Y「別にリーダーが天才である必要はないでしょう。物事の輪郭を掴み取る能力さえあれば。―――あの後マジックさんはどうなりました?」 S「親父か。周知の通り、今は隠居して、コタローの面倒見てる。あ、言い忘れてたけど、親父とコタロー、今ガンマ団を離れて、あの島にいるんだ。ときどき俺達も行くんだけどな。手紙が来るんだけど、結構楽しんでるみたいだぜ」 Y「ということは、コタローくん、目覚めたんですね。学校に行く予定とかはないんですか?」 S「来年から、行かせる予定なんだ。その頃にはこっちに帰ってくるから、それまで二人で暮らしたいって――お互いに、離れてる時間が長かったもんな」 Y「マジックさんがいなくても、やっていけそうですか?」 S「大丈夫だよ。あいつらがいるし、叔父さん達もいるし」 Y「総帥をやっていく上での悩みなどは、ありませんか?」 S「そうだな…特に悩みは…あ、あの特戦部隊の扱いが厄介かな。―――とりわけ、あの隊長が」 Y「ほほぉ。よく命令に背くとか」 S「いや。任務はそれなりに忠実にこなすし、優秀なんだけど、なんていうか、おれがまだ若いからかもしんねえけど……」 Y「なめられてる」 S「あっちから見りゃ、まだまだ俺が頼りなくうつるみたいだな。ほら、どっか高い所から見下ろしてるみたいな……」 Y「それってホントにハーレムさん? マジックさんじゃなくて?」 S「そう、ハーレム叔父さん。あの島から帰って来てから雰囲気変わったんだ。前よりずっと冷静になって、俺の見えない所も見えるみたいだし――二、三回、叔父さんの助言で助けられたことがあったよ」 Y「特戦部隊が、暗殺集団をやめたガンマ団で、いったいどんな仕事してるんです?」 S「国と国との間の仲裁役みたいなことしてる。必要があれば武器をとって戦う。今、団内で一番血生臭い仕事してる(笑)」 Y「やらせてるの、シンタローさんでしょ(笑)」 S「いや、いつの間にか勝手に動いてることもあるから。俺の所に報告が来た時には、「全てが終わった後でした」なんてこともあったりして」 Y「それで団内に損失をもたらしたことは?」 S「ない。それどころか団の名声を上げてる。そうなるように動いてるみたいだな。火急の際の機動力では、絶対かなわないからな、名声が上がるのはいいが、俺は責任追及できなくて困ってる(笑)」 Y「団に戻ったサービスさんは?」 S「サービス叔父さんの交渉能力はいろんな所で役に立ってるよ。今や本部ではなくてはならない存在だね」 Y「サービスさんて、どこにいるんですか」 S「まあ、いろいろ。サービス叔父さんは専門職と特戦部隊(笑)以外の所であれば、どんな部署の仕事でもこなすんだ。今は――確か情報部にいたと思うけど」 Y「じゃ、最後になりましたけど、これからの抱負なんぞを」 S「ガンマ団の暗殺集団色を廃し、戦いのない平和な世界を目指す――。 なんか、漠然としてるけどな。強く願えば夢は叶うはずだと、俺は信じてるから。 だがこれは、俺達だけの手でなされるものではない。一歩間違うとファシズムになっちまう。 だけど――より良い世界を目指すための助力だったら、いつだって惜しまないぜ。我々は」 Y「最後に素晴らしいお言葉、ありがとうございました。今回は、どうもご苦労様でした」 98・12・31 |