オレ、モデルになります!

家に帰ると姉ちゃんがやってきた。
「遅かったじゃなーい、リョータ」
「ん?ああ、ちょっとね」
「いい知らせよ。書類審査通ったの」
「姉ちゃんさぁ……写真勝手にモデル事務所に送るとかやめてくんない?」
嫌だとは言わないが、一応釘を刺す。まあ、できないとは思わないけど。
「リョータ、アンタ、自分の顔についてどう思う?」
「そっスねぇ……イケメンに生んでくれた親に感謝、かな」
「そうよ!そうなのよ!」
姉ちゃんはびしっとオレを指差した。
「アンタのそのビボーは神様からの賜物なのよ!活用しなきゃバチが当たるわ!アンタの顔は世界の宝よ!アンタは世界のきせりょになるのよ!」
まさかここで神やら世界という言葉が出てくるとは思わなかった。姉ちゃんちょっとオーバーじゃね?
それにしても……。
「姉ちゃん、きせりょって何?」
「アンタのあだ名に決まってるじゃない。黄瀬涼太できせりょ☆」
「はいはい」
何かノリノリだな、姉ちゃん……ステージママならぬ……ステージ姉ちゃん?
「オレなんかよりさぁ……姉ちゃんがモデルになればいいじゃん」
黄瀬家ははっきり言って美男美女揃いだ。
「あたしは忙しいもの。アンタは絶対モデル向きだと思うわ!」
そうだねー、まあねー。
オレ、はっきり言って何でもできるもんね。モデルの仕事だってきっとこなせる。
この顔が活かせる仕事ってやっぱモデルっきゃないって感じかな?女の子からは昔から騒がれてたし、幼稚園の頃からいろんなスカウトが来たし。
「アンタは心配しなくていいわ。信頼のできるとこ探したから」
「……うん」
正直モデルの仕事にも興味が出てきたしね。
「姉ちゃん、オレ、モデルになるよ」
「それでこそリョータよ!一緒に世界をめざしましょうね!」
「いや、世界はいいから……学校あるし」
「そうね。学業と両立できなきゃ、意味ないもんね。幸い帝光は仕事やバイトとかにも寛容だし?ま、アンタの将来にはピッタリじゃない?」
姉ちゃんの頭の中には、既にオレの将来の青写真までできているみたいだった。
オレは運動の方がいいかな、なんて思ってたけど。……大抵のスポーツは見ればできたからなぁ……。
「さ、明日は面接よ。がんばって!」
「……ふぇ~い」
「気の抜けた返事しないの!元気良く『はい!』よ」
「はい!」
姉ちゃんの気迫にオレは押されていた。この姉ちゃんに逆らったらどうなるか知ってるしね。
モデルか……。
モデルってアレでしょ?カメラの前でポーズとっていろんな服着て撮影されるんでしょ?
…………。
想像してみるとやっぱり結構楽しいかもしんない。女の子達にきゃあきゃあ言われるの嫌いじゃないし。
「姉ちゃん、オレ、モデルになったらモデルがんばる!」
「大丈夫!リョータなら絶対モデルになれるわ!一緒に世界目指しましょうね?」
「うん、姉ちゃん」
オレには、自分がモデルとして有名になった姿が見えた気がした。まんまと姉ちゃんに乗せられた気がしないでもないけど……。
そうだね。やるからには世界一目指すとしますか。

黄瀬涼太、帝光中学一年。一流モデル目指しまっす!

後書き
きせりょ三部作そのニ。
黄瀬の姉ちゃんがステージママ……実際は全然違う性格だったりして。何せコミックスに出て来ないもんなぁ……。
いつもより少々短めでしょうか。
2013.8.26

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