日本の休日

 こんにちは。日本でございます。
 今日はトルコさんの家で酒盛りをしました。とても楽しい一日を過ごさせていただきました。
 トルコさんに、再三泊って行くように勧められましたが、それは断って家に向かいました。もう既に空は暗くなっていました。
 だけれど、その途中、ギリシャさんに会ってしまいました。
「日本……今までどこ行ってたの?」
「ギリシャさん、ここで何していたのですか?」
「日本のこと探してた」
「ああ。何か用事でも?」
「会いたかった……日本に、会いたかった……」
「すみません。今日はトルコさんと飲んでいました」
「トルコと?!」
 ギリシャさんの顔色が変わったように思いました。
 と、私の顔は、ギリシャさんの広い胸板に押しつけられました。
 抱き締められたのだと気付いたのは、一瞬後でした。
「日本、日本……トルコと会っちゃイヤだ……」
「そうは言われても……私にも交友関係がありますし」
「イヤだ! 日本は俺の!」
 大柄な体格のくせに、子供っぽいギリシャさんの嫉妬心は、私に微笑を誘いました。
「あ、見て見て! 男同士のカップルよ!」
「さすが歌舞伎町!」
「どっちもかっこいい! 写真撮ろう! 写真! デジカメどこだっけ?」
「携帯でもいいんじゃない」
 女の子達が明るい声を上げながら、このような会話を交わしているのが聴こえました。
「ギリシャさん、逃げましょう!」
 私はギリシャさんに抱擁を解いてもらいました。
「え? どうして?」
 腐女子の餌食になりたくないからでありましたが、ギリシャさんに言ったら、『腐女子って何?』って訊かれそうなので、黙っていました。私にも説明は難しいですからね。
 私達は、手を繋いだまま、人通りの少ないところにたどり着きました。
「日本、ここ、誰もいない……」
「ええ。そうみたいですね」
 本当は数人ほど通行人がいましたが、その人達は、私達に無関心のようです。
「日本。もうトルコに会わない?」
「それはどうだかわかりません。トルコさんも大事な友人ですし」
「日本……」
 ギリシャさんは、一気にしょげた顔をしました。少し可哀想ですね。
「それでは、トルコさんに会いに行く時は、ギリシャさんの許しをもらってからにしますね」
 そう言うと、ギリシャさんの表情はぱあっと明るくなりました。
「本当だよ、日本。約束だよ!」
「ええ……」
 ギリシャさんにこんなに愛されて、私は正直嬉しいです。
「じゃあ、指切りげんまんしましょう」
「ゆ、指切り……?」
「小指と小指を絡めて『指切りげんまん嘘ついたら針千本飲ーます。指切った』と言うのですよ」
「う……うん。わかった」
 ゆーびきーりげーんまーん うそついたらはりせんぼんのーます ゆびきった。
「ねぇ、日本。このあと、何もない?」
「ええ、ありませんよ。ギリシャさんに、何も予定がなければ、の話ですが」
「俺、日本と一緒にいたい」
「……私もです。ギリシャさんと一緒にいたい、です」
 私とギリシャさんは手に手を取って、場末の道を歩いて行きました。
 ギリシャさんの手は、大きくて乾いていて、触っていると心地良いです。すごく頼りがいが持てます。
 私達がその後どうしたかって? ふふふ……秘密です。

後書き
風魔の杏里さんのリクエストで書きました。ギリシャ×日本です。
肝心なところが秘密になっていますが、それは日本の恥じらいと言うことにしておきましょう。ふふふ……。
ああ、そう言えば、ギリシャが可愛いと思いました。
ギリシャと日本がこんなに言葉だけで意思疎通が計れるのかと思うのですが、まぁ、そこはそれ、愛の力と言うことで(笑)。
2009.10.11


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