数えきれない程の祝福を
※18禁です。読みたい方はスクロールしてご覧ください。
「本田さん、お誕生日おめでとうございます」
「ありがとうございます」
「菊~! おめでとう~!」
「ありがとう。フェリシアーノ君」
今日は二月十一日。日本こと本田菊の誕生日。
(あの人は――いるかな?)
いた。今年も来てくれた。心臓が早鐘を打つ。
(ヘラクレスさん……)
頭のてっぺんからぴょっと出た癖っ毛。猫と穏やかさを何よりも愛する青年。――ヘラクレス・カルプシ。
もう何度もあの逞しい体で天国へと昇天させられたかわからない。菊の頬に血が上った。
「やぁ、本田君……」
どこぞの国の偉い人が菊に声をかける。菊は上の空で聞いていた。
(ヘラクレスさん……)
菊が恋人を目で追う。見失った時は冷たい汗が流れたような気がした。
(いた……)
ヘラクレスは飲み物を取っていただけだった。
早くあの体に抱かれたい。
(……て、はしたないですね。私も)
「おう、菊」
「サディクさん!」
ヘラクレスの天敵、サディク・アドナンの登場である。
(困ったな……サディクさんにはいろいろお世話になっているから無碍にはできないし……)
「あんま、飲んでねぇみてぇじゃねぇか」
「そんなこと……ありません」
菊はまたヘラクレスの姿を探す。彼はどこにもいなかった。
ヘラクレスさん――。
菊は泣きそうになった。サディクは菊の顔を覗き込んだ。
「心配しなくても……ヘラクレスの野郎はちゃんといるよ。ほれ」
ヘラクレスは特大のケーキに驚いているようだった。
「――ったく、しゃあねぇなぁ」
ぼりぼりと頭を掻いたサディクが続けた。
「おーい。菊が人に酔ったみてぇだぞー!」
サディクの胴間声はヘラクレスにも聞こえたらしく、すぐに駆けつけてきた。人々がざわざわとし始める。
「大丈夫か、おい……」
「菊……」
「は、いえ……大丈夫です」
「血の気がないですよ。部屋に連れて行った方がいいようですね」
菊の上司が言った。
「すみません……」
「俺、菊についてる……」
「そうですか。それではお願いします。ありがとうございますね。カルプシさん」
菊の上司が手を差し出す。
「――どうも」
ヘラクレスは菊をお姫様抱っこした。抱き上げられた華奢な菊は、まるで可憐な少女のようだった。
「ふー……」
ヘラクレスは布団を敷いて菊を寝せる。
「大丈夫? 菊」
「大丈夫ですよ。サディクさんが騒ぎ過ぎた……だけです」
そう言った時、菊は、はっと気が付いた。
(サディクさん、もしかして私達の為に……)
「菊……ずっといるよ」
「ええ」
ヘラクレスが菊の手を取ってぎゅっと握った。
ヘラクレス・カルプシ。彼はまだ若い。
菊も、たくさんの別れと出会いを体験してきた。中には辛いこともあった。でも、それでもやってこれたのは――。
(枢軸の皆さんや……いろいろな国々、そして、ヘラクレスさんのおかげですね……)
ずっと一緒にいられたらいい……菊はそう願った。
「菊……好きだ」
武骨な指が菊の顔の輪郭をなぞる。
「そんな……そんなことされては……我慢がきかなくなってしまうではないですか」
「菊……菊もそう思うの?」
「私だって人間です。そう思うのが自然でしょう?」
人間でもあり、国でもある。菊やヘラクレスの立場はまことに微妙なものであった。
「菊……俺、菊が欲しい……」
「私も……ヘラクレスさんが……欲しい……です」
菊の台詞の最後の方は情欲で掠れた。
彼らは貪るような接吻をした。ヘラクレスの慣れたキス。彼らは思う存分、互いの口腔内を味わった。
「はっ……」
菊が息を吐いた。
「菊……俺、待てない……」
「いいですよ。ヘラクレスさん。来てください」
ヘラクレスは器用に菊の正装を脱がしにかかる。現れたのは菊の滑らかな白い肌。ヘラクレスも着衣を脱いだ。
「菊……なるべく痛くないようにするから……」
そう言って、ヘラクレスは菊の体内に長い指を埋め込む。
「あっ、あん……」
「感じてる菊……素敵だ……」
菊の先端は白濁で溢れている。
彼の雄と繋がっている箇所をヘラクレスの指が捉え、そこを何度も掠めた。
ヘラクレスが意地悪をしているように、菊には感じた。
待てないと言った癖に……まだ入って来ない。
「ヘラクレスさん、もう……!」
「菊……」
「早く……来てください……頼みますから……」
ヘラクレスは、滾ったものを菊の蕾の入り口に宛がった。そして――力強く貫いた。
「あ――!」
ヘラクレスのものが与えてくれる快感は指の比ではなかった。背中に手を回して抱き着いた。
「ん、んっ!」
ヘラクレスも快楽を追っているようだ。菊は蕾をすぼめて、ヘラクレスを捉えた。
「菊……気持ちがいい……」
ヘラクレスが腰をグラインドさせる。その後、またピストン運動――菊はヘラクレスの若い動きに翻弄されていた。
「ヘラクレスさん……今日は私、まだ一回もヘラクレスさんのこと、好きって言ってませんでしたよね……好きです」
彼の性格が。彼の若さが。そして、彼の存在が。
どうしようもない程、菊を狂わせる。
「菊――!」
ヘラクレスの動きが早くなった。頂点はもう間近い。
――二人は同時に達した。菊の白濁がヘラクレスの腹を汚した。
「す……すみません……」
部屋に備え付けてあったティッシュを取って、菊は自分の放ったものをヘラクレスの腹から拭った。
「……菊、もう一回、する?」
そう言うヘラクレスに対し、菊は照れ隠しに、
「馬鹿……」
と、呟いた。そしてヘラクレスを導いた。
――恋人達に数えきれない程の祝福を。
後書き
菊さん、お誕生日おめでとう! ヘラクレスと仲良くね! サディクが密かにいい人ですね(笑)。
2014.2.11
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