バニーと虎徹のある日の事情

11.いっそエンディング

 虎徹とバニーはステーキでご飯を食し、高級なロゼワインを一本開けた。
 虎徹はロゼを堪能する――最後はバニーに口移しされた。バニーの唾液の味が甘い。
「やっぱりステーキより虎徹さんのチャーハンの方が美味しいですねぇ」
 バニーの感想に虎徹は眉を顰めた。
「嫌味か? それは」
「とんでもない!」
 バニーが手をぶんぶんと振るので、虎徹は苦笑した。
「ま、チャーハンは飽きねぇからな。――また作ってやるよ」
「ほんとですね!」
 バニーは目をきらきらと輝かせた。可愛いな、と虎徹は思った。いい年した男に対して。虎徹のことを可愛いというバニーの気持ちが少し理解できたような気がした。
 また、ちゅ、とキスを交し合い、バニーに促されるまま服を脱いだ。

「うぉ~い、バニー……」
「どうしました? 楽しくありませんか? お馬さんごっこ」
「楽しくねぇよ。……疲れた」
 虎徹はバニーを下の口に含ませたまま、腕を支えにして歩いて(?)いた。
「じゃあ、やめましょうか」
 バニーが案外簡単に譲歩してくれたので、虎徹としては助かった。
「じゃあ、その代わり、窓に手をついてください」
「こうか?」
 虎徹が言う通りにすると、バニーが強引に虎徹の中に押し入った。
「ひっ!」
 でも、痛いだけではなく――虎徹の中心が硬度を増した。
「ば、ばにぃ……」
「いいでしょう。シュテルンビルトと行為しているような気持ちになるでしょう?」
 それは本当だった。
 ここはシュテルンビルトのゴールドメダイユ地区。
 眼下には街の灯り。この中にはどのぐらいの人間が住んでいるのだろう。虎徹は肉体を持った一人の男として、この街とセックスしているような気になった。
 それはくらくらとした蠱惑的な感覚で――シュテルンビルトの街が煽情しているように見える。いかがわしくてトラブルの絶えない街。だが、それだからこそ愛しい街。
(シュテルンビルトの平和は俺が守る!)
 いつもそう言っていたくせに、HEROのくせに……だが、背徳的な快感を覚えない訳にはいかない。
 虎徹は自分が犯しているのか、犯されているのかわからない――後ろにはバニーがいる。
 ――バニーのが質量を増した。
「あん……バニーちゃん……」
「どうしました?」
「バニーちゃんの……おっきぃ……」
「それはどうも。虎徹さんの痴態を見てると、どうしても、ね……」
 そして、バニーはまた虎徹の奥処を突いた。
「ん……」
 虎徹はコンドームの中に欲望を放った。
 シュテルンビルトはそんなことも知らぬげにいつものように存在し続ける。
「あ……はぁ……」
 虎徹は射精後の快感と倦怠感に酔っていた。
「――ベッドへ行きましょう。虎徹さん」
「え? でも、バニーちゃんまだイッてな……」
「もっと可愛がってあげますよ」
 バニーは虎徹を抱き上げてベッドへと連れて行った。
「シュテルンビルトの街とのセックスはどうでした?」
「すげぇ良かった。つか、バニーちゃんもあんなことしてるの?」
「ノーコメントです」
 バニーの笑顔は清らかだが、言っていることは結構卑猥だ。
 バニーが抽送を始めた。虎徹が快感に喘ぐ。
「あ……バニー……バニーちゃん……」
 虎徹もバニーも息を荒げて律動に夢中になった。こりゃ、明日俺の腰痛は必須だな、と虎徹は考える。だが、すぐにそんなことを思ったりする余裕もなくなった。
「虎徹さん、虎徹さん……」
 バニーは若さに任せて虎徹を激しく求めている。虎徹の花芯もそそり立っている。中からは蜜が出ているのがわかる。
 バニーの愛の技術は、確かに成長していた。虎徹と過ごしたこの短期間の間に。虎徹すら敵わない程に――。
 虎徹の快楽中枢に耐えきれない刺激が走る。
「ん、あ――――――っ!!!」
 虎徹が叫んだ。これがオーガズムというやつか。虎徹は女性の気持ちがわかるような気がした。
 セックスで女役をやり始めてから、女としてのセックスの醍醐味を知った。うん。慣れてしまえば女性の方が快感を感じるのかもしれない。
 友恵はどうだったのだろう――。自分の性技は普通とそう変わらなかっただろうからな……だが、深く考えるとどうも面白くない結論に達してしまいそうなのでやめておく。
 バニーも絶頂に達したらしい。重い体がのしかかる。
「はぁ……虎徹さん……いつもより良かったです」
「そうか……」
 オレもバニーちゃんに気持ちよくしてもらったよ――そう言ってバニーの滑らかな頬をするっとなぞった。
「虎徹さん――」
 バニーは鎖骨に唇を寄せて強く吸った。鬱血してキスマークになった。
「バニーちゃん……」
 虎徹は困ったような声を出した。
「痕なんて――つけんなよ」
「どうしてですか? 貴方が僕のものだという証ですよ」
「こんなもんつけなくても……俺はもうバニーちゃんのものだよ」
「虎徹さん!」
 バニーがのしかかったままキスをした。そして言った。
「虎徹さん! 好きです! 虎徹さん!」
「わかってるよ、バニーちゃん」
 気持ちは言葉にしなくては伝わらない。
「俺も……好きだよ。バニーちゃん」
「僕の体が好きなんですか? それとも中身が好きなんですか?」
 バニーは結構大胆だ。虎徹は答えた。
「んなの、選べねぇよ。強いて言うなら――どっちもだ」
「虎徹さん!」
 二人は後戯のキスを交し合う。虎徹は幸せの蜜の中にいた。
(友恵――俺、バニーのことがオマエと同じくらい好きになったよ。そして楓――ああ、楓。俺とバニーちゃんのことは認めてくれなくていい。でも、いつか――ちょっとは理解してくれたら、お父さん嬉しいな)
 かけがえのないものが生まれた瞬間だった。
 バニーが楓に惚れるかもしれない。いや、他の女にバニーを取られるかもしれない。そんな可能性があったとしても、それはその時考えれば良いことだ。
「虎徹さんが女だったら――孕ませることもできるんですがね」
「ん……オマエも女の方がいいか?」
 虎徹は何の苦もなくその台詞を紡ぐことができた。何馬鹿なこと言ってるんですか――バニーは虎徹の胸元にぐりぐりと顔を押し付けた。
「女性も嫌いではありませんが、僕は虎徹さんの方がいいです。それに――」
 バニーは小声で付け加えた。
「虎徹さんは締め付けも良いですしね」
「な……!」
 虎徹は絶句した。バニーはくすくすと笑った。
 こんのエロ兎――おまえこそ俺の体が目的なんじゃねぇか! そう言いたかったが、面倒になって黙っていた。それに――若いバニーに体を褒められるのはおじさんとしては嫌ではない。
 バニーがずり上がってまた虎徹の唇にキスをした後、言った。
「このまましばらくこうしていて良いですか?」
「ああ……」
 ゆるやかな快感の中で虎徹はたゆたっていた。デジタル時計が0:00を示す。虎徹とバニーの長くて短い一日が終わった――。

後書き
やっと終わりました。でも、もっとえりょ描写が上手くなりたいです。
風魔の杏里さんにインスパイアされたところもあります。窓に手をついてやったりとか(笑)。
読んでくださった方々、ありがとうございました!
2013.12.3

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