お礼画面 ~いつかどこかのある場所で~

 殺風景な、石の段に、一人の男が座っていた。
 銀色の長い髪をてっぺんで束ね、残りの髪をそのまま流している。
 男はずっと、そこにいた。
 やがて、足音が聞こえてきた。
 現われたもう一人の男は、そう長くない黒髪――せいぜい、一番長いところが肩を覆うくらいの――で、青い背広に、ネクタイ姿の正装で、鎧姿の銀髪の男とは対照的である。
「来たか……」
 銀髪の男は、呟くように言った。
「よぉ、久し振りだな、アス」
 黒髪の男が言った。
「ああ」
「おまえ、何してたんだ? そんな鎧なんか着込んじゃって。その点、俺は少し貫禄がついたかな」
「いろいろあったからな。なんだ、貴様、また死んだのか?」
「まぁ、そんなところだ」
「まだあいつを探しているのか?」
 アスの言葉に、黒髪の男のこめかみがぴくり、と動いた。
「――まぁな」
「ジャン。貴様まだあの男を追っているのか?」
「――ああ」
「だって……あいつは人間だぞ」
「わかってる」
「不毛の恋だな。相手は人間。しかも男」
「――アス。それは全部正しい。しかし、俺は、命よりもあいつが大切だ」
 アスは、口を閉ざしたままだった。
「――すまない」
「何がだ」
「おまえよりも、大切な存在を作ってしまったこと」
「ああ」
「でも、忘れないでくれ。俺にはおまえが、二番目に大切だ」
「一番は?」
「サービス」
 そう答えて、ジャンは赤くなった。
(面倒見切れん)
 アスは密かに毒づいた。
「じゃ、俺は行くから。マスターの仕事も、結構忙しいんでね」
 ジャンが行ってしまった後、アスは、過去のあれこれを振り返った。
 ジャンに匹敵するほどの存在を、アスは知らない。
「勝手にしろ……」
 アスは、眉根を寄せて、呟いた。

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