俺達はずっと一緒

「ただ今、アセム」
「お帰り!ゼハート!」
ちゅっ。
「何にする?風呂?メシ?」
「まずはおまえを食べたい。アセム」
アセム、ボワッと赤面する。
「でも、俺はもう親父だぜ?子供もいるし……」
「関係ない。おまえがヨイヨイのじいさんになっても愛せる自信が俺にはある!おまえの老後は任せとけ!」
「あ、あのなぁ……」
アセムは呆れている。
「ゼハートは相変わらず綺麗だな。俺の方がおまえを抱きたいよ」
「下剋上か?でも駄目だ」
「何でだよ」
「おまえはずっと俺の可愛い嫁だからだ。まあ、俺に勝ったら考えてやっても良いけどな」
「よーし!ぜってぇ負けねぇからな!キャプテン・アッシュの実力見せてやる!」
「やってみろ!」
そして、しばらくベッドの上で二人はじゃれ合っていた。
しかし、体をキメられて動けなくなったのはアセムの方。
「くそっ、動けねぇ……」
「降参するか?アセム」
「い、いや……こんな恥ずかしい姿、キオには見せらんねぇ……」
「キオも別段おまえに完璧で強い父親像を求めているわけではあるまい」
アセムがふっと力を抜いた。彼の青い瞳は澄んでいる。大人になって面変わりしても、この瞳だけは変わらない。
アセム・アスノ……キャプテン・アッシュと呼ばれるようになっても決して変わらなかった気高い精神のように。
「おまえは本当のことをずばりと突いてくるなあ」
「おまえを愛してるなら、ありのままのおまえを受け入れるよ」
そして耳元で囁いた。
「……俺のようにな」
「あー、わかった。老後は宜しくな」
「ああ。年を追う毎におまえが愛しくなっていくよ」
ゼハートはアセムの額にキスを落とした。そして、どんどんキスする場所を変えて来る。
「おまえを愛してるよ。キャプテン・アッシュ」
アセムはまた顔を赤くした。
「おまえは……狡い」
「何が?」
「今、『キャプテン・アッシュ』って呼ばれたかったんだよな、俺。おまえに」
「何で」
「……訳なんか、あるもんか……」
アセムが拗ねたようにそっぽを向く。
「でも、おまえは俺に『キャプテン・アッシュ』って呼ばれたかったんだよな」
「う……うん、まあな」
「なら、それが正解なんだろう」
「そうだな、俺、大人になった俺の姿をおまえに見せたかったんだ……」
「おまえはいい男に育ったぞ、アセム」
「……やっぱり、おまえにはアセムと呼んでもらいたいな、俺。昔に戻ってさ」
アセムはにこっと微笑んだ。
ゼハートも笑ってこう言った。
「可愛いな、不意打ちだぞ。そんな顔」
「こんな親父の顔がか?」
「言ったろ。おまえの存在自体が……俺を誘惑する」
ゼハートはアセムの口内にするりと舌を滑らせた。お互いにお互いの口腔を時間をかけて味わう。
アセムは、ぐいっとゼハートの頭を掴んで離した。
「そういやさ、おまえ、俺といる時、おまえも『俺』って言うよな。普段はスカして『私』なんて言うくせによ」
「そうだったか?」
「ああ」
「きっと、それが自然になっているんだろう」
ゼハートは何となく心が和むのを感じた。アセムが言った。
「卑怯だぞ、そんな顔」
「どうして」
「おまえみたいな綺麗な顔の奴にそんな風に笑われると……ぐちゃぐちゃに泣かせてみたくなる」
「できるもんならな」
「畜生。大人になればゼハート、おまえを抱くことだって簡単にできると思ってたのに」
「おまえ……そんな目で俺を見てたのか?初めて俺に抱かれた時から、ずっと……?」
これには少なからずゼハートも驚いた。
「当たり前だ。俺だって男だ」
あんな少女めいた顔の十代の頃から、己を抱いてみたいという密かな欲望を抱いていたかと思うと……。
「わかった、今回はおまえが上になっていい」
「ほんとか?!」
「ただし、騎乗位だ」
「…………」
アセムは黙り込んでしまった。
二人きりの夜はまだ訪れたばかりだ。ふと外を見ると白い月が笑ったようだった。

後書き
まさかゼハアセ書く日が来るとは思いませんでした。短編ですが。
それにしてもこれ以上ジャンル増やしてどうすんだ、私……。
ここで発表するにあたって、加筆しました。
2012.8.21


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