黒子クンもローカルサイトを始めたようです

「んでさ、んでさ、今ローカルサイトが超熱いんだよ」
 ギャハハハと笑いながら高尾君が携帯で話します。ちなみにボクはまだガラケーです。
「そんなに面白いんですか?」
「そうそう。真ちゃんなんかも超ハマっててさー。ゲームなんか作っちゃったりしてんの。おっもしろいんだぜー」
 へぇ……あの緑間君がねぇ……。ちょっと想像つかないんですけど……。
 高尾君との電話が終わった後、ボクは自慢の愛機の前に座りました。
 パソコンもあるし……やってみようかな。

「火神君!」
 ボクはチームメイトで相棒の火神君の前に回りました。
「――何だよ。黒子」
「今日、ボクの家に来ませんか? 部活が終わったら」
「来ませんかって……前に狭いからダメだって言ってたじゃねぇか」
「前言撤回します。見せたいものがあるんです」
「でも……急に家に来いなんて、どういうことだよ」
「やぁん。黒子君に火神君てもしかしたらあの関係?」
 女子の一人、倉本さんが言いました。連鎖反応で他の子達もきゃあきゃあ言ってます。
「怪しいと思ってたんだよね。火黒。黒火でもいいけど」
 何だかよくわからないけど――
「勘違いしないでください。ボクは自分で作ったローカルサイトを見せたいだけです」
「それ、ほんとは口実でさ――」
「黒子君もやるー!」
 なに話広げてるんですか! 今時の女の子の思考回路はわかりませんね。
 そりゃあ、ボクも火神君とそういう関係になれればいいと思っていますが――。
「ん?」
 火神君が首を傾げています。
 ダメです。火神君が天使過ぎて直視できません……! ボクのライフはもうゼロです……!
 ウソですすみません。火神君のおかげで勇気りんりん、体力百倍です!
「とにかく、来てください。宿題持って」
「宿題?」
「宿題終わってから見せますから」
「お……おう……」
 宿題――火神君がそう呟いて魂を飛ばしてました。勉強嫌いですからねぇ、火神君。英語ですら50点以上取れないなんて、帰国子女としてどうなんでしょう……。
 まぁいいです。わからないところはきっちり教えてあげましょう。

 今日の部活はいつもより楽しかったです。バスケ部はいろんな人がいていつも楽しいですが。
 でも、今日は他にもお楽しみがあります。火神君がボクの家に来るんです。一応お掃除しておいてよかったです。
 家は確かに狭いし、独り暮らしとはいえ豪華な家に住んでいる火神君を招ぶにはお粗末なところですが――。
 そうそう、お母さんにも連絡しておきました。お母さんも、ボクの友達が来るというので喜んでいました。
「何なら、泊まってもらってもいいのよ」
 と言ってましたが、それだとボクの理性が持ちそうにありません。
 ――そして外もすっかり薄暗くなり、ボクと火神君は一緒に学校を出ました。
 話を聞いて何かを勘違いしたらしいカントクに、
「がんばってね☆」
 と声をかけられましたが、何をがんばれというのでしょう……。
「ここがボクの家です」
 ボクの家はアパートです。
「このアパート――いつも通りかかってたけど、黒子が住んでるとは知らなかったな」
「まぁ……古い建物ですから。火神君がちょっと羨ましいです」
「一人で寂しい時もあるけどな。そういう時はバスケの試合観てモチベーション上げてる」
 流石はボクの火神君です。根っからのバスケ馬鹿ですね。――褒めてるんですよ。
 取り敢えずボクの母に紹介しましょう。
「お邪魔しまーす」
 むっ。火神君、玄関のドアの高さぎりぎりですね。これだから今まで招びたくはなかったんです。その身長、バスケをやる上で少し分けて欲しいですね。でも、ボクは影だから――。
「あら、テツヤ? そっちの人が火神君ね」
「ど……どうも」
 火神君が頭を掻いています。可愛い。
「テツヤの母です。初めまして」
「は……初めまして」
「お母さん、ボク達は宿題があるのでこれで」
「今日のご飯はロールキャベツよ。後で食べに来なさいね」
「わかった」

 ボク達は宿題を何とか終えました。火神君が手こずりましてね。
「なぁ、黒子。この文章問題どうやって解くんだ?」
 それは今日やった数式で解くんですがね……一時が万事この調子でなかなか捗らなかったんです。やはり泊まってもらうことも考えましたが、それだとボクが自制できるかどうか……。
「あー、終わったぁ! んで、黒子。ローカルサイトとやらを見せたいんだって?」
「はい。高尾君からいろいろ教わりました」
「あのキツネ目か。仲いいのか?」
「ええ。時々電話で情報交換します。緑間君のことも。緑間君もローカルサイト作っているようです」
「へぇー……」
 火神君、興味なさそうですね。
 ボクはパソコンのスイッチを入れました。起動音が鳴って、ぱっとディスプレイの灯りが点きます。
「黒子、パソコンやれるなんてすげぇな」
 火神君に褒められるとくすぐったいです。
「火神君もできるでしょ?」
「必要最低限程度にはな」
「ほら、これがボクのサイトです」
 そこには、『黒子テツヤのホームページ』の文字が。
「お前――サイトの名前まで普通だな……」
 呆れているのか馬鹿にされてるのかわかりませんが、とにかく先、進みましょう。
 そこには部員達の写真の数々が――。
「へぇ……すげぇじゃねぇの。いつ撮ったんだ?」
「行事の時とかですね。後、暇な時に」
 本当は火神君の隠し撮り写真もあるのですが、彼には秘密にしておきましょう。
「ほら、2号です」
 画面には、誠凛高校バスケ部のユニフォームを着た犬の姿が。
「うっ」
「やっぱり犬は苦手ですか?まだ」
「いや……2号は平気になったんだけどよぉ……お前と同じ目をしているからかな」
「ボクと同じ目、ですか?」
「ああ」
「でも、ボクは犬じゃありませんよ」
「わかってる。こっち向け。黒子」
 ボクが火神君の方を向くと、火神君はボクの顎に手をかけました。これは……もしかするとそういうフラグなんでしょうか。
 ドキドキドキドキ……。火神君の唇との差が少しずつ縮まります。何度経験しても慣れないものなのでしょうね。こういうのは。
 ボク達の唇がくっつきそうになった時――ノックと共に母の声がしました。
「テツヤー。いつまで勉強してるのー」
 ……もう、お母さんたら。いいところで邪魔しないでくださいよ。やる気を削がれたらしい火神君は、行こっか、と呟いてボクの部屋を出ました。
 ――ロールキャベツは美味しかったですが……やっぱり勿体なかったですね……。夜遅く、火神君は一人で帰って行きました。

後書き
黒子クン、惜しかったですね(笑)。
ロールキャベツ、私も食べたいです。黒子クンの秘蔵の隠し撮り映像も見たいです(笑)。
2015.8.12

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