ドアを開けると赤司様がいました 99

「赤司ぃ……オレの、自分でやるから……オレのも弄っていい?」
「ダメ。オレもオマエを楽しませたい。……69でもしようか……」
「シックスティ……ナイン?」
 意味がわからなくて、オレは赤司に訊き返す。
「キミがオレのを舐めて、オレがキミのを舐めるんだ」
「えっ、どうやって……」
「察しが悪いなキミは……でも、この間まで童貞だったみたいだから仕方ないか……いや、今でも童貞か? 処女はオレが奪ってやったけどね」
 そして、赤司は無駄にドヤ顔をする。何だよぉ、童貞、童貞って……。オレだって結構モテたの、赤司だって知ってるだろ。――オレなんかに惚れて、物好きだとオレ自身も思ったけどね……。
「ほら、こうするんだよ。寝てごらん。光樹……」
 オレは赤司の言う通りに寝転がった。赤司のモノがオレの眼前に現れる。わっ! やっぱり赤司のはでけぇや……。
「こうやって、互いのモノを舐め合うんだ。そら」
 赤司の舌の感触がオレのモノを通って頭脳に伝わる。ううっ、またイキそう……。いろんなこと知ってるな。赤司のヤツ……。
 オレも、赤司の真似をして赤司のモノに舌を這わせる。……赤司程上手くはないけど。赤司の匂やかな液体が垂れて来る。オレはそれを口で受け取める。気のせいか、さっきより美味しいかもしれない。
「光樹……やっぱりキミは最高だよ……」
 そんな……赤司こそ最高じゃん。
 オレはそう言おうと思ったが、理性が邪魔して言えなかった。オレのヘタレ……。でも、その分赤司が言ってくれるからいっか。
 ――待て待て。そう言う考えが間違っていると思うぞ、オレ。愛してるなら愛してるって、気持ちいいなら気持ちいいって、ちゃんと口に出して伝えなきゃ。
「気持ち、いいよ……赤司……こんなの……初めて……」
「そうか。キミのいろんな初めて、オレが奪っちゃったね。気持ちいいって言ってくれてありがとう」
「赤司……ん……」
 オレなんかに礼なんか言わなくたっていいのに……。なけなしの理性も吹っ飛びそうだ。赤司の顔が見えないのは残念だけど、立派な堂々とした赤司のモノが目の前にあるから……。何度見ても威風堂々としてら。
 オレもまた、赤司のモノを口に咥えた。赤司の精を絞り出したくて、オレは赤司のモノに吸いついた。
「うっ……」
 あれ? 痛かったかな……。……けれど、赤司はさっきの続きをやり出す。
 ああ、また出そう……赤司のも限界みたいだ。赤司のが膨れる。それを合図に、オレは力いっぱい吸い込んだ。
「光樹……!」
「くぅっ……!」
 オレと赤司は殆ど同時に――果てた。
「あ、あかひぃ……」
 オレは、赤司から流れ出て来る極上の液体を懸命に飲み込もうとする。でも、きりがないように思えた。赤司の精液は結構濃厚な味がする。青い匂いはあるが、不快な味ではない。それどころか――美味しい。
「ふぅっ……」
 赤司は一先ず満足したらしい。いや、また硬くなってるよ。オレもひとのことは言えないけどな。
「後から後から出て来るね。キミのは……」
「赤司だって……」
 赤司がふふっと笑った。そして、オレの隣に寝転んだ。
「あのね、オレが昔少しだけ交際していた女がね、『あなたみたいな性欲の権化には付き合いきれないわ』と言ってたっけ……それを思い出してね。ああ、そんなことをオレが言ったからって、気にするんじゃないよ。もう過ぎてしまったことさ」
「そう……」
 でも、オレはちょっと妬いてしまった。その女性に。見てるこっちが呆れる程、赤司がモテるのは知っていたけど……。
「……だから、焼きもち焼かないでくれるかな。光樹……」
「赤司と付き合ってたんだから、さぞかしいい女だったんだろうね」
「過去のことだって――まぁ、そう悪い女ではなかった。光樹とは比べ物にならないけどね」
 ――もしかして、赤司がオレと別れて、彼女が出来た時、「光樹はキミなんかとは比べ物にならない」と言ったら……。
 そんなの、やだ。オレのことは、いつでも「最高の恋人だった」と言って欲しい……。そんで、オレのことをいつまでも褒めていて欲しい。彼女がオレに妬くくらいに――なんて、傲慢過ぎるかな。オレ。ははっ。
 オレは、赤司に惚れてもらっただけでも幸運な男だと思うのに。勿論、オレも赤司のことは「最高の恋人だった」と言うよ。
 そりゃ、オレだって、キャンパスのマドンナとかと付き合ったことはあるけどさ――。あの時の赤司は普通じゃなかった。いきなりキスしたし。その他にも変だったこと沢山――。
 今だったら、そんなにおかしいとは思わないけれど――。
「今のオレにはキミしかいないんだから、浮気したら許さないよ」
「わかってるよ。オレも、同じ気持ちだもん」
「もう一回やるかい?」
「69を? でも、オレ、赤司の顔が見えた方がいい……」
 そりゃ、赤司のペニスを観察するのも悪くないけど。でかいくせに色艶綺麗でさ……。きっと、かなり使い込んでる。それなのに、何であんなに綺麗なんだろう。
 突然、赤司がぎゅっとオレを抱き締めた。苦しいよ、赤司。――どの辺がツボったんだろう……。
「光樹! なんて可愛いんだ! キミは!」
 オレ自身はオレのこと可愛いとは思えないけどね……。赤司は有り余る性欲をバスケに昇華していたんだろうか。そりゃ強いはずだわ……。
「さてと、ちょっと待っててね」
 ――赤司は何かを口に含んでいるようだ。赤司はオレの口をこじ開けると、己の口から何か甘い物を舌ごと差し入れる。……チョコレートだ。旨い……。オレが蕩かそうとすると、赤司が舌を絡めて来る。オレは互いの唾液とチョコレートの味を楽しむ。食べ終わった後、オレは赤司に礼を言った。
「ありがとう。赤司」
「オレが買って来たチョコだよ。ラ・メゾン・デュ・ショコラだ」
「ラ・メゾン……?」
 一回では覚えきれないような名前だ。
「いつもいつもゴディバと言うのも、縁がないかと思ってね……」
「赤司……オレはゴディバでも良かったんだけど……」
 そう言ってから、しまった!――と思った。赤司がまたゴディバのチョコを買って来たらどうしよう……。それ自体は嬉しいことなんだけど、赤司の負担にならなきゃいいな……。
 どうも、赤司はオレの世話をしきりに焼きたがる人だから――。
「もう一個、いるかい? チョコと――オレのキスを」
「……いいの?」
「おいおい。元はオレがキミの為に買って来たチョコだよ」
「じゃあ、遠慮せずに……いただきます」
 オレ達はまたチョコ入りの深いキスを味わった。ああ……とても甘いよ、赤司……。オレは、アンタへの恋に酔っぱらってしまいそうだ……。
「――随分セクシーな表情をするじゃないか……。オレ、今すぐにでもキミの中に入りたいよ。――でも、今日は挿入はしないって決めたからな……」
 なんだ。変なところで律儀だな。赤司は。
 オレだったら構わないのに――。
 そう思って、オレは愕然とした。――何だよ。オレ……こんなキャラじゃなかったはずだろ? それに、挿入なんて……絶対にしたくないと思ってたのに……。
 心も赤司への熱でどろどろに溶かされているのかな……。思考回路もいやらしくなって来たように思うよ。
「チョコレート、まだいるかい?」
「――もういい」
 本当はもっと欲しかったけど、頭のヒューズが飛んでしまいそうで――。
「まだチョコがこびりついているところがあるね」
 赤司はオレの上半身のチョコを丹念に舐め取る。くすぐったくて、思わず笑った。赤司がそれを「可愛い」と言ってくれた。
「オレ、歯磨いて来るよ」
 オレは言った。チョコの食べ過ぎで虫歯になったら、笑うに笑えない。
「キミの歯はオレが磨いてあげようか?」
 赤司が言う。チョコレート・プレイの後には歯磨きプレイなんて、新し……いや、何を考えてんだ。オレは。でも、小さい頃、母ちゃんに歯を磨いてもらってそれがくすぐったいけど気持ち良かったことは覚えている。
 でも――。
「歯ぐらい自分で磨けるよ。じゃあね」
「そうか……」
 赤司は案外簡単に諦めてくれた。だが、
「じゃあ、光樹への歯磨きは、また今度にするか――」
 と、不吉な言葉を呟くのも忘れなかった。

 オレは、歯を隅々までぴかぴかに磨いた。だってこれから赤司がいつキスして来るかわからないじゃないか。
 ――そして、それを待っているオレがいる。
 父ちゃん、母ちゃん、ごめん。オレはゲイになってしまいました……。だけど、こんな言葉もあるよね。
『オレは男が好きなんじゃない。好きになったのが男なだけだ』
 ――うん。それって、今のオレにはよくわかる。オレにとっては、好きになったのが赤司征十郎なだけだ。
 恋は理屈じゃない。赤司だって……オレのこと、好き、なんじゃないかな……。いっつもアプローチして来るし。赤司は意外と真面目なところがあるので、冗談や遊びでオレに構っているとは思えない。
 そんなに好きじゃなかったら、リリィみたいな女のようにオレのこと、扱うんじゃないかな……。
 シャワー、浴びた方がいいかな……。体の熱を鎮める為にも。赤司もチョコやらオレの精液で結構汚れただろう。オレの方はいくら赤司の精にまみれても、汚れたなんて思わないけど。
「赤司ー、シャワー浴びる?」
 赤司からは、「キミと一緒でいいんなら」との答えが返って来た。でも、うちの風呂場は、二人だと結構窮屈じゃないかな……。

後書き
チョコレート美味しそう……いいなぁ。
赤司様と降旗クンはこれからもお互いを思いやっていって欲しいです。
これはpixivの再録ですが、本編の方では大変なことが起きています。でも、ここではまだナイショ☆
2019.12.26

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