ドアを開けると赤司様がいました 91

「ちょっと冷めたかな……」
 赤司がそんなことを呟きながら、指を出し入れする。オレは、それどころではない。でも……。
「大丈夫だよ、赤司」
 と、一応、言ってやる。赤司がくすっと笑う。
「『征十郎』から『赤司』に戻ったか……」
 でも、一転して不敵な笑みに変わる。
「――そう言うのも嫌いじゃないね。……ここかな?」
「あ……!」
 オレの萎えたモノがまた勃ち上がる。何? この感触。赤司……何かした? オレは首を傾げた。赤司がまた笑う。「そうか……ここが光樹のいいところか……」と、そんなことを囁いて。
「もう少し我慢してくれるかい? オレも、今すぐ挿れたいとこなんだけど……」
 オレはこくこくと頷いた。気持ち良くて、でも、圧迫感や排泄感もあって……。オレは、その変わった感じを訴えようとした。
「赤司、指が、変な感じ……尻が……」
「そうか……なかなか本などのように上手くはいかないもんだな……」
「え? 赤司、充分上手いけど……悪いのはオレの方であって……」
「キミはちっとも悪くないよ……それどころか……なかなか具合が良さそうだ……」
「具合って……あっ……!」
 オレは悲鳴を上げる。今度は快感の方が勝っていた。
「赤司……気持ちいいよ……」
「そうかい……もう少し待っててね。キミを傷つけたくないから――」
 キミを傷つけたくない――……そうか、本当の赤司はそんな性格だったのか……。でも、もう一人の赤司は間違いなくSだよな。オレだって、BL小説読んだんだ。一作だけだけど。
 その話に感動した反面、恐れてもいた。いつか、赤司とオレもそうなるのかと思うと――。
 だけど今は、もう怖くない。
「赤司、来て……」
「そんな顔されると――辛抱出来なくなってくるじゃないか。でも、もう少し待っていてくれ給え」
「――ひゃっ!」
 また、赤司が指を出し入れする。不快な感覚が快感に変わる。赤司の指が出て行く時、オレは物足りない気分になった。――赤司が舌なめずりをした。
「指でここまで感じるなんて……初めてなのに……これは期待出来るね……」
「あ、赤司だって……男は初めてなんだろう?」
 オレもちょっと抗ってみる。でも、赤司にしてみれば面白く思うだけなんだろうな……。オレが考えた通り、赤司が悦びを覚えたように笑った。
「確かに男は初めてだけど……経験自体はあるからね。キミのような色っぽい表情をしてくれる相手は初めてだよ。普段は初心なくせしてね。ますますキミを征服したくなったよ。でも、やっぱり傷つけるようなことはしたくないから……」
 赤司はちゅっとオレの首筋にキスをした。
「そろそろかな――」
 赤司はティッシュで指についたローションを拭った後、器用に己自身にコンドームをつけた。本当に、赤司は器用だ。両手利きかと思うくらい。それに、あのボールを巧みに捌く指先が、今までオレの中に――。
「ああっ!」
 オレは思わず出しそうになった。でも、ここでイっては赤司を絶望させるだけ――。
「いいかい? 行くよ」
 来い、赤司――オレは、心の中でそう呟いた。
 ――指とは比較にならない質量を感じた。
「あ……あん……」
 痛くはないけど……辛い。オレの穴が赤司のモノをぎちぎちと締め付ける――ような気がしてる。
「くっ……! キミは、名器だね……!」
 赤司にも満足してもらえたらしい。よっしゃ!
「女なら何人か相手をしたことはあるけれど、こんなのは初めてだ……オレが男の方に向いているのか、キミが良過ぎるのか……それとも、その両方かもしれないね――」
 お褒めにあずかりありがとうございいます、赤司様――。
 でも、オレは密かに赤司の相手になった女達にジェラシーを感じた。赤司もそうだったのだろうか。オレがキャンパスのマドンナと付き合っていた頃――。
 まぁ、彼女とはキス止まりだったし、オレが誘えば、彼女もついて来てくれたかもしれないけど――。
 もしかしたら、あの頃からオレも赤司が好きだったのかもしれないね。
「もう少し、じっとしてていいかい? キミを焦らしているようで悪いけど――キミを味わいたい」
「ああ……」
 オレも、赤司を味わいたい。赤司はオレで感じてくれているんだろうか……オレは凄い感じてるけど。――やがて、オレの内部が蠢き出す。
「ああ……いい感じだ……動くよ」
 ズ……ズズ……。
 赤司がゆっくり腰を前後させる。俺もつられて腰を振る。――気持ちいい……。
「あ、赤司ぃ……」
「そんな顔、オレ以外の人には絶対に見せるんじゃないよ……ああ、いい……光樹の腰を痛めないように気を付けなきゃね」
 そしてまた、赤司は今度はもう少し早く腰を動かす。ん、んん……。あ、涎が……。オレが舐めとろうとするより先に、赤司が舐めとった。動きを止めた赤司は、オレに濃厚なディープキスをする。
 ――何か変な味なのは、俺の精液のせいだろう。
「ん、ん……」
 ピチャ、ピチャ、と水音がしてくるような気がする。赤司とオレがキスを交わしている音だ。
 オレのモノはさぞかし喜びの涙を流していることだろう。
 赤司のモノは大きくなってるのに、あまり痛くない。そりゃ、ちょっとした違和感は感じるけど、快感の方が大きい。
 赤司が上手いのか、体の相性がいいのか――。男と体の相性が良くっても仕様がないけど、赤司だったらいいと思える。日常生活での相性も良かった。
 これはもう、オレは赤司から離れられないんだろうな……。
「光樹、光樹……」
 オレは力強く抱き締められる。うっ、またいいところに当たる……。
「光樹。オマエはオレのものだよ。もう離さないよ。――嫌かい?」
「ううん、ううん。そんなことないよ、赤司……」
 それは本当だった。オレが赤司と離れられないように、赤司もまた、オレと離れられないのだろう。オレと赤司とは、もしかしたら番の相手かもしれない。
「オレ、もう二度と浮気はしないからさ――こんなオレだけど、これからも付き合ってください」
 オレは冗談口調でそう言った。赤司はオレに向かってにっこりと笑いかけた。
「それは、オレの台詞だよ……光樹……」
 赤司の質量が増したような気がした。赤司が動き出す。俺もそれにのる。
 長い時間が経ったか、それとも、案外短かったのかわからないけれど、オレは忘我の境地にいた。その間、赤司は巧妙なキスで攻めて来る。その度に、オレはぴくっと反応してしまう。
「赤司、赤司……」
 赤司はオレの譫言に、言葉では答えずに動作で答えた。――オレばっかり余裕がないなんて、悔しい。
 オレの内部が赤司をぎゅうっと締め付けているのがわかる。ずるり、と赤司のモノが出る度に、赤司を求めて内部が蠢く。奇妙な感覚だけど……もっと欲しい。――すると赤司は、今度はオレの体を力いっぱい貫く。
「は、はぁん……」
 またイキそうになる。全く……オレもメスみたいな体しやがって……。
「素晴らしい。最高だよ。光樹……」
 いや、それはオレのセリフで……。赤司に抱かれているというか、抱いてもらってるって感じ?
「本当に、キミは名器さ……他の男には……女にだって渡したくない。ああ、光樹、愛してる……」
「ん、オレも……」
 赤司はまた動きを止めて、露わになったオレの額に、軽くキスをした。
「この髪がね……綺麗なんだよね……」
 赤司がオレの髪をさらさらと梳く。今日は念入りにシャンプーリンスしたからな……オレ、思考回路が女になってるような感じだ。けれど、いつか、赤司のことを抱きたい。オレにだって、オスの部分があるのだ。例え性格はチワワに似ていても。
 でも、今はこの快楽に没頭したい。オレは、赤司の与える快楽に夢中になっていた。――体が快楽に貪欲になって、それを追っていた。
 こうしてオレは、赤司に飼われるようになるんだろうか。でも、何だろう……それがイヤじゃないなんて。
 ああ、オレは男さ。男としての機能も考えもちゃんとある。赤司はそれを大事にしてくれる。でも――。
「赤司……オレ、アンタのことも抱きたくなって来たよ」
 腰を蠢かしていた赤司がオレの唇に長い人差し指を当てる。オレの中に入っていた指ではないだろうな……。
「光樹。――それはまた後でね……今は、イキたくないかい?」
 赤司の言葉にオレはこくんと頷いた。
「……オレも、そろそろ限界なんだ。一緒にイこうじゃないか」
 赤司がオレの中でまた大きくなる。動きも早くなる。
「ああん、赤司、赤司……」
「光樹、光樹……」
 赤司がぎりぎりの範囲まで腰を引いて、今度は一転して力いっぱい奥へと――オレは衝撃で考える能力を奪われた。
「――ああっ!」
 オレが悲鳴を上げてイってしまったすぐ後で、コンドーム越しの赤司の熱を感じた。オレは、何度も何度も吐精した。びくん、びくんと体が痙攣する。――オレ達は、二人とも汗みずくになっていた。ヤッている最中は気づかなかった。
 ……堕ちる寸前にオレが見たのは、赤司の満ち足りた顔だった。

後書き
ついに結ばれた赤司と降旗。
降旗クンも赤司様も、満足出来たようですねぇ。
2019.11.22

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