ドアを開けると赤司様がいました 90

「光樹……」
 バスローブ姿の赤司が待っていた。電灯が煌々とついている。ムードを出す為に間接照明を買った方が良かったかと思った。いつもの赤司がそこにいた。
「こっちに来い……」
 赤司はオレの頭に顔を埋めた。オレは髪もドライヤーで丁寧に乾かしたのだ。
「ああ、光樹の匂いだ……」
 それを言うなら、オレだって赤司の匂いに感じている。赤司の匂いは、いつもより濃いかもしれない。オレは、つい欲情してしまうのを感じた。でも、オレは、抱かれる方なんだよな。思わず勘違いするところだった。赤司の声があんまり艶っぽいから……。
 赤司はオレの股間を触った。
「勃ってるのかい? ……嬉しい」
「だって、オレは抱かれる方だぜ……オレが勃ったって、仕方ないじゃないか」
「オレは、オマエにも感じて欲しいんだよ。――光樹。バスローブなんか脱いでしまえ。……オレも脱ぐから。……ここは暑いな。まだ冬の最中なのに」
 赤司のは艶があって、形が良くて、かっこよかった。オレのなんか……確かに一応剥けてはいるけど、貧弱で恥ずかしい……。
「光樹……キミのはやっぱり可愛いね……うん、想像よりずっといい」
 やっぱり想像してたんかい。――赤司は天帝の眼で、オレの裸なんか見飽きてると思ったのに……オレがそう言うと、赤司が、恥ずかしそうに白状した。
「光樹の裸は……見ないようにしてたんだ。いつか、この目で見るまで……」
「ふぅん……」
「それに、天帝の眼はそんな目的の為にあるんじゃない。だから、試合以外では大抵の場合封じるようにしてたんだ……今思うと、見え過ぎるのが怖かったのかもしれない。尤も、勝手に発動することもあるけどもう一人のオレの意志も働いているのかな」
 見え過ぎるのが怖い。赤司にも怖いことってあるんだ……。見え過ぎるって言うのも、考え物かもしれない。――でも、嬉しいのはもう一人の赤司の意志も健在らしいということだ。
「こっちの光樹にはちょっと待っててもらうね」
 赤司の手がオレのモノに触れた。赤司が――あの赤司征十郎がオレのモノを咥えるか、手で包むか……何かしてくれると言うのか? オレの期待に応えて、オレのモノは昂った。――洗っといて良かった。
「やぁ、すごいじゃないか、光樹……素直な息子だね。後でオレの手で幸せにおなり」
 そして、今度は一転して優しいキス。舌がゆっくり、ゆっくりと入って行く。慣れたオレも舌を絡ませる。
「ん……んん……」
 こんな感じでいいんだろうか。……どうもくすぐったくて、慣れない。くすぐったくて、こそばゆくて――でも、慣れた頃には快感めいたものも起こるようになっていた。
 ――赤司が頭を撫でた。ふわふわした手を感じて、オレは笑いそうになった。いけね。赤司の舌を噛むところだった。けれど、その時には赤司の舌はするりと出て行った。
「やっぱりチワワみたいだね。キミは……随分キスが上手じゃないか。誰から教わったんだい?」
 それは、赤司大先生からです!
 ――オレはそう言いたかったが、ますます相手を調子づかせることを知っていたので黙っていた。オレにだって男のプライドというものがあるのだ。昔はともかく、今になってまで、オレのこと、チワ、チワワって……。
 ……確かに、後輩の夜木からもチワワって言われたけど。オレのことが月バスにちょこっと載った時も、『見た目はチワワ』って書かれたもんなぁ……。その後、『でも、実際は……?』と続くんだけど。
「だんまりかい。まぁいいや。――キミにもプライバシーと言うものがあるからね。それより、オレは昔から憧れてたことがあったんだ」
 赤司がうきうきしている。なんかイヤな予感がした。
「……何だよ」
 赤司はオレの耳元で囁いた。
「キスマーク、つけさせてくれ」
 そして、オレの耳にふっと吐息を吹き付けた。……オレが耳弱いこと知ってて。
 それが赤司という男だよ。弱点をわざと攻撃してくるんだ。思わず、「あ……」と声が出ちゃったじゃないか!
「いい声だね。もっとその声を聴かせてくれ――と、それはオレの腕にかかっているか」
 何でもいいから早くしろ。オレが開き直ると、赤司は首筋に吸い付いた。
「痛っ!」
 赤司が強く吸い上げたので、オレはついまた声を上げてしまった。今度は不快だからだ。
「――ごめんね、光樹。でも、綺麗にキスマークがついたよ。ほら、これで見てごらん」
 赤司は手鏡を渡してくれた。いつ持って来たんだ、こんなもん。
 確かにキスマークは綺麗だった。でも――。
「これじゃ、見えちゃうじゃないか! 赤司のバ……!」
 馬鹿! ――そう言おうとして、オレは息を飲んだ。赤司の赤い両目がぎらぎら光っている。オッドアイの時の赤司と同じくらい――いや、それよりもっと怖いかもしれない。
「これで、光樹はオレの物、という印がついたんだよ。見たけりゃ見ろ――と、見せて歩けばいいじゃないか」
 ……なるほどな。一理ある。でも、子供っぽい独占欲のようにも思える。赤司は、一ヶ月……いや、一ヶ月半はオレより遅く生まれたんだから、その独占欲も可愛いものだと流せばいいのかもしれない。
 けれど、オレにそんな余裕などない。ほんの少し早く生まれてようがどうであろうとだ。あの黒子だって、本当はオレより年下なんだ!
 まぁ、理由なき反抗として、キスマークが消えるまでとっくりのセーターを着ていよう。
 赤司がちゅっちゅっと上半身にキスを贈る。――くすぐったい。それに、体の中の熱が呼び覚まされる。
「ここも可愛がってあげなくちゃね」
 赤司の指が乳首に触れる。――乳首を触られるのがこんなに気持ちいいなんて知らなかった。
「光樹……キミの乳首は綺麗だね……」
 何言ってんだよ、赤司のヤツ……男の乳首なんて、何の役にも立たないじゃねぇか。綺麗であろうとそうでなかろうと――何の意味もない。だが、赤司は気に入ったらしく、何度もそこを攻めてくる。
「うひゃあっ……」
 冷たい赤司の指。オレはちっとも寒くないけれど――それどころか熱いくらいだけど……赤司は寒くないのだろうか。素裸で――。
「赤司、寒くない?」
「え? ちっとも寒くないよ。キミの体に夢中で――」
 そのセリフ、言ってて恥ずかしくないか? ――オレはふわっと赤司にバスローブを被せる。
「光樹……?」
「いや、その……赤司の指があんまり冷たいから……冷えてるんじゃないかと思って。赤司、冷え性なの?」
「冷え性かどうかは自覚したことなかったんだけど……光樹、ありがとう」
 赤司がオレの乳首に舌を這わせる。オレは、快感を覚え始めた。赤司の舌が、上半身を舐めながらだんだん下へと移動する。
「いい匂いだ。光樹……」
 まぁ、実はそう言われたくて、隅々まで洗ったのだから――でも、赤司に改めてそう言われると、なんか、恥ずかしいけど――嬉しいかもしんない。
 そしてオレのモノに舌が絡まりついた。
「ひゃっ!」
 やはり、これは気持ちいいかもしれない。う……体中がじんじんする。オレの中心に血が集まる。
「あ、赤司ぃ……」
 オレのモノに赤司の舌が……これは興奮する。しかも、相手は天帝と呼ばれた程の男……それなのに、そんな男に愛撫されるなんて……オレにはそんな価値は、ないのに……。オレの先っぽにちゅっと唇が触れて、離れた。
「とろとろに蕩けてるね。光樹……」
 赤司の表情がいつもより艶っぽいように思える。オレは、つい、イキたくなる。
「早く……イキたいよ。赤司ぃ……」
「……征十郎って言ってごらん」
 オレは、いつもだと『征十郎』と呼ぶのは面倒だからと、ついつい赤司と呼んでしまうのだが、名前呼びに抵抗がある訳ではなかった。
「せ……征十郎……」
「はい、よく出来ました」
 赤司はにっこり笑うと、動きが早くなった。かりっと、先っぽを甘噛みされる。抗えない、よぉ……。つい、赤司、と呼びたくなったが、名前呼びの方が喜ぶのかと思い、
「征十郎……」
 と、口にした。その途端、赤司にアレを激しく吸われ、オレは……イってしまった。オレの息が荒くなる。赤司の背中からバスローブがずれている。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
「いい顔だ。写真に撮っておきたくなったよ」
「い、イヤだよぉ……」
「ふふ……そんな顔するくせに、恥ずかしがり屋さんだね。光樹は……それとも、焦らしてるのかい?」
 う……そんなつもりはないんだけど……。赤司の唇から垂れて来るオレの精液を、赤司は舌でぺろりと舐める。
「ご馳走様。美味しかったよ」
 そんなはずないだろうが! ――と、オレは叫びたくなった。実はオレも、一度試しに舐めたことがあるが、青臭くて、変な味だった。
「……でも、オレの体の芯はまだ鎮まっていないのでね……光樹の痴態を見て、ますます荒ぶって来たよ……挿れても、いいかい?」
 こんなに性の悦びを教えてくれたんだ。赤司にもお礼をしないと――。
「赤司ぃ、挿れて……」
「ありがとう!」
 礼を言うのはオレの方だよ。でも、あれは痛いのかなぁ……痛いんだろうな、やっぱり……。高尾に、赤司に内緒でどうだったのか教えてもらえば良かった……。後で訊いてみるか……。
 けれど、今のオレはそれどころではなかった。気持ち良過ぎるよぉ……流石赤司。性の技術にも長けているなんて……。
「キミの方からおねだりされるとは思わなかったよ。……光樹。ところで、アナルはほぐしたかい?」
「……ほぐす? あ、忘れてた……」
 オレは一瞬にして青褪めた。赤司が、オレが痛がる方がいい、という考えの持ち主だったらどうしよう……。もう一人の赤司だったら、間違いなくそんな考えを持っていただろう。だが、赤司は言った。
「いいよ。オレがほぐしてあげる。やり方は、まぁ、いろいろと調べておいたから」
 赤司の指が、オレの穴に入って来た。痛くはないけど、何だかぬるっとする。変な感じ。
「赤司、それは……」
「ローションだよ。一応温めたけど……イヤかい?」
 ん……変な感じはするけど、気持ち悪いという程ではない。それにしても赤司のヤツ、いつの間にこんなもん用意してたんだな。一緒に暮らしてて気づかなかったぜ……。

後書き
挿○シーンは次回に持ち越しです。
書いてて楽しかったけど、恥ずかしかったです……。
2019.11.19

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